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第十話 安寧への撃鉄 (5)

第十話 安寧への撃鉄 (5)








 夜。

 クリスティアーナに、武術大会に申し込んだことを伝えるべく、三人は女王の執務室に向かった。しかし、扉の前に立った時に中から聞こえた人の声に足を止める。男の声が聞こえてきた。


「…ですから、わたくしは何度も…!」

「ここに橋をかけることに何の意味が?平民の通る道ではないはずです」


 男の声に応じるクリスティアーナの声は、冷たい。ルイス達は顔を見合わせ、その場から立ち去るべきか悩んだが、室内の声は止まらず続いていた。


「ここは、軍の移動に最適です!商人も…」

「軍の移動箇所は別に定めてあります。商人の通商も、デーリア橋があるでしょう。不要なものをつくるために、国民から税をとりたてる気ですか」

「っ、わたくしは不要などと…」

「不要です。シルグレイから一度説明をされたはずですよ、ガルイード。なぜそのように固執するのですか。お前らしくもない」

「陛下っ…」

「下がりなさい。頭をよく冷やして、自分の主張が正しいのかどうか、よくよく考えることです」


 数拍の沈黙のあと、踵を返して扉に足音荒く近づく気配がし、同時に扉が開く。中から出てきた男は、三人の若者と顔をつき合わせ目を見開いた。扉を閉め、ついで唇を歪める。


「…、あなた達がスヴェン様と武術大会に出場なさる方々ですか。平民風情が陛下の執務室を訪れるなぞ、いいご身分ですね」

「……」


 ルイスとリディはなにも言わなかった。スヴェンも黙って彼を睨み付けた。


「まったく、陛下は…」


 その後も数言ぶつぶつと呟いてから、ふと男はルイスを凝視した。


「…貴殿、前にこの城を訪れたことがあるか?」


 リディはぎくりとしたが、ルイスは平然と「いいえ」と答えた。


「アーヴァリアンには何度か来たことがありますが、本来は城に参上出来るような身分ではございませんので」


 リディはその如才のなさに感嘆すると同時に、やはりルイスはエーデルシアスの王子なのだ、と内心で苦笑いする。


 水を呑むように嘘を吐ける。それは政争を生き抜くための術だ。

 ルイスだけではない。馬鹿王子(ヴィンセント)だって、兄達だって、両親達やヘンドリックでさえ、表情ひとつ変えずに情報を取捨選択し、必要であれば嘘を辞さない。

 嘘をつくのは良いことではないが、必要があれば悪いことではない。それくらいの理解と価値観はリディとて持っている。ただ、自分には出来ないだろうな、という諦観を抱いた。



「…そうですか。では、気のせいだったようです。――わたくしはこれで。むやみやたらと城内を歩かないでいただきたいとだけ、ご忠告させて頂きますよ」


 最後に嫌味を付け加えて、男は立ち去った。その後ろ姿をスヴェンとふたり睨んでいたリディは、ふとルイスが眉を寄せているに気づく。


「…どうかした?」

「いや…。スヴェン、ガルイードは昔からあんな風だったか?」


 唐突な質問にスヴェンは目を丸くしたが、律義に答えを探した。


「…昔は、違ったかも、しれない。でも、ここ最近は、あんな感じ。しつこく予算を土木に回そうとしてて、鬱陶しい、って、陛下が言ってた」

「ルイス、あのオヤジ知ってるの?」


 スヴェンの言葉に、顎に手を当てて思索を巡らせていたルイスは、ん、と曖昧に頷いた。


「名前はガルイード。俺がここに最初に来たときは、まだヒラの官僚やってたやつだ。来る度に地位が上がってて、シルグレイの父親が優秀だって誉めてた記憶がある。…昔はあんな、ギラついた目はしてなかった気がするけどな」

