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第十二話 導きの涯 (3)

第十二話 導きの涯 (3)





コンコン、と扉が叩かれる音に、ユーリアは念のためにと処方された薬を飲んで、コップを置いて顔を上げた。


「どうぞ」

「失礼」


 だが、部屋に訪れた人物の姿に動転し、危うくコップをトレイごとひっくり返しそうになる。間違えようもない、自分を助けてくれた、狩人だという青年――。


「っと、大丈夫か?」

「は、はいっ…」


 素早くトレイを押さえた青年は、ならよかった、と綺麗な微笑みを浮かべた。


「寝ていたなら出直そうと思ってたんだが。今平気か?」

「えっ…!?あ、はいっ!大丈夫ですっ」


 ユーリアは高鳴る胸を抑えながら、ぴっと背筋を伸ばして青年と向かい合う。青年はならよかった、ともう一度繰り返して、ポーチから取り出した紙を広げながら言った。


「俺はルイス。狩人だ。ここに来たのは、あんたに訊きたいことがあったからだ」

「訊きたいこと…?」

「ああ」


 青年――ルイスはベッド脇の卓に、紙を置いた。この辺りの地図だ。


「あんたが竜と遭遇した場所。それを教えてほしい」


 すっとユーリアを見据えた瞳は真剣で冴えざえとしていて、どこかで甘やかなものを期待していたユーリアは、その間違いを突きつけられ、胸の中で膨らんでいた何かが急激に萎むのを感じる。

 急に俯き加減になったユーリアを、当然ルイスは疑問に思ったようだった。


「……どうかしたか?」

「い、いいえっ」


 ふるふるとユーリアは首を振り、ぴしゃりと自分の頬を叩いて意識を切り替えた。そして今の行動に呆気に取られているルイスをしっかり見て、頭を下げた。


「助けてくださってありがとうございました。地図を見ながら行ったわけではないので、正確ではありませんが、お話しさせてください」


 会うなり挙動不審だったユーリアのいきなりの変貌にルイスは一瞬眉を上げたが、「ぜひ、頼む」と再び笑みを溢した。

 それを見てまたぼっと頬を紅潮させてしまったユーリアは、ばれないように慌てて俯いて地図上に手を動かした。抑えたはずの胸の鼓動がどきどきと早くなる。穏やかな声を聞いているとぼうっとしそうになる。一挙一動に気が逸れてしまう。

 今まで友人達がはしゃいでいるのをぼんやり見るだけだった、その感情の正体に気づいてしまった。


(これが、恋、なのかしら…)









「…なるほどな」


 ユーリアが書きこんだ、おおよその竜の出現位置、追われた距離などの情報を眺めて、ルイスは深く息を吐いた。


(狩人協会が目星をつけている棲みかより下流だな。でも突然現れたと言っていたし、棲んでいるわけではなく、縄張り内ということか?)


 もしそうであるなら厄介だ。人が二人入り込んだ程度ですぐに気づく警戒心を持っているなら、討伐隊の潜入など不可能に近い。不意打ち、もしくは単純な罠などは絶望的だ。


(だが、だからといって真正面からやるのは無謀すぎる…というか、自殺しにいくようなものだ)


 いかに彼ら狩人が技量に優れていようとも、種族の個体としての能力が違いすぎる。だいたい、耐久性が限界にきていたとはいえ、最高級のミスリル製だったはずのルイスの剣を折ったのだ。それほどの爪牙、そしてあの固い鱗に対抗できる装備を、狩人達の大半は持ち合わせていないだろう。


(どうしたものかな…)


