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第十一話 崩壊の鏑矢 (3)

第十一話 崩壊の鏑矢 (3)







「…うわ」


 山と山の間、谷間の隘路に作られた国境門の前に立った瞬間、魔術士、治療術士一同はそんな声を上げた。


「なにこれ。誰が作ったの」

「つうか人間業じゃねーだろこれ」

「……」

「見たことないわよ、こんなの」

「うーわ…」

「想像以上だなこれは…」


 魔力を操ることで結界を可視化できる面々は反応を示せるが、他はわけがわからない。


「ん?なにかあんのか?」

「なんも見えねーけどなあ」

「…見えんな」

「わかりやすく言うと。ルネの結界が子供の落書きに見えるくらい、緻密かつ複雑な結界が張られてるのよ」


 ツェツィリアは溜め息をついた。五属性だけではない。――闇も含まれている。


「これだけのもの作るには…」

「何人、亡くなったのでしょうね…」


 魔族とはいえ、これだけ複雑なもので国を覆いつくすのは不可能だ。魔物が使わないはずの五属性魔術が編み込まれていることを考えても、多数の魔力を持つ命が使われたとみて間違いないだろう。

 そんな中、リディは一人だけ落ち着いていた。ゆっくりと視界の範囲の結界を見納め、止めていた馬を再び歩かせながら呟く。


「…ラグのよりマシか。でもこじ開けるのは面倒だね」

「…は?」


 聞き咎めた面々が間抜けな声を上げるのを余所に、無人の門のギリギリに立ち、叫んだ。


「約束通り、私達は来た!とっとと開けろ、エカテリーナ!」


 ぐわん、と結界がたわんだのを、魔術士達は目にする。次の瞬間、彼らの頭上に、ひとりの女の姿が現れる。


「ようやく来たのね。待ちくたびれるところだったわ」


 美しい姿でころころと笑う魔族の女に、馬車にいた狩人達も残らず飛び出し、戦闘態勢に入る。寄せられる殺気に、しかしエカテリーナは気にも留めなかった。


「でも、仲間を集めてくるとは思わなかったわ。少しは賢くなったのかしら?」

「ひとに言われてな。だが、虫けらが増えたところでお前にとっては関係ないんだろう?」


 挑発的なルイスの台詞に、エカテリーナは笑みを崩さない。


「そうね。足掻く人間が多いほど楽しめるもの」


 こいつ最低、とリリアが呟いた。


「イグナディアの民を何人殺したんですか?」


 マシューが厳しい声で問う。エカテリーナは首を傾げた。


「さあ?知らないわ」

「命をなんだと思って…!」

「貴方達だって、踏み潰した蟻の数なんて数えないでしょう?それと同じことよ」


 くすくす笑うエカテリーナの顔には、いっそ恐ろしいほど邪気がない。――本当に、なんとも思っていないのだ。


「やめろ、マシュー。問うだけ無駄だ」


 ヨセフが低く制す。唇を強く噛み締め、マシューは拳を握った。


「さて、じゃあ…山越えは大変でしょうし、そこまで連れていってあげるわ。でもそこからどうもがくかは貴方達次第ね」


