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番外編 過去の記憶 (2) ルイスの場合

番外編 過去の記憶 (2) ルイスの場合









「ルイス様!こちらの案件は」

「シュルドーに確認を取れ。裁可が降りてなかったら保留に回しておけ」

「殿下、こちらは」

「それは陛下へ持って行け」


 …ああ、煩い。ひっきりなしにやってきては自分に案件を放り込んでくる臣下に苛立ちを覚えながら、ルイスは部屋を後にする。


「殿下、お気をつけて」

「ああ。俺の留守中、侍女以外誰も入れるなよ」

「はっ!」


 敬礼してくる騎士に軽く手を挙げて、ルイスは城の外へと向かうために廊下を迷いなく進んでいった。


 これからオルディアンに程近い、エランという街へ行くのである。なんでも魔物が出たとかで、諸々の事情からルイスに白羽の矢が立ったのだ。ルイスは内心で毒づいた。



――俺は政治の道具じゃないんだよ。


 今回の出張は、わざわざルイスが赴かなくともよい規模のものであったはずだった。だが、かの『氷の軍神』が自ら助けにいくとなれば、自ずと王家への民の思慕も集まりましょう――という忌々しい大臣の言葉に反論できる要素が見つからず、仕方なしにルイスは足を運ぶことを決めたのだった。


 あの男――シャードプス公の狙いは見て取れる。つまり正しくは、『王家への』ではなく『ルイスへの』思慕だ。『第二王子派』の筆頭であるあの男は、ルイスの評判を上げることで、シルファーレイを追い落とそうとしている。兄大事のルイスにとって、余計なお世話もいいところだ。


(…だがそれもこれも…俺のせいか)


 自分で言うのもなんだが、ルイスはそこそこ優秀だ。兄が病弱な事も手伝い、仕事量は普通の王子よりかなり多いと言ってもいい。


 加えて、彼の二つ名。

 五年前のあの件以来、ルイスが『烈火の鬼姫』と並ぶ者として位置付けられてしまって以来、エーデルシアスの水面下は、一層混迷を期すことになっていた。






「ルイス様」


 甲高く甘ったるい声が足音と共に後ろから聴こえて、ルイスは顔をしかめた。不機嫌な顔を隠しもせず振り向くと、予測通りの姿がある。


「エルゼリーヌ嬢。何故ここにいる?貴女との婚約は解消した筈だが」


 通常、ただの貴族の娘では、王宮にいることは出来ない。茶会などがあれば別だが、母はつい二、三日前風邪をひいてそれどころどはない。

 ルイスの底冷えのする声音にも満面の笑みを消さず、走り寄ってきた少女は口を開いた。


「そんなことを仰らないで。確かに私達の婚約は、お父様達の酒ついでで効力を発揮しないものでしたけれど、私達次第で、また復縁なんて簡単ですわ」


――復縁も何も俺とお前の間に(よすが)なんて塵も無えよ!


 心中で吐き捨て、絡み付いてこようとした腕を振り払い、踵を返して歩き出す。


「悪いが私は今忙しい。戯れ言に付き合っている暇はない。他を当たれ」


 追い縋る気配に釘を刺し、足早にその場を後にする。歩き辛いヒールのせいもあるのだろう、それ以上は追ってこなかった。









――――――――――――――――――




「王子さん」


 半日後、エランの街についたルイスは、砦に行くべく街の通りを歩いている時、不意に耳に、そんな声が届いて、足を留めた。喧騒の中の、小さな、本当に幽かな声だったのに、それは不思議とルイスの聴覚を捉えたのだ。