「…そう、なんですか」

「ま、歳月は人を変えるってことなんじゃないの」

「…かもな」


 ルイスは苦笑いを返すと、金色の髪をつまむ。


「しかし、アズナに感謝だな。元の髪色のままじゃ危なかったな」

「一週間だっけ?期限。その前にこの城出ないとヤバいね」

「もとの髪色、ちがうの…?」

「――そこの三人」


 はっ、と三人は固まった。いつの間にか目の前の扉があいて、怖いくらいににこやかな笑みが彼らにぴたりと向けられていた。


「立ち話もけっこうですが…ひとをいつまで待たせるおつもりですか?」

「「「――っすみませんでしたっ!!!」」」







――――――――――――――――――――――――




 そして翌日――武術大会四日目、団体戦予選。伝えられた集合時間に念の為かなりの余裕を持って、ルイス、リディ、スヴェンの三人は会場に到着した。まだ余り人の気はなく、出場者も観客も殆ど集まっていない。

 闘技施設に入ると、リディは真っ先にトーナメント表を見に行った。昨日の個人戦のものが綺麗に消され、団体戦用のそれが書いてあるところから、スヴェンの名前を探す。

 何故かと言えば、団体戦は代表者一名の名前を登録し、それが一種のチーム名を示すからだ。


「あった。えっと一、二…第五試合…相手は『ジーン・キャンベル』」

「…聞いたこと、あるようなないような」

「ルイスが覚えてないってことは、大したことないね。…ん?どしたのスヴェン」


 二人とは別に、スヴェンは全く違う場所を見て呆然としていた。ルイスとリディは怪訝そうに焦点をそこに合わせ――即ち絶句した。

 ずらりと横一列に並ぶ三十二組の、右から三番目――つまり第十五試合。


「嘘だろ…?」



『クラウディオ・ガウス』



 見間違いでもなんでもなく、そこにはしっかりとそう刻まれていた。


「……ルイス、スヴェン」

「……なんだ」

「私、すっごい嫌な予感するわ。そっちは」

「奇遇だな。俺もだ」

「…僕も、です」


 あははー、と乾いた笑い声が三人の喉から漏れる。それを目にしたかのようなタイミングで、後ろから誰かがスヴェンの名を呼んだ。


「スヴェン・アイヒホルン!」


 当たって欲しくない予想通りの声。ギギギギギ、と錆び付いた歯車のごとく鈍い動作で三人は振り向き、そこに黒髪黒服の女を見つける。――ツェツィリア・クロノヴァ。


「トーナメント表、見たみたいね?」


 彼女はルイス達に近寄るなりにっこり笑い、当たってほしくなかった事実を突きつける。


「あたし達、あなた達に興味出ちゃったのよ。稀代の神童クンもそうだけど…そっちのやたら美形クン達にも」

「……」


 この際リディが完全に男認識されているのはおいておく。


「なにより、ディオが一番気にしてるから。じゃあ、決勝でまた会いましょう」


 ひらひらと手を振り、颯爽と去るツェツィリアを見送り、リディがため息を吐いた。


「…とんだことになっちゃったな」


 ルイスとスヴェンには返す言葉がなかった。












 三人がツェツィリアの襲来後、気分を切り替える為に喫茶店でしばし和むことにしたあと、観客席には徐々に人が集まり始めていた。そして彼らはやはり、一つの噂で持ちきりだった。


