巫女・妖狐
「もう、意地悪なお方……」
引きはがした雅さんが「シャイなんだから……」、「分かってますとも」とでも言いたげに妖しく微笑んでいる。
違うよ。何も分かってないよ。
いちいち疑われたり聞かれても面倒だから、オレの体質についてささっと理解してくれたらしいことはありがたい。
ただ一連の流れからして魂胆が透けて見えてるから、今更そんな態度を取られたところで「なんて可憐でいじらしい人だ。守護らねば」とはさすがにならんでしょ。演技派の妖狐ならもうちょっと頑張って騙して欲しいところだ。どうせ騙されるならオレも気持ちよく騙されたい。
とはいっても、なんというか……この人も必死なのかなぁ。
さっきの鬼といい今の天狗といい、彼女は敵対しているらしい存在に対して全く歯が立ってないように見えた。住処がどうとか言っていたし、妖怪大戦争とでもいうのか、雅さんは魔人とやらに負けて落ち延びた家なき狐なのかもしれない。
そう考えると可哀そうだ。
彼女がなんで狙われているのか、どういう状況に置かれているのかくらいは聞いてあげてもいいかもしれない。
「寒くないですか?」
「ぁ……」
雅さんは息を呑んだ。
一瞬だけ驚いたような表情を浮かべたものの、すぐに変化する。
薄っすらと染まる頬。やんわりと綻ぶ口元を掌で隠し、濡れた瞳を嬉しそうに細めた。
まさに、意中の相手に気遣いをされて感極まった、というふうに見える。
でも全裸なんだよなぁ。
「東堂様……!? 私を……案じてくださるのですか? なんとお優しいお方……。嬉しゅうございます……」
「まあ、全裸ですし……。最近寒くなって来たからどうかなと思って」
「もったいなきお言葉……。東堂様のような益荒男に、私のような婢が気にかけて頂けるなど……まさに夢心地でございます……」
雅さんがまた懲りずにそそくさと寄って来た。
手を伸ばしてきてオレに触ろうとしたかと思えば、寸前で引っ込め、躊躇ったような素振りを見せる。そして触りたいけど触り難い……みたいな葛藤をしているかのように、恐る恐るといった様子で指先だけをオレに触れさせた。
なにしてんだこの人。
雅さんを観察しているから黙っているだけのオレをどう捉えたのか、雅さんは触れた指先をオレの体の表面で滑らせ、指の腹、掌と順に接触面積を増やしていく。
「東堂様……。私、寒うございます。心が寒うございます……。どうか私に東堂様の温もりを……お分けになって……」
雅さんはそう言いながらそっと身を寄せてきた。寄りかかられている割には体重を全然感じないのは、雅さんが軽いのか、そういう寄りかかりのテクニックか……。
しかもこの妖狐、さりげなく胸を隠してる尻尾をずらしたな。少し硬い二つの突起と柔らかな母性が、上着を失い薄着になっているオレにダイレクトアタックをかましてくる。
「雅さん……? あの」
「魔人どもを前に動じない胆力、寄り縋りたくなる上背はたくましい大樹のよう……。そしてその瞳のなんと暖かなこと……。まさに闇夜を照らす月光のようでございます……」
雅さんが潤んだ瞳で上目遣いに見つめて来る。
しかし綺麗な顔だ。認めざるを得ない。
目元も瞳も鼻筋も唇も、何もかもが整っている。オレが今まで会った中で多分一番整った顔だ。なのにいちいち妖艶さが滲んでいる。しかも圧を感じる類の美貌ではなく、どこか親しみのある暖かな顔つきだ。狸顔ってやつかな。狐なのに狸顔。
妖艶さと言えば、彩乃さんもそうだった。彼女が支配者的な妖艶さなら、雅さんは被支配者的な妖艶さというか……保護欲や支配欲を掻き立て、男の理性を擽って来るタイプだ。しかもこの狐はそれを意識的にやってる。
「ああ……。東堂様……。どうか私を……」
遂に頭も含めて全身でしな垂れかかって来た雅さんが零した吐息と声は、震えあがるほどに柔らかい。
身も心も、尊厳すらも含めて、この人のすべてがオレの手の中にあるという実感がある。守ってあげたいという庇護欲と、この人を守らなければという責任感が湧き上がる。
今、この人を力強くかき抱けば、きっと嬉しそうに嬌声を零し、されるがままに欲望のすべてを受け入れてくれる。そんな確信を抱かせて来る。
出来る……。
男を手玉に取って来たことを言外に自負するだけはある。
あえて皆まで言わなかったのは小技か?