 自然と視線が吸い寄せられる。暗い細い小道の先に、フードを被った人間が、卓の上に水晶玉を載せて座っていた。


 ――占い師?こんなときに、なんてベタな。


 ふっと皮肉げに唇を持ち上げて、ルイスは小道に入る。


「なんだ?婆さん」


 占い師の前に立って、そう訊く。占い師は面白そうに言った。


「儂を婆と見抜くとは大したもんじゃ」

「お互い様だろ」


 自分を王子と見抜いたのだ。そこそこの力はあるのだろう。


「ふふ。王子さん。あんたはいずれ、運命に出逢うよ」

「…はァ?」


 おいおいベタもどこまで行くんだ。


 呆れるルイスを余所に、占い師は楽しげに続ける。


「お前さん、今人生楽しくないじゃろ」

「……」

「顔を見りゃわかる。お前さんは有能な王族じゃが…飽いておるな」

「…はっ」


 ルイスは自嘲げに髪を掻き上げた。蒼いサファイアの目が虚ろに歪む。


「当たり前だ。来る日も来る日も仕事。言い寄ってくるプライドばっか高くて中身の無い女共。何より…俺をなりたくもない王太子に仕立て上げようとする連中」


 吐き捨てられた言葉に、占い師は僅か沈黙し、やがて言った。


「…そうかい。逃れてみたい、と思った事はないかい?」

「…は?」


 ルイスは怪訝そうに占い師を見つめる。目深に被ったフードのせいで、弧を描いた口元しか見えない。


「現在から逃れて。好きに生きてみたいと思った事はないのかい?」

「……」


 ルイスは唇を噛んだ。そんなのはいつもの事だ。王族なんかからはぐれて、奔放に世界を見たいとなんと思ったことか。


 その道を選ばないのは、家族が心配だから。何より、結局身分を棄てられない己の甘えがあるからだ。


「…出来たら、いいのにな」


 呟いて、ルイスは占い師に背を向けた。彼女は何も言わずにそれを見送る。


 ルイスは、歩き出してから、そういえば結局何の用だったのだろうと思ったが、振り返っても、小道の先には暗闇が澱むだけで、誰の姿もなかったのである。












「じゃあ、その魔物の群はオルディアンの国境の森に逃げたんだな?」


 着いた先の城で兵士から状況を聴き、ルイスは顔をしかめていた。なんでも近隣で出没しているのは有象無象の魔物の群で、死者も二十人程出ているらしい。


(俺が出向いたのは無駄ではなかったな。このままでは民に余計な死傷者が出る)


 早急に解決すべき、と断じて、ルイスは立ち上がった。


「殿下、どちらへ」

「片付けてくる。オルディアンへの連絡をしておけ」

「はっ、では部隊を…」

「要らない。私一人で充分だ」


 にべもなく切り捨てたルイスに絶句し、兵士がですが!と声を上げたのを、黙って聞いていた城主が止めた。


「殿下。お任せすること相済みませぬ」

「構わない。気晴らしになる」


 外套を翻して出て行った王子と城主とを見比べて、兵士が叫んだ。


「閣下!?どういう…」

「心配するな。殿下はお強い。我らが行っても足手纏いになるだけよ」

「しかし、お一人では…!」

「あの方は戦神に愛された御子だ。魔術と剣技にかけて、この国の民でそうそう叶う者はおるまいよ。知らん訳ではあるまい?エルニルの件と、あの方の二つ名を」


 はっと兵士は息を呑んだ。――エルニルとは、数年前突如に魔物の大群に襲われた中規模の街の名だ。配備されていた兵力ではまるで歯が立たない数の魔物によって僅か一日で街は壊滅寸前まで行きかけたが、駆け付けた一人の王族によって、その大群は殲滅された。


――その王族こそ、ルイシアス・アレシウス・ロウ・キリグライト・エーデルシアス。この国の第二王子にして、後に氷の軍神と称される、青年だった。


「王族の方々は、どこの国でも総じて戦闘能力が高い。常に最高峰の二属性以上の魔力、更には治療魔力を有し、身体能力は常人はまるで及ばぬ。――だが、それをさし引いてもあの方は、エルニルの時、御年僅か十四であられた」