 思考を巡らせながらも、ルイスは立ち上がった。


「時間を割いてもらってすまなかったな、感謝する。出来るだけ早く安心出来るようにするから、もう少し待っていてくれ」


 そのまま踵を返して部屋をあとにしようとしたルイスは、けれど少し緊張で上がっているように聞こえる声に呼び止められる。


「あ、あのっ…」

「?」


 この女性はどうも、切り替えは早いがその落差が激しい気がする。リディと違って己の顔の威力をちゃんと自覚しているルイスは、なるべく素っ気なく訊き返した。


「なんだ?」


 が、次なる突拍子もない発言に、目を点にした。


「あのっ…、お腹空いてませんか!?」

「……は?」





―――――――――――――――




 確かに腹は空いているな、と答えたルイスをユーリアが連れていったのは、街の中心部にほど近い、宿屋の食堂だった。時間がもう昼をとうに過ぎているからかまばらな食堂の一角にルイスは陣取り、ぐるりと見回した。


 朴訥な中にもどこか温かさを感じさせる家具や、派手にならない程度に壁を彩るタペストリー、落ち着いた光を落とす照明。それらすべてに丁寧に手入れが行き届いている様子を見て、ルイスは軽い感心の息を溢した。


「へえ…、なかなかセンスいいな」


 ここで給仕の仕事をしているというユーリアは、嬉しそうに笑って、そばにあった厚紙を取り上げた。


「はい。この街でもかなり人気があるんですよ。これがメニューです」

「どうも。…じゃあ、これとこれとこれとこれとこれとこれとこれ」

「…そ、そんなに食べるんですかっ!?」

「ああ」

「…しょ、少々お待ちください」


 ぱたぱたと厨房の方に駆けていく彼女を見送り、ルイスはふっと溜め息をついた。

あのあと、疲労困憊してぶっ倒れたリディはそのまま狩人協会の一室で休むことを許されたが、ルイスはあの助けた女性(ユーリア)から情報を聞いてこい、と命じられ今に至っていた。正直疲労は限界にきている。もう空腹を通り越して沈黙している腹にものが入れられるのは嬉しいが、気を抜くと眠ってしまいそうだ。


(リディとネーヴェが羨ましい…)


 リディの枕元で丸まって眠っているであろうピュルマの姿を恨めしげに思い浮かべたルイスは、「へいおまちどう!」と威勢良く湯気を上らせる炒飯をテーブルに置かれ、意識を戻した。

 短く礼を言って早速食べ始めたルイスに、炒飯を運んできた体格の良い女将は、へえっと感嘆の声を上げた。


「あんたが竜からユーリアとハンスを助けてくれたっていう狩人かい?どんな大男かと思ってたら、随分とまぁいい男じゃないか!娘分を助けてくれた礼だ、今日はタダだよ。どんどん食べな!」

「どうも」


 食べる手を止めずルイスはそう返した。ちょうど、しょうが焼きと山菜スープを運んできたユーリアに、女将はにやっと笑う。


「あんたは綺麗なのに父親と弟ばっかで他の男となんも付き合おうとしなかったから、変な奴に引っ掛からないか心配だったけど、こういう男なら文句ないね」

「お、女将さんっ」


 顔を真っ赤にして叫んだユーリアは、けれどまんざらでもなさそうだ。

 ルイスは無言で食べるペースを早めた。







 幾枚もの皿を綺麗に平らげたルイスは、さぁ帰ろうと席を立ってから、ふと思い付いて、皿を片付けているユーリアに訊ねた。


「この辺に菓子屋ってあるか?」

「か、菓子屋…ですか?」


 皿をトレイに乗っけたままユーリアは頷いた。


「そうですね…一番美味しいって人気なのは、『フルール』ってとこなんですけど…この時間だと売り切れちゃってると思います。あと、まだ出来たばっかりで、お値段もちょっと高いんですけど、『シェクロール』ってところが、私はお勧めです」

「場所はどのへんだ?」

「ええとですね…」


 口頭で説明しようと頭をひねろうとしたユーリアの手から、いつの間に厨房から出てきたのか、女将がトレイを取り上げた。


「わっ!?」

「あんたまだこの街慣れてないんだろう?下手すると迷っちまうよ。ユーリア、案内して差し上げな」

「……」

「お、女将さんっ!」


 狼狽するユーリアに、女将さんはルイスから見えない角度でぱちんとウィンクした。


(片付けはやっといてやるから行ってきな!そんでとっとと落としちまえ!)