 すっ、とエカテリーナが手を上げる。狩人達が咄嗟に武器を抜きかけ――次の瞬間、


「……え……?」


彼らは、雪原に立ち尽くしていた。










「なに…、今の」


 呆然としたまま、びょうびょうと吹き付ける吹雪の中で、リリアが言った。

 馬も、馬車も。その場にいた全てが、ここに移されている。いないのは、あの魔族だけだ。


「転移…魔術…?」


 普段喋らないルネも、驚きの余りかそんな呟きを漏らした。

 一方、ルイスとリディは忌々しげに舌打ちする。


「魔術陣が敷かれてたのか」

「やられたね。まあ、楽っちゃ楽か」

「ちょと待てそこ。何故転移魔術を普通に看過してんだ」


 エドガーがツッコミを入れた。そして、その応えに一同唖然とする。


「見たことあるし」

「三回目か?」

「ううん、四回目」

「あー、そういえばセティスゲルダもやってたな。てことは五回目か」

「…何にどこから突っ込めばいいんでしょうか…」

「あー、いい。取り敢えず火魔術使えるやつ、結界張ってくれ。寒い」


 既に二人については諦めているジョンは、手を上げてそう頼む。一拍おいて、リリアが火の結界を彼ら全体を包み込むように張った。

 遮られた極寒の風と冷たい雪に、全員ほっと息をつく。


「ていうか、有り得なくナイ?いくらなんでもこの吹雪、おかしいわヨ。イグナディアっていったって、真冬まではまだ日があるはずヨ」


 ごつい図体に女言葉のマルセロがが薄ら寒そうに、暗い空を見上げる。クラウディオも顔をしかめた。


「そうだな。…前来たときは、これほどではなかったはずだ」


 見渡す限り、雪、雪、雪。背後に聳え立つ山は真っ白で、木も半ば以上埋まっている有り様だ。


「ていうか、どこに飛ばされたんでしょう?」


 呟いたハワードの眼前に、突如紙切れが現れる。反射的に手にとって眺め、彼は顔をしかめた。


「見てください。地図です」


 紙切れには、簡略化されたイグナディア国内の地図が描かれていた。いくつかの大きい街の名と街道、湖が描かれ、そして右端の方に×がつけられている。恐らく現在地だろう。


「おーおー、親切なことで」


 ヨセフが皮肉げに吐き捨てた。ジョンが良し、と頷く。


「気に食わないが、現在地がわかったことはありがたい。馬車組は中に入れ。出発するぞ。街道に出る」


 数分後、一行は雪景色の中をゆっくりと歩み出した。








 進み出して数十分後、ハワードから受け取った地図を眺めつつ先頭を歩いていたジョンは、チッと舌打ちして手綱を引いた。


「駄目だ。視界が悪すぎて道がわからん」


 馬車と、騎馬組も足を止める。そして幌馬車のひとつから、顔色を悪くしたリリアが頭を出した。


「ごめん…そろそろ、誰か結界替わってくれない?魔力が…」

「…そうね。ごめんなさい、無理させて…ルネ、替わってあげて」


 黒いフードを被ったまま、『ジィ』の幌馬車からルネが顔を出すと同時に、リリアの結界が消失した。ふるっと身を震わせたルネは、手を広げて小さな声で呟く。すぐに暖かい膜が一行を覆った。