 兵士は言葉を無くした。たった十四で、街一つを壊滅寸前まで追い込んだ魔物の大群を、たった一人で殲滅した――


「あの方は飽いておられるのだろうな、今に」


 戦慄する兵士をよそに、ぽつりと城主は呟いた。疲労の滲む、冷めた海色の目。生まれだけなら兎も角、なまじ優秀故に、生きる道を翻弄されている彼。

 まるで、籠の中の金糸雀の様だ。その檻から解き放たれれば、もっと美しいのだろう――と、ふと思った。






―――――――――――――――――――




 鬱蒼とした森を、ルイスは無造作に進んで行った。魔の気配が探らずとも、手に取る様に感じられる。


(多いな)


 エルニルの時ほどではないが、一人で相手にするには荷が勝ちすぎる感がある。――が、それは普通の人間の話だ。


 ああ面倒だな、と舌打ちして、ルイスは魔力を練り始めた。結界くらいは張っておいた方がいいだろう。

 気配が濃厚になる。唇を舐めて、小さく呟いた。


「アイシィ、ウェーディ、アースエイシア」


 ルイスの声に応えて、彼にしか視えない三体の精霊が顕現する。いずれも最上位、気配は一目瞭然だろう。魔の気配の中に殺気が迸った。

 押し寄せる殺気にルイスはに、と口の端をつり上げ、鋭い音を鳴らして剣を鞘から抜き払う。息を吸い込んで跳躍すると、開けた空き地で、数十の魔物が彼を一様に睨んでいた。圧倒的不利に見える状況下にあって、しかしルイスは笑みを消さない。それどころかより一層、獰猛とすら言える笑みを形作って魔物を睥睨し返す。


「さぁ…暴れるか!」












 ザクッ、と剣を地面に刺して、体重を載せる。荒い息を気休めに宥めて、辺りにもう気配がないか視線を走らせる。目に映るのは、斬られ、刻まれ、凍り、潰され、縦横無尽に蹂躙された魔物達の死体。それを作り出したルイスの体にも、無数の小さな傷痕が走っている。


「…ちっと多かったな」


 滴る汗と血の混じった液体を、篭手ごと拭った。流石にこの数を一人は厳しいか…と内省したその瞬間、肌がぞわりと泡立った。本能的にその場から飛び退くと、次の瞬間にそこは鋭い爪らしきもので木っ端微塵に抉られていた。


「まだいやがったのかっ…」


 ヒヤリとしたものを首筋に感じながらルイスは氷の刃を放つ。真っ直ぐに狙い撃たれたそれは、しかしやはり爪らしきもので弾かれる。距離をとり、砂埃が収まってから漸く、相手の姿の前方が見えた。


 一見、蟷螂(カマキリ)。但し体長はルイスの三倍はあろうかという具合で、その体色は墨の様な黒、目は血の如く赤い。両前足の鎌すら、ルイスより大きい。その魔力の禍々しさに、ルイスは舌打ちした。


「中位種かよっ…!」


 遭遇するのは初めてではない。倒した事もある。だがそれは他に何人かの魔術師がいて、体力満タンの上でだ。


 これは少々厳しいかもしれない。這い上がる寒気を振り払い、ルイスは足を踏み換え跳躍した。


 ギギギギギッ!