 ユーリアは喉をつまらせ、恐る恐るルイスを振り返った。


「そうだな。そうしてくれるとありがたい」


 そして向けられた、完璧なまでの美しい笑顔に、ユーリアはぼうっと夢現になりかけながら、ギクシャクと頷いてコートを羽織り、出入口に歩いていき、ルイスはそれに続いた。

 それを見送って、女将は首を傾けて笑う。


「なんだいあの笑顔。あたしまで惚れちまいそうだよ。あたしがなにもしなくても、ユーリアあんた、上手くいくんじゃないかい?」


 が、実のところ。


(眠い…)


――疲れのせいで色々考えるのが面倒くさくなっていたルイスは、王子としてよく浮かべる笑みで応じてしまったことについぞ気づいていなかった。











 ユーリアが案内した菓子屋は、小ぢんまりとはしていたが、白や薄い桃色など、清潔感と甘味を併せ持つ色で調えられた、品のよい店だった。


「ここです」

「ありがとな。助かったよ」


 店の前まで来るとほんのりと甘い香りが漂い、ルイスは内心で頷く。


(ここなら多分大丈夫だろ。あいつが好きなのは…)


 考えながら店の中に入り、店主にも聞きながら厳選した菓子を買い込み、再び出てきたルイスは、扉の横にまだ佇んでいたユーリアに驚いた。扉の開閉でちりんちりんと鈴が音を奏で、顔を上げた彼女と目が合う。


「…待ってたのか?」

「あ、はい…。協会までご案内しようと思って…」


 恥ずかしそうに俯く女の指先は、寒さからか赤く悴んでいる。ルイスは一瞬考え、無言で店内に戻った。え?と戸惑ったユーリアがその表情を崩す前に再び出てきたルイスは、その手に小さめの紙袋を落とす。


「え…」

「案内してくれた礼だ。寒い中待たせて済まなかったな」


 ルイスは内心で無駄な騎士道精神を発揮した自分を殴りつけながら、なるべくぶっきらぼうに言って踵を返す。が、いつまでたっても追いかけてくる足音が聞こえないので、仕方なしに振り返った。


「協会まで案内してくれるんじゃなかったのか?」


 呆然と包みを手に立ち尽くしていたユーリアは、はっと我に返るとみるみる頬を赤く染め上げ、「ははははいっ!」と走ってきてルイスの隣に並びかけ、そして石畳に足を取られてつんのめる。やれやれと前のめりになった体を支えれば、ユーリアは耳まで赤くなっていて、上目遣いに謝られた。

 それに肩を竦めてルイスは再び歩き出す。


 今はとにかく眠りたかった。






――――――――――――――――


 帰り着いた狩人協会は閑散としていた。皆遅い昼食を取っているか偵察に出ているか休んでいるかしているらしい。

 報告はあとでいいな、とまばらな人の様子を見て判断したルイスは、仮眠室へ向かった。

 空き部屋を見つけて入ろうとし、ふと手に持った包みを思い出した。


(昼食ってないなら、起きたらリディは腹減ってるだろ)