無防備にすべてを曝け出しているようで最後の一線だけは相手に越えさせようとするところもにくい。選択させることで主導権を手放し、「手に入れた」という実感を抱かせ、独占欲まで持たせるつもりだ。
困るなぁ……。
そもそも受け入れる気がないわけだからオレには。
いやにしおらしいからさっきみたいに引きはがすのも罪悪感が湧いて来るし。
男の本能はパーリナイだけど、理性と価値観は「乗るな」と警鐘を鳴らしている。絶対面倒くさいことになる。
「……」
オレに身を寄せている雅さんのつむじを見つめる。
「雅さん。オレは性急なのは好まないので、自制をお願いしますね」
「……」
追いすがって来ないように素肌の肩に手を置いて距離を取る。
雅さんが一瞬愕然とした表情を見せる。
胸の突起隠してくれない?
「お、お恥ずかしい……。私、少し急いておりました……。東堂様への想いが抑えられず……お恥ずかしゅうございます……」
さすがというべきか、瞬時に切り替えたようだけど……。
内心ではキレてそう。
以前断ったことを女の恥をかかされたって怒ってたようだし、プライドが高いんだろうな。断られたこと無さそう。
きっと何か言いたいこともあるんだと思うけど言ってこないのは、オレの機嫌を損ねたくないからかな。信乃ちゃんのときみたいにオレとの関係を単純に大切にしたいからって理由じゃなくて、打算ありきで。
今現在、雅さんとオレでは雅さんの方が立場が弱いようだ。少なくとも雅さんはそう思ってそう。初めて会ったときとは立場が逆だな。
「雅さんは別にオレのことが好きでそういう態度を取ってるわけじゃないですよね?」
「そんな……。私は東堂様のことを……」
「普通に話をしていただければ聞きますよ? 困っていらっしゃるなら、出来る範囲でなら手助けもしますし。そんな下手に出なくても……」
「そのような……。私はただあなた様を思う一心でございます……。どうか私の想いを否定なさることは……どうか、なさらないで……。私はただ、あなた様を……」
雅さんが悲し気に顔を背けた。
つ、強い……。
オレが察していると分かっていてなお、演技を徹底し続ける図太さ、意地。直前までの粗暴な態度の一切を感じさせない繊細な所作。初心な少女の自然なぎこちなさや照れはあっても、演じることへのぎこちなさがまるでない。最初からこの人はこういう人で、本当にオレに恋をしているんじゃないかと勘繰らせるほどの演技力だ。
雅さんは自分にオレを溺れさせる気だ。目的は多分、魔人とやらの盾にするため。「出来る範囲」程度ではなく、自分から彼女のために身を捧げたくなるほどの、強い恋愛感情を植え付ける気だ。
これが妖狐。人を化かし、心を弄ぶ日本屈指の大妖怪の同類……。
そんなド汚い恋愛頭脳戦みたいな駆け引きを、普通に大学生活を送っていたオレ相手に仕掛けて来ないで欲しい。
雅さんに相応しい相手はきっと他にいると思うよ。
もしこれが信乃ちゃんのときみたいに、『貞操観念が明らかに根付いているのに、それ以外に現状を変化させる方法が思いつかない』、っていうことなら言葉を尽くして止めるし、窘め寄り添うことだってした。それは相手を傷つけるのがオレになってしまうからだ。
でも彼女の場合はきっと全く無理してない。
そもそも日常的に楽しんでたみたいだし、これで釣れたらラッキーむしろ安い、くらいに考えてんじゃないかな。以前のこともそうだし、さっきも吸うとか言ってたし。サキュバス的食事、みたいな感じなのかも。
「申し訳ないですが、仮に雅さんが普通の学友だとしても、良いお返事は出来ません。オレはあなたに恋愛感情を持たないからです。そして以前お伝えしたように、オレはパートナー以外と関係を持つつもりはありません」