「『ジィ』が出てるって!?」

「ジィっていやあ、昨日個人戦優勝した奴がリーダーやってるとこだろ?凄ぇ奴らが出てきたな!」

「でも、なんでそんな奴らがわざわざ出てくんだ?狩人のNO.2なんて、格違うじゃねえか」

「単に気がノッたんじゃないか。別に出ちゃいけない決まりはないし」


 一人の狩人がため息をついた。


「しかしこれで賭けはつまんなくなったな。他『十強』はいねえんだろ?」

「個人戦にゃ『テトラル』と『ノナ』もいたけどな。団体戦に『十強』が出るこたあんまねえし」

「あ?」

「いた。『アインス・ザレッタ』――『オクタ』だ」

「いんのかよ!」

「でも、序列二位と八位じゃ…」

「やっぱ、レベル違うよな」

「騎士とか傭兵にはいねーのかよ、強い奴」


 誰かの言に、出場者控えを見た別の誰かが首を振った。


「有名所はいねえな。ていうか有名な傭兵はだいたいザイフィリア・フェルミアに呼ばれちまってるし。そもそも騎士なんて団体戦する人間じゃねーし…」


 言いかけた台詞が途切れる。それをまた別の人間が次いだ。


「一人いるな。ほら、アーヴァリアンの神童って奴だろ、こいつ」

「神童ぉ?んだそれ」

「確か、若干十四歳で騎士団を軒並み破り、魔術もかなり出来る、女王陛下のお気に入りだろ」


 誰かが鼻で笑った。


「アーヴァリアンの騎士団はよわっちいだろ。なんせ『魔術国家』なんだから」

「だよなあ。てことは駄目か。つか、こいつ賭け対象外申し込みしてら。自信ねえのか、よーするに。あーっ、つまんねえ」

「つーかどうせ(公式)の優勝は『ジィ』一択で面白くねえから、(非公式)の内容『誰が決勝まで行くか』にしようぜ。勿論『ジィ』は抜きで」

「お、いいなそれ!…え、でもそれ『オクタ』じゃね?やっぱ」

「『十強』っつっても、下位はそこまで化物じみた強さってわけじゃねえよ。ほら、こいつ…『ラファエル・エルナデス』って確かフリーの傭兵でかなり有名な類だろ。案外いい試合になるかもしれねーぜ」

「…だな。よし、じゃーこの設定広めるぞ!」


 余談だが…この話を小耳に挟んだシルグレイは、こともなげに侍従に「お前の名前で『スヴェン・アイヒホルン』に千エル賭けてこい」と言付けた、という。







―――――――――――――――――――――――――――――



 アーヴァリアンで、本格的な冬の始まりを告げる行事、武術大会。その四日目。

前日の個人戦ではクラウディオ・ガウスが優勝を飾り、今日からは団体戦が始まる。

 そして太陽が昇って数刻後――火蓋は切って落とされた。



『さあさあ早くも第五試合!向かい合うは、『十強』に追随すると云われている狩人、ジーン・キャンベルと、我がアーヴァリアンが誇る百年に一度の神童、スヴェン・アイヒホルン!』


 わああああ、という歓声が地響きのように鳴り渡る。闘技場(フィールド)の土を踏んだリディは、その騒音に顔をしかめた。


「…うるさ…ていうか、これどうやってるの?明らかに人間の声量じゃないだろ」

「ああ、割りと簡単な仕組みだぜ?あの解説者がなんか筒みたいの持ってるだろ。あれ、あっちの大きな箱にパイプで繋がってんだ。そんでパイプ構造に色々細工施して、反響で音量拡大してるんだ」