 元々そのために買ったのだ。


 記憶を手繰ってリディの部屋にあたりをつけ、起こさないようにと気遣ってルイスはそうっと扉を開けた。

――目に飛び込んできたのは、ベッドサイドに立って、寝間着を捲りあげ、胸から腹にかけての白い肌を晒しているリディの姿だった。


「……」

「……」


 ばたん。無言でルイスは扉を閉めた。そのまま突っ立っていると、一分ほどして向こうから扉が開いた。


「…入っていいよ」


 俯き加減にぼそぼそと言ったリディは、顔こそ普通だったが耳が真っ赤になっていた。ルイスは狼狽えながら謝罪した。


「え、あ、その、ごめん、リディ」

「…鍵閉めてなかった私も悪いから」

「そんなことはない!…いや、詫びのつもりで買ってきたんじゃなかったけど、これ」


 ルイスは慌てて包みを渡した。リディは訝しげに首を傾げ、ついで匂いに気づいてぱっと表情を明るくした。


「それな…」


 ルイスは説明しようとして、リディの歓声に遮られた。


「シェクロールのラスク!」

「…へ」


 ぽかんとするルイスに、リディは興奮のあまりか早口で捲し立てる。


「アルフィーノの首都のカミールで大人気の菓子屋なんだよ!ちょっと高いから、貴族がよく買うんだけど。最近、いくつかの街に支店を出したって聞いてたけど、ここがそうだったんだ…!」


 私は甘いのが好きだけど、そうじゃないひとのためにしつこすぎない甘さのものとかもたくさん用意されてるし、生クリームや生地のひとつひとつからして繊細でそのくせ大胆で癖になる!


 と立て板に水のごとしの長台詞をルイスは半分以上聞き流した。要するに気に入ってくれたことには間違いないだろう。


「腹減ってるだろうからそれ食えばいいと思って買ってきたんだが、気に入ったならよかった。俺は寝る」

「ありがと!大事に食べる。何時に起こす?」

「場所覚えてるし、また買ってきてやるよそれくらい。そうだな、三時間くらいしたら起こしてくれ。宿の手配とか頼んでいいか。あと、これ。情報書き込んどいたから、もし報告を請われたら言っとけ」

「了解。ネーヴェ、寝足りないならルイスのとこ行きなよ」


 リディの肩で眠そうに船を漕ぐネーヴェを、ルイスは苦笑して受け取った。ここ数日無理をさせた自覚はあるから、寝させてやろう。

 踵を返し、隣の仮眠室の扉を開ける。入り様、首だけ振り向いてリディに向かって笑う。


「じゃあ夕方起こしてくれよ。おやすみ」

「おやすみ」










 リディは貰った紙袋をほくほくと眺めて大事に抱え、階下――受付広間(ホール)に降り、そこでばったりと、システィア・ランデンブルグと出くわした。


「……」

「……」


 リディは咄嗟に言葉が出ず、システィアはただ無言で彼女を見つめる。

気まずい空気をどう払拭すべきか迷うリディに、シルフィアは軽く顎をしゃくった。


「少し話すか」





 リディとシスティアは受付の上に位置するラウンジで向かい合って座った。恐る恐る注文を取りに来た給仕にそれぞれ飲み物を頼み、リディは菓子の袋を開ける。


「…さて」


 少ないながらもいる者殆どの好奇の視線をシスティアは一瞥で散らすと、リディをひたと見つめる。


「訊きたいことは?」

「…答えてくれるんだ」

「答えられることならばな」


 沈黙ののち、リディは頭の中でまとめていた考えを、唇に乗せた。


「母上が言う『ティア』はあなた?」


 システィアは唇を吊り上げる。


「そうだ。――お前の母親は、私の妹弟子にあたる」

「…妹?」


 目の前の女は、二十代後半にも届いていないように見える。四児の母であるリディの母親は、言わずもがなそろそろ五十代だ。見えないが。この人も多分、見えるだけで三十前くらいなのだろうが…。


「言っておくが、私は今年で37だぞ」

「えっ!?!?」


 見えないどころの騒ぎではなかった。

 リディはびっくり仰天してシスティアをまじまじと凝視する。肌の張り艶、脂肪のない体つき、若枝のようにしなやかな体躯。

 どれひとつとっても四十が近い体ではない。

 システィアは肩を竦め、懐かしむように目を細めた。


「三十年以上前だな。お前の母親が14、私が5才の時だ。私と師匠がお前の母親の住む街に逗留していたら、どこから噂を聞き付けたのか、お前の母親――リアが押し掛けてきたんだよ。剣を教えろと」