 耳を覆いたくなる様な鳴き声に顔をしかめながらも、鎌をかいくぐり剣を走らす。確かな剣筋はしかし、堅い表皮に弾かれた。


「なっ…」


 見た目は昆虫なのに、鉄もかくやという硬さに驚愕した隙に、もう一方の鎌が迫っていた。


「ぐぁっ!?」


 鋭い痛みが脇腹に走り、血が噴き出す。顔を歪めて、ルイスは巨大蟷螂の肩辺りを思い切り蹴ると、近くの木に着地した。


「くそ…」


 血がどくどくと流れる感触と、揺らぎ明滅する視界に苛立ちながら、左手で傷口を抑えて治療魔力を込める。今出来るのは痛み止めだけだが、少なくとも視界は安定した。

 血が流れ、力が抜けそうな感覚から無理やり意識を遮断し、ルイスは目の前の敵に集中する。生半可な攻撃は効かない。


「固ぇな…とすれば」


 狙うのは関節。

 瞬時に決めると、ルイスは叫んだ。


「アースエイシア…!」


 叫びに土精霊が応え、地面が割れて隆起する。ぐら、と蟷螂の体が傾いだ瞬間、ルイスは木を蹴った。

 不自由な体勢の蟷螂から繰り出された鎌を弾き、その奥の関節に剣先を潜り込ませ、一気に叩ききる。青い体液と悲鳴を撒き散らすのを介さず、そのまま大上段から剣を振り下ろした。


 国の最高の刀匠に鍛えられた大剣は、裂帛の気合いと重力に助けられて蟷螂の頭を深々と貫き、一瞬の沈黙後、蟷螂は凄まじい悲鳴を上げ、壊れた絡繰の様に身を震わせ、どうと倒れた。

 地面に叩きつけられる寸前で蟷螂から飛び離れたルイスも、がくりと膝を付く。痛みを止めるだけで止血もしていなかった為、予想以上に血が失われていたらしい。急速に世界が色を失くしていく。