「要するに、あれ。拡声器(メガホン)みたいなもの」

「…へえ。なんとなくわかった、…気がする」


 ルイスとスヴェンの説明を受け、リディは取りあえず頷く。いまいち分からないが、まあ気にすることでもないだろう。


『アイヒホルンはこういった場に出てきたことは未だかつてありません!歴戦の勇士を相手に、無名の仲間を連れ果たしてどこまで力を発揮できるのか!』

「…完っ全噛ませ犬扱いだな」


 少々むっとしたルイスは、司会者の方を一瞬睨んだ。全く、所詮子供だからと好き放題言ってくれる。


「はん。初戦の相手はこんなひょろっこい小僧三人かよ」


 反対側のからフィールドに入ってきた男達は、三人を見下ろしてつまらなそうに鼻を鳴らした。


「ひょろっこくて悪かったね」


 リディは目を細めた。…十強に追随する実力とか言われていたが…かつてビグナリオンで共に戦った狩人、ヘンリーの方が遥かに強い。立ち姿からそれがわかる。


「おーかたそこの坊っちゃんが適当に引っ張ってきただけのガキだろ。棄権した方が痛い目見なくて済むぜ?」


 揶揄するような笑いに、しかしルイス達は内心の嘲笑せざるを得なかった。

 見た目で勝手にひとを判断し、ハナから舐めてかかっているようでは――お話にならない。


「その言葉そっくり返すよ。独活の大木」


 ピキ、と男達のこめかみがひきつった。各々武器に手をかけ、剣呑な表情でリディを睨む。


「…てめえ、後悔してもしらねえぜ」

「安心しなよ。私は君達に後悔させる余裕も持たせてやらないから」


 対するリディは表情ひとつ変えず、外套の下で一本だけ剣を掴んだ。

 端で傍観していたルイスは空を仰いだ。


「…挑発スキルこんな高かったか、こいつ」

「…まあ、…悪いことじゃない、よ。使う相手、間違ってないし」


 スヴェンは苦笑いしながら、剣の柄に手を添える。にわかに緊迫感が増し、会場中が司会者の試合開始の宣言を待つ。司会者が咳払いした。


『では――』













 『ノナ』リーダー、ジョン・イーデルが団体戦を観戦しにきたのは、たまたま気が向いたからだった。自身は前日までの個人戦に参戦し敗退し、団体戦には特に出る気もなく、街を出てしまってもいいくらいに考えていた。事実、『テトラル』の連中は早朝のうちにハイレインを出ていった。


 しかし魔術士であるヨセフ、治療術士であるマシューは、大陸にその名を轟かせる魔術国家自体によっぽど興味が大有りらしく、リーダーである自分の試合すらほっぽって街の図書館だかなんだかに籠っている。


「結構賑わってるもんだなぁ」


 ただ一人自分につきあってくれている弓士、エドガーが団体戦の様子を観て感嘆した風に言った。それを聞き付けた、何やら噂好きそうなカオをしている男が振り返って言った。


「そりゃそうさ!今回はなんたって、『ジィ』が出てるんだぜ!」

「………………マジか?」


 二秒ほど自分の耳を疑った。『ジィ』といえば、昨日アハトに勝った『神槍クラウディオ』のパーティだ。団体戦に『十強』がいること事態稀なのに、しかも序列二位が、だと?


「ほれ、見ろよ」


 男が親切にもトーナメント表を見せてくれる。――確かに第十五試合に『クラウディオ・ガウス』の名が記載されていた。


「…なんでまた。相手になる奴いねえだろ」

『十強』の中でも、序列というものはかなり大きい。というか五位――『ペンタ』から先の格が違う。『ジィ』である奴らに立ち向かうには、『ペンタ』以上――つまり『ペンタ』『テトラル』『トリル』じゃなきゃ事実上不可能だ。勿論九位である自分達など論外。


 あえて付け加えるなら、更に『モノ』は別格だが。


(――いや)


 五位以内ではないが、あいつらなら不可能ではないかもしれない。既に恐ろしいほどの力を持つ癖に、まだまだ伸び代を持っていそうな、あの二人の男女(きかくがい)。旅の途中で、死んだ――とかいう噂を聞いたが、ジョン達は全くこれっぽっちも微塵たりとも信じていなかった。あの二人なら中位竜を当てたって死なないに決まってる。


