第五話 後日談
六話の更新はちょっと遅れそうです読んで下さってる方すみません!代わりにもならないけど急遽書いたものおいてきます!
第五話 後日談
アルフィーノ南部を震撼させた、娘達の誘拐事件。被害者は百名に及んだが、囮となった二人を中心にした狩人達の働きで事は大惨事の寸前で収められた。
平和が戻った街の一つであるロハスも、元の活気をほぼ取り戻していた。
「今頃あの人達、どうしてるかしらね」
毎日お茶の時間に、娘達が喫茶店に集まってお喋りに興じながら、彼女達の口に上るのは、ひと月が経った今でも、この話が多い。
「ゼノへ行ったんでょう?でもあの国って閉鎖的で軍国主義だから、心配ね」
「あの三人に危険な事なんてある?」
揶揄まじりの台詞に、一同が笑い声をあげる。
赤い髪の少女も、黒髪の青年も、茶髪の少年も。彼女らが目の当たりにしたのは主にし少女の力だけだったが(少年の力で守られていたらしいけれど)、後から聞いた話では、他の二人も彼女と同等レベルの実力があるらしいと聞いて、恐れを通り越して呆れたものだ。
「ないない。あの三人には軍隊一個あっても勝てっこない」
「否定できないのが恐ろしいわ」
初めてみた時は怖かった。余りに強すぎるその力が。囚われていた娘達の中には魔術師を含め、魔術の心得がある者は二十人余りいたのに、全く持って歯が立たなかった結界をいとも容易く破り、犯人を打ち倒した、絶対的な力が。
でも、彼女はそれを自分達の為に使ってくれたのだ。見返りも何も求めず、ただ自らの身を削って。
礼を言った時の泣き出しそうな顔を見た時、彼女達は少しでも怯えた自分を恥じた。今まで少女の胸に降り積もってきたのかもしれない鉛に、加わる寸前で踏みとどまった事を実感したのだ。
「それにしても」
「うん」
そして話はいつもここに帰結する。
「なんか、見た目も凄まじい人達だったよね」
「うんもうリディも超綺麗だし!」
「あの肌ずるいわよ!白い癖に肌理細かいの、見た!?」
「見た見た。あの金色の瞳、猫みたいだけど澄んでて綺麗なのよね」
「あのルイスって人は、男の人じゃないみたいに綺麗ででもちゃんと男らしいし!」
「そうあの髪とか嫉妬しちゃう!」
「ていうか目と声よ!ふとした瞬間に色っぽいんだもの、ドキドキしちゃった」
「アルって子も可愛いし!」
「女装超似合ってたよね!言われるまで気付かなかったもの!反則よ!」
「もう少ししたら美男子になるわよね。今はまだ美少年って感じ」
「わー、将来見てみたい!」
女を集めて姦しいとしたのは至言である。一瞬にしてきゃあきゃあと騒がしくなる一団に、しかし周囲は慣れた様子で気にも留めない。ひとしきり騒いだ後、でも、と娘達は苦笑する。
「ルイスさんね」
「うん」
「絶対アレだよね」
「うん」
「気付いてないかもしれないけど」
「かもじゃなくてないわよ。鈍そうだし」
「ええーでも慣れてそうじゃない?」
「遊びはね。でもあれは本物は経験なしと見たわ」
「成程。いいとこのお坊ちゃんって感じだしね」
「他の二人もね。ていうか問題はリディよ」
「そうね。あれはなんなの」
「あれじゃない?深窓の令嬢」
「深窓の令嬢があんなガサツだったら泣くわあたし」
「でも実際全員、ちょっとした所作が綺麗じゃない。あれは貴族でしょ」
「でも貴族皆が鈍い訳じゃないでしょ?」
「だからあれは特殊なのよ。普通の貴族は狩人なんかやらないわよ」
「もっともね」
「でも二人共それじゃ、道は遠いわよ」
「そうねえ。横から盗られなきゃいいけど」
「ねえ」
娘達は顔を見合わせくすくす笑う。
「もたもたしてたら私が盗っちゃおうかな」
「あ、ズルい!でもあんたじゃ無理よ」
「何ですって!?」
キャラキャラと明るい笑い声。それが再び響くようになったのは嬉しい事、なのだが。
「娘達にかかっちゃあいつらも形無しだな…」
たまたま喫茶店に居合わせた男の呟きは、なんとなくやるせない思いを感じていた他の店の気持を、見事に代弁していたのだった。
その頃ゼノ。
「「はっくしょんっ!!」」
「うわ、大丈夫か?風邪か?」
「大丈夫ですか?お二人共…」
アルとセレナの気遣いに、ルイスとリディは全く同時にくしゃみをしたお互いを見つめ、眉を寄せ合う。
「いや…」
「多分」
「「誰かが変な噂でもしてんだろ」」
姦しい女の子達が書いてみたかっただけでした。
最後に出てきた未出の名前は六話のメインで全体通してのメインとサブの中間点のキャラクターです。
できれば四月の一ケタ中には六話上げます…!