 世界が暗く染まる寸前、長いマントの裾が見えた様な気がした。














 鈍く脈動する痛みを感じながら、ルイスの意識は暗いところに落ち込んでいった。


 目の前に広がる、セピア色の世界。


 これは記憶だ、とぼんやりとルイスは頭の隅で思った。


『エルニルにっ…大量の魔物が――!』

『このままではエルニルは全滅ですっ…!』


 ああ、とルイスは顔を歪めた。しかも、あの記憶なのか。


 心で何を思っても、その場に立っているルイスの顔は、ただ青さを浮かべているだけだろう。これは過去の夢――未来が干渉することはない、決して。


『く…、僕の体が弱いばかりに…!』


 苦しそうに胸を抑える兄の姿。国主である為に玉座を離れられない父。流産直後で危篤の母。まだ幼い弟。

 軍を派遣しても、到底間に合う距離ではない。軍が着く前に街は滅びてしまうだろう。歯噛みする面々を見て、十四歳だったルイスは決めた。


『俺が行きます。風魔術を使える魔術士を集めて下さい』


 ――それから半日後には、ルイスは全滅に瀕していた街を、魔物から救っていた。

 エルニルを襲った魔物は凡そ百に及んだが、地形を利用した風魔術の効果的な展開、最終的にはルイスの魔術による圧搾作戦で片が付いた。

 しかし、その手際の良さと、居並ぶ王族をも圧倒する実力に、ルイスは『氷の軍神』という二つ名を戴かされる羽目になる。


 それは『烈火の鬼姫』とは違い、憧憬と感謝、畏敬を多分に含んだものではあったが――その名の為に、王宮はより一層の分裂の道を辿ることになったのである。












 温かい。ふわりと鼻を擽る匂いにつられ、薄らとルイスは目を開けた。


「起きたかい」


 同時にかけられた声の方向を見やり――飛び起きる。警戒心を目いっぱい宿らせた目で、ルイスはその人影を睨む。


「あんた…」

「命の恩人に、その反応はないんじゃないかい」


 ルイスの視線の先では、つい一日程前に目にした、怪しい占い師が肩を竦めていた。





「とりあえず腹ごなしが先じゃな」


 と、まずシチューを突き付けられ、多少警戒したもののその美味しさに無言でかきこみ、お代わりもし、落ち着いてから、改めてルイスは周りを見回した。簡素な小屋のようだ。


「その、命の恩人って…」

「脇腹の傷と、その他色々。塞いでやった」


 言われて確かに瞠目する。かなりの深手を負っていたはずの左脇腹は、綺麗なものだった。


「…感謝する」

「構わんさ。お前さん、うなされていたね」


 占い師はルイスから空の皿を受け取りながらそう言った。ルイスはぎょっとし、次いで浅く息を吐く。


「ああ。――嫌な夢を、見ていた」

「過去かい」

「……」


 無言は何よりの返答だった。占い師はやれやれと首を振ると、手元に運んできたお茶を啜る。


「紅――いや、『烈火の鬼姫』と違ってお前さんの名はさして忌避はせんでもいいと思うがな」

「確かにな。だが、俺の存在は兄上を脅かしている」


 ルイスは兄を尊敬している。将来兄が国を治めることを、誰より待ち望んでいるのはルイスかもしれない。なのに、なのにだ。


「あいつらは、俺を玉座につけようとしている。自分達の為にだ。俺は、そんなことの為に力を使った訳じゃないっ…!」


 掌を握り締めて激昂する。押さえつけていたものを、一気に吐き出した気分だった。


 占い師は黙ってそんなルイスを見やり、やがてそうかい、と呟いた。



「あの子も、お前も。その力の為に、苦しませてしまったね…」


 誰とは無しに囁かれた言葉。それはあまりに小さすぎて、ルイスが聞き取ることは叶わなかった。



 ルイスはしばらく目をぎゅっと瞑っていたが、首を振ってベッドから足を下ろした。


「世話になったな、婆さん。そろそろ戻らねえと、皆心配する…」

「まあ、待て」


 占い師はルイスの肩を押さえて留めた。不審そうに見上げてくる蒼い瞳に向かって、占い師は拳を突き出した。


「お前さんの想いはきいた。そして今お前さんには二つの選択肢がある」


 占い師はさらりと言った。ますます怪訝そうにするルイスに、指を一つ立てる。


「一つ。このまま城に戻り、今まで通り王子として生きる」


 もう一つ、指を立てる。


「もう一つは…このままオルディアンへ抜け、違う道を生きてみる」

「は…」


 目を見開いたルイスに、占い師は笑った。


「例えば狩人とかじゃな。他は…」

「…ま、待てよ!それはど」

「お前さん、戦うの、好きじゃろう?」


 ういう意味だ、という台詞を遮った占い師の言葉に、ルイスは言葉を失う。


 ――確かに、どこか戦いに高揚する自分がいたのは事実。生と死の交差する場の緊張感。それは、日常より遥かに魅力があった。

 そして何より、もし自分がいなくなれば。家族は悲しむだろう。部下達は狼狽えるだろう。だけど――自分が義務を投げ出した王子の汚名を着れば、臣下の心は兄上に傾く。自分を押し上げようとしている貴族達の中でも、見放す者も出てくるだろう。そうすれば。


(これ以上兄上を苦しませなくて済むかもしれない…!)




 そんなルイスを見ていた占い師は、微かに笑った。黒の運命が、動き出す。


「…逃がしてやろう。王には一報を入れる。お前さんはこの森を抜けて、オルディアンの街、アリエルへおゆき。さっきの魔物共の核は集めておいてやったから、一も二もなく狩人登録出来るじゃろう」


 そこから先を、ルイスはよく覚えていない。気付けば簡素な旅装に身を包み、懐に核を幾個も入れ、馬を駆っていた。


 国を、義務を放棄してしまったことへの罪悪感はある。だが、その時の彼にとって、それらは全て二の次であり、未来への茫洋たる想いが占めていた。






 ルイスを送り出した老婆は、ふふ、と笑う。さぁ、紅も、黒も動き出した。彼らはまもなく出逢う。そして世界の歯車も回りだす。


「そして我々の行く末も、な」


 老婆は笑みを深めると、肩を揺らして小屋の中に戻っていった。




ルイスがひねくれてます。今のルイスは、リディと出会って少し角が削れました。

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