「ありがとう、ございます」


 ふらふらと引っ込んだリリアは、やはり魔力量が少ないようだ。ツェツィリアは頷き、ルネにも「きつくなったらいいなさい」と告げた。


「あー、ルネ・フォーレ?ものは試しで頼んでみるが、前方の雪、溶かせたりしないか?」


 ジョンの台詞に、しかし御者台のテディーが即座に首を振った。


「無理だ。ルネの魔力は多くない」

「あー…、どうすっかなー…」


 頭を抱えたジョンに、呆れた声がかかる。


「あのさ。君、私を忘れてない?」

「「あ」」


 ジョンとエドガーの声がハモる。リディが呆れた目付きでこちらを見ていた。


「いや正直剣士換算してた。そーだよなお前がいたよな」

「やってくれもういっそ進路だけじゃなくやってくれ」

「無茶言うなよ」


 リディは馬を繰り、一端結界の外に出る。他人の結界の有効下での魔術の行使はできない。


「うー、さぶ…フレイア」


 体力に支障が出ないように魔力を調節し、練り上げる。


「溶かせ」


 次の瞬間、炎の波が広がった。









「……」

「……」

「……」

「……」


「……あれ?」


 重い沈黙ののち、乾いたリディの声が上がる。


「おかしいなー、こんなに溶かす予定じゃなかったんだけど」

「……っ、誰が視界まっさらにしろって言ったああああ!!」


 ジョンの叫びが響き渡った。


 リディを源として、百二十度程の視界に収まる範囲から。あれだけ積もっていた雪が、僅かな高さを残して消えていた。


「リディ、魔力量考えろ。核使ってないんだろ?ぶっ倒れるぞ」


 ルイスの咎める言葉に、リディは困惑顔で振り返る。


「いや、残しとく魔力を決めてやったからそれは平気…でも、なにこれ。ラグじゃあるまいし、私こんな魔力ないんだけど」


 何事かと馬車から降りてきた狩人達も絶句して立ち尽くしている。


「…どんな魔力量よ…」

「反則だワ」

「…あ、街道見っけ」


 切り開かれた視界の先に、淡く光る聖結界に包まれた道を見つけたエドガーがそれをみんなに伝える。


「おし、なにはともあれ結果オーライ!取り敢えず街道に出る…」


 ジョンの台詞は、途中で途切れた。同時に、金属が擦れる音が連続し、狩人達が皆武器を抜く。その眼は鋭く、敏感に察知した殺気に対し、瞬時に意識を研ぎ澄ませる。


「どこからだぁ?」


 即座に組まれた円陣の端で、矢をつがえたテディーが低く唸る。見渡す限り360度の視界に、敵影は見えない。


「てことは…」


 エイト・ベルが呟く。ゴゴゴゴゴ、とどこからか重低音が響いてくる。地面が揺れる。空気が震える。


「「上(下)だっ!!」」


 狩人達が飛び退くのと、遥か上空から魔物が飛来してくるのと、地中から魔物が現れてくるのが同時だった。

 けたたましい啼き声を上げながら、馬が前足を振り上げる。危うくひっくり返りかけた馬車は、治療術士と魔術士が連携して素早く立て直した。


「馬お願い!」


 リディも馬から飛び降り、手綱をマルセロに投げ渡す。受け取られたかの確認すらせず、魔術を行使して体を跳ね上げた。

 くるりと体を回転させ、眼下を見下ろす。


地這蟲(ワーム)かっ…!」


 白い雪原に、毒々しい体色の長い躯が、無数の足を蠢かせていた。しかも数は一匹や二匹ではない。


「リディ、上だっ!」


 つい下に気を取られたリディに、ルイスの鋭い叫びが届く。空から滑空してきた巨鳥型の魔物が、鉤爪を剥き出しに彼女に迫っていたのだ。しかしリディが振り返る前に、その魔物の胸部に一本の矢が突き立った。しかも硬い鱗と鱗の間、ほんの僅かな隙間にだ。的確かつ容赦のない急所への攻撃に、鳥が甲高い啼き声を上げて落下する。


「余所見すんな、ボケ!」


 地上から矢の主、テディーが怒鳴る。


「ありがとう、助かった!」


 リディは叫び返しながら、意識を集中して魔力を引き出す。魔力を手から、更にその先の剣に集め――ミスリルのそれに馴染ませる。ぼっ、と熱が生まれたのを確認して、リディは空中を蹴る。


「――――っ!」


 無音の気合いを奔らせ、リディは逆手に構えた右手の剣を、眼下で暴れる蟲の頭部に、突き立てた。


――ギイイィイイイィィィッ!!


 硬いはずの甲殻を貫かれ、蟲が暴れる。それに巻き込まれる前にリディは剣を引き抜き、蟲の頭を蹴って飛び離れる。一瞬後、離れた所から飛来した火の玉が蟲の躯を瞬く間に覆い尽くした。見れば、黒いマント姿の小柄な影が手を突き出している。


(ルネ・フォーレか…)