「まあ、そうだよな。よくわかんねーけど…個人戦優勝したから団体戦も、って思ったんじゃねえか」


 男は興味なさそうに言ったが、それこそ疑問だ。ジョンの記憶では、『ジィ』はそんなものに執着するような面子ではなかったはず――。


「――……」


 思い出してしまって胃痛がした。横でエドガーも微妙な顔をしている。…奴らは濃い。ていうか、基本濃い『十強』の面子の中でも異彩を放っている。


「『オクタ』とかもいるにはいるけど、まあ勝てねえだろ。だから決勝に誰がいくかで賭けになったんだけど――お、第五試合か」


 前半部分非常に気になることを言った気がしたが、場の歓声と男の視線につられ、ジョンとエドガーもフィールドを見下ろした。


「…ガキ?」


 眼下にいるのは、どう見ても十代後半前後の三人組だった。しかも頭髪は金、黒、銀と鮮やかで、この場にあまり似つかわしくない。


「ああ、アレはアーヴァリアン王家の隠し玉って奴。なんでも百年に一度の天才らしいぜ」


 男が指差したのは銀髪の少年だった。多分あの中で一番年齢が低い。へえ、とエドガーが口笛を吹いた。


「確かになかなかの魔力量だな。…て、あれ?」


 何か引っかかる、といった顔でエドガーはフィールドを眺め、首を傾げる。


「…でも所詮、まだガキだろ」


 ジョンは彼らの相手を眺めた。強くはなさそうだが、少なくとも実践経験は王家のお坊ちゃんより遥かに上だろう。一緒にいる少年の仲間二人も、大して強そうには見えな――


「…あれ?」


 ジョンも首を捻った。おかしい。なんだかあの二人、どっかで見たような――。

と、眼下で狩人の男達が武器に手をやった。視線の先的に、どうやら黒髪が挑発しているらしい。無謀な行動を――


「……」


 おかしい。あの黒髪の構え、どこかで見たことある。それにその後ろで、達観したように空を仰ぐ金髪も――



 ――――――――――!!!!!!!



 次の瞬間のジョン・イーデルの行動は迅速だった。


「さっき賭けしてるっていったな!?」


 説明してくれた男はジョンの形相にかなり吃驚したようだが、律義に返答してくれた。


「あ、ああ…誰が決勝に進むか、で。因みに俺も集金人のひとり――」

「エドガー、今幾ら持ってる!?」

「――1000エルちょいだ。悪い」


 エドガーも流石だった。言いながら瞬時にジョンに金を渡す。因みに百エルが庶民の一日の労働賃金だから、それでも充分だ。


「俺はさっき下ろしたから十万エル持ってる!おいアンタ、あそこで戦いおっぱじめようとしてるガキ共のチームにジョン・イーデルの名前で十万と千エル!」


 ばんと叩きつけるように男に金を渡せば、男は目を丸くして、疑うようにジョン達を見た。


「これくらいの金額なら賭けてる奴多いから、そのへんはいいが…あんたら正気か?あいつらに?あいつら、(公式)じゃ賭け対象外申し込みしてるぜ」

「ああ。全額」


 迷い無く頷けば、懐疑的な顔をしながらも男は袋に金を入れ、手帳に『ジョン・イーデル』と書き込む。その間に、拡大された司会者の声が響いた。


『それでは――始め!』









 闘技場はしんと静まり返っていた。誰もが予想した光景――アーヴァリアンの神童が、経験の無さゆえに狩人に下される――とは、全く逆の光景に、誰も反応出来ないのだ。


「…よっわ。それでよく『十強』に追随するとか言えるね」


 既に剣を鞘に収めたリディが、地面に這いつくばる三人の男を見下ろして鼻で笑った。ちなみに反応はない。無論、気絶しているからである。


「スヴェン、いい動きだったぞ。思ってたより固さもないし」


 ルイスは試合前から変わらず腕を組んでいた。ちなみに一度も解いていない。なぜなら剣を抜く必要性がなかったからだ。


「…ふたりに稽古、つけて貰ったおかげです」


 スヴェンは照れ臭そうに笑いながら、剣を収めた。


 試合開始二分でケリはついていた。試合開始宣言と共に得物を抜いた双方――ただしルイスを除く――は、魔術師が向こうにいなかった為に完全な肉弾戦となり――あえなく二人はリディにぺしゃっと潰され、一人はスヴェンと数合切り結んだ後鳩尾への一撃で終わった。


「そこの似非司会者!」


 リディが観客席を見上げ、司会者を見据える。呆然としていた司会者は、慌てて我に返ったようだ。


「試合。終わりでいいんだろ?」


 誰が見ても明らかな事象に、否定要素もなにもない。司会者はまだ動転の抜けない声のまま、終了を告げた。


『だ、第五試合――スヴェン・アイヒホルンの勝利!』




狩人は基本『人ならざるもの』を相手に戦いますが、傭兵は基本対人専門です。主軸をどちらに置いているかで一応呼び名をわけてはいますが、同じものと考えても支障はあまりないです。

ただ絶対数は、狩人の方がかなり多いです。

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