「……」

「最初師匠は断った。でも懲りずに何度も突撃されて、一週間後に根負けした。あれほど無神経で諦めの悪い女は初めてだったな」

「…すいません」


 そのへんの血は多分サーレクリフが一番よく継いでいる。


「リアは基礎がもう出来ていた。才能もあったし、師匠も途中からは満更でもなく楽しそうに教えていたよ。私の体ではまだ扱えない剣技などを教えているのを見て、私はよく嫉妬したものだ」


 勝負しても負けるしな、と肩を竦めるシスティアだが、5才児に14才で負けたらそれは王族ゆかりの人間としてヤバイだろう。


「結局その後の五年ほど、私と師匠はお前の街を拠点に仕事を受けていた。その合間にちょくちょくリアを指導しながらな。いつも小綺麗な格好をしていたし、金にも困っていないようだから、どこかの豪商の娘だと勝手に判断していたんだ。だが五年経ったある日、師匠から一本取ったリアが突然私達に頭を下げた。よく覚えている。――『結婚して爵位を継ぐからもう来れない。今までありがとう』だったな。最初なにを言ってるのかさっぱりわからなかった」


 これはひどい、とリディは肩を落とした。確かにいきなりそんな激白をされて受け入れられる訳がない。


「疑う私にあいつは紋章を見せてな。私はわからなかったが、師匠がひっくり返った。それで本当だとわかったが、私は頭に血が昇っていてな。大喧嘩になった」


 システィアも流れ者の例に漏れず、貴族が嫌いだった。なのに貴族の中でも最高位に位置する身分の者と五年以上も知らずに付き合っていたことに、混乱と、やり場のない怒りが噴き上がってしまったのだという。


「リアもリアで、貴族だからなんだ、私は私だとキレて、魔術も飛び交う大喧嘩だった。いた宿は半壊した。怪我人が師匠しか出なかったのは不幸中の幸いだったな…。結局致命的なことになる前に師匠と、あいつの旦那が止めに入ってな。修繕費だのなんだのは旦那が全部払ってくれた上、丁寧に詫びてくれた。その後もなんやかやと手を回してくれて…お前の父親は稀に見る傑物だったよ」


 もしこの会話を他の誰かが聞いていたら白目を剥いてひっくり返ったかもしれない。システィア・ランデンブルグが男を褒めるなど前代未聞だった。


「だが私はまだ幼かったし、頭に血が昇ったまま私は師匠と国を出た。もう一度あの国に足を踏み入れたのは、それから十年経ってから…師匠が現役を引退してからだ。訪れた私をあいつは喜んで迎えてくれたよ。…子供が四人も出来ていたのには驚いたがな。そこでお前にも会ったよ。まだ二才かそこらで玩具の剣を振り回しているのを見て、あれほど血というものを感じたことはない」

「……はは」


 リディは空笑いした。あの両親にしてこの子あり、という台詞は今までに何度も言われたことがある。

システィアは頬杖をつき、リディと目を合わせる。


「お前は私の、親友であり妹弟子である女の娘だ。何かを望んでこの国に来たというなら、手を貸してやる」


 それは破格の申し出だった。勿論、システィア・ランデンブルグという人の普段の言動からすれば、だ。だがシスティアである。

 リディも驚いた。母の娘というだけで、協力を申し出てくれるようなひとだとは思っていなかった。

 同時にとても有難い。これから竜と相対する中で、自分達が何を目指してここに来たのか、対策メンバーの中心である人に知って貰えるのは、僥幸だと思った。

 軽く息を吸って吐き、自分をひたと見据えた少女に、システィアは密かに微笑む。相手が誰でも臆せず目を見る。母親そっくりだ。


「――実は…」


 そうしてリディは、今に至る長い話を始めた。




恋愛ジャンルを書ける人は本当にすごいと実感しながらの十二話執筆作業です…

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