 クラウディオの指示が飛んできた。


「リディ・レリア!下はいい!上の鳥どもを頼む!」

「――了解」


 短く答え、耳障りな奇声を上げて空を飛び交う巨鳥達を睨む。その内の一体に狙いを定めたところで、瞬間的にぞっと寒気を感じ、本能の部分で退避する。

 次の瞬間、空の巨鳥達の多くを、氷の槍が貫いていた。


「…あれ?」


 落ちる静寂、その中で先程のリディのものと酷似した間抜けな声が落ちる。出所はルイスだ。


「っなにしてくれてんのよ!殺す気!?」


 リディと同様に巨鳥をターゲットしていたツェツィリアが、常の泰然さをかなぐり捨てて怒鳴る。


「ごめん!なんか上手く調節(コントロール)が出来なかった!」

「ごめんじゃないわよ!今度酒代持ちなさい!」

「あんたが大酒呑みじゃないならな!」

「なによケチくさいわね!」

「そこ無駄口叩いてる暇あったら手ぇ動かせ!」

「ジョン、右頼む!」

「マルセロ、魔術士達と馬ちゃんと守ってろよ!」


 怒号が飛び交い、魔術が交錯し、縦横無尽に人間が走り回る。

 そんな中、ひとつのパーティはきちんと陣形を組んで堅実な戦いを行なっていた。地這蟲の出す毒液が雪どころか地面すら溶かし、僅かに残った巨鳥から氷のように冷たい息を吐き出すのを避け、隙を狙って前衛組が上手く翻弄を交えながら攻撃を加え、後方から魔術による援護が飛ぶ。

 速度は決して速くない、しかし確実に、『シルバーダガー』は魔物を仕留めていっていた。


「おいこら人外。あれがホントの狩人パーティの戦い方だぞ」


 戦いの最中、たまたますれ違ったジョンがルイスにそう囁く。ルイスはしなりながら迫ってきた蟲の尾を防ぎながら言い返した。


「人にいえたことじゃないだろ」


 ジョン達『ノナ』だって、この乱戦の中バラバラに魔物と戦っているのだ。人のことを揶揄できる立場ではない。


「そりゃ、この程度の敵だからだ。もっと手強くなりゃ、俺達もああいう風に戦う」


 ルイスは眉をひそめた。この魔物達は、少なくとも中位のものだ。それを『この程度』と言い切るか。


「だがお前らは違う。どんなに強い相手でも、二人だけで突っ込んでくだろ」


 あらかた魔物も片付いてきた。傍観に身を休ませることにしたのか、ジョンは口を動かすのを止めなかった。


「お前らがとんでもない力を持ってるってのはわかってる。じゃなきゃ許可は下りない。でもな、お前らは――」


 ジョンは言葉を切った。空の巨鳥を殲滅し終えたリディが傍に着地してきたのだ。


「普通に中位が出てくるとか、この国やっぱおかしくなってる…って、どうかした?」


 ルイスはジョンを見、肩を竦められたとわかるといや、と首を振った。


「別に。地這蟲も、ほとんど他のパーティがやってくれたみたいだぜ」

「そうみたいだね。『シルバーダガー』の加勢した方がいいかな?」


 リディの問いに、ルイスはかのパーティに目を向ける。先程と同じく、だが違う個体を相手に戦っているらしい彼らを、ついで手を止め傍観している他の狩人達を見回し、首を横に振る。


「あれならほっといても平気だ。実力も見ておきたい。リディは落ちてる核回収しといてくれ」

「了解」


 軽い足取りで点々と散らばる核を拾いにリディがその場を離れるのを待って、ルイスは言った。


「で、俺達が、なんだ?」

「…いや。戯言だ。忘れろ」


 視線を『シルバーダガー』に据えたままのジョンに、ルイスは眉を寄せはしたが問い詰めることはしなかった。その代わり、最後の一体に止めを刺そうとしている年下の少年達に目を細める。

 細剣使いが攪乱して注意を引き付け、魔術士達が防御と援護をして剣士達を守る。そして魔物の意識外に出た大剣使いが、その凶悪な凶器でもって地這蟲の頭部を切り落とした。

 新人とは思えぬ手際のよさだった。


「お見事」


 ひゅ、とツェツィリアが口笛を吹く。テディーが気のない拍手を送った。


「…見ていたなら助けてくださればよろしいのに」


 薄く汗をかいたカミラの不満に、クラウディオが無表情に返す。


「お前達が無理なく処理できると判断した」

「いや、そうじゃなくてね…」


 ユーリスが何かを言う前に、袋に回収した核を詰めたリディが戻ってくる。


「これどうする?パーティごとに割り勘しようか」

「全部でいくつある?」


 ルイスの問いには、ややあって32、という答えが返ってきた。エドガーが言う。


「それじゃ一人二つ配分でいいんじゃねーか?魔術士は魔力の補填がしたいなら、仲間内から分けて貰えばいい」

「それ、『ヘキサ』が不平等じゃないノ?」


 マルセロが待ったをかけたが、当の『ヘキサ』がいや、と頷く。


「それでいいよ」

「ガス欠って程まで行ってないしな」

「あんだけやって余裕なのかよ…」


 ヨセフが思わずと言った調子で呟いた。ルイスとリディは目を見合わせ、首を傾げる。つられてネーヴェがひっくり返った。


「なんだろうな。魔力、増えてる?」

「うん。――魔力増えるのって、十五歳くらいまでの筈なんだけどね」


 ヒトは、初めから最終段階の魔力を持っているわけではない。赤子の頃から膨大な魔力があったのでは体が追いつかない。

 個人によって、魔力の『器』がある。『器』の大きさによって、成長していくにつれ得られる魔力が変動する。その変動が終わるのが、だいたい十五歳くらいまでなのだ。

 得られる、といっても外部から取り込むわけではない。潜在的に本人の魂が持つ力が、肉体という容れ物に馴染んでいくのだ。『器』は、潜在的な力の大きさに比例する。

 精霊達が召喚の際見定めるのも、この潜在的な力だ。与えられる魔力を食糧のようにして主に使える精霊は、高位になる程必要量が多い。必然、魔力の多さと精霊の高位さもまた、比例することになる。


「まあ、多いに越したことない」

「あんた達は多すぎよ」


 ビシッとツェツィリアのツッコミが入る。他魔力持ちもうんうんと頷いた。


「…そろそろ街道に行かないか?」


 クラウディオの言葉に、皆賛成する。万が一街道に着くまでにまた魔物に遭遇すると危ないので、補給を済ませておく。

 幸いそれが必要になることはなく、一行は無事に結界の張られた街道に入った。


「はー、寒さまで和らいだ気がするわ~」


 リリアが馬車の縁で伸びをしながら言う。かと言って、本当に火結界を解いてしまえば寒いこと確実だが。


「ルネ、代わろうか?」


 馬上からリディが言った。魔力量がルネよりリディの方が多いらしいというのもあるが、なにより自分の限界点を知っておきたい。

 それに対し、ルネは少し考えてこくりと頷いた。同時に結界が消失する。途端、びゅうびゅうと吹き荒ぶ極寒の風が、一行を襲った。


「さささささっぶー!!リディさーんっ、結界張ってくださいっ!」

「なぜ敬語…」


 エイトの悲鳴に首を傾げながら、リディは手早く結界を構築する。ふわりと暖かな膜が狩人達を覆った。マルセロが感心した風に言う。


「構築速度も速いのネ。アナタ、なんで魔術士専攻にしなかったノ?してたら、大陸五指も夢じゃないワヨ?」

「身近にもっと凄いのがいたからね」


 は?という視線が集まった。リディは苦笑してルネに笑いかける。


「ルネ、君と同じ、五属性を持つ魔術士だよ。もっとも、魔力量は君よりかなり多いけど…。常識知らずの青天井、って言葉はあいつにこそ相応しい」


 ルイスは相応しすぎる形容詞に片頬をひきつらせる。まったくそんな感じた。ネーヴェも遠い目になっていた。

 フードの外からでもわかる、驚きに固まっている様子のルネ。


「すぐそばにあんなのがいたんじゃ、魔術士の最高峰を目指す気にもなれない。だから、魔剣――違った、魔術士と剣士を両立しようと思ったんだよ」


 リディはあっけらかんと言って、ついでのように付け加えた。


「ちなみにこれ、うちの国の国家機密だから。喋らないでね」

「「「……」」」


 パカッパカッ、ガラゴロガラゴロと馬の蹄と馬車の車輪の音だけを響かせて、狩人達は街道を進んでいった。




さくさく更新してる割には話が進んでいない…。

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