「……」
雅さんが黙った。
「プライドを傷つけてしまったなら謝ります。以前のことも含めて。そのうえで、さっきも言いましたが、普通にあなたの状況を教えていただければ、出来る範囲で、ではありますけど、協力はしますよ」
「……」
「雅さん?」
「承知しております……。あなた様は人の身。どれほどお慕い申し上げようとも、私は所詮、下賤の身。卑しい妖狐。ですが、もはや止めるすべが分からぬのです……っ! あなた様を恋い慕う想いが溢れて止まらぬのです。どうか東堂様……っ! 勝手は承知の上……。ですがせめて、あなた様を想うことだけは、どうかお許しいただきとうございます……っ。たとえ叶わぬ想いとて……あなた様を想うことだけは……っ」
つ、強い。
必死の懇願が堂に入っている。
意地でもオレのことが好きという体を貫く気だ。しかも超至近距離で女優顔負けの演技で迫られたら、心情が動いてしまってもおかしくはない。全裸だし。
「雅さん。普通に話していただければそれで別に……。あなたがきっと大変な状況に置かれているだろうことは察しています。オレとしてもあなたには恩もありますから、義理は果たしますよ」
「恩だなどとそのような……。私はただ、東堂様を想う一心にございます。どうか……信じていただけませぬか。あなた様に疑念を抱かれるなど、私にとってはあまりに辛く……、胸が締め付けられる思いでございます……」
雅さんは切なげに腕を自分の胸元に当て、身を竦めた。
どうか分かって欲しいと、切なく哀し気な表情で訴えかけて来る。
徹底してるな……。
迷子としてあの神社に迷い込んだとき、雅さんがどんな思惑でオレを歓待したのかは分からないけど、オレ自身が恩義を感じている以上、それを返せたとスッキリするまではオレとしても話は聞くのに。無理なことは無理って言うけど。
無理って言わせたくないからこそ、このムーブなんだろうってことも分かるけど。
「おのれ東堂、とか言ってたのにですか? 怒ってたみたいですけど」
「言葉の綾にございます。誓ってそのようなつもりは……」
どんな綾だよ。
「いえ……、東堂様はご不快な思いをされたのですね……。申し訳ございませぬ。私が愚かゆえにそのような……。お許しくださいませ……二度とそのようなことは申しませぬ。どうか……」
そう言われるとな……。
めんどくせぇな……。
これが雅さんの素じゃないっていうのが逆にめんどくさい。
「分かりました。それはもういいです。それで……雅さんはオレに何を求めてるんですか? 魔人とかいうのから守って欲しいということなら、申し訳ありませんがお引き受けできません。オレは普通の大学生で、戦う力は無いので」
「……。そのようなことは……。いえ、東堂様の手を煩わせるつもりは毛頭ございませぬ。ただお傍に置いていただきとうございます」
「それは……つまり、うちに居候させてくれということですか? 数日泊まるくらいならともかく、さすがにそれは……」
とりあえず物理的な距離を詰め、心の距離は時間を掛けて、ってことかな。打算ありきだから分かりやすくてそこは助かるけど、最初の妖怪ムーブが無かったら騙されてたと思う。
それはそれとして、居候はさすがに……。
たとえばお隣さんが長期出張になるからしばらく茶々ちゃんを預かってくれとか、信乃ちゃんが家にいられないからしばらく居候させてくれとかならオレも考えはする。でもそれは前提として、ある程度の信頼関係があることと、お隣さんからの『お心付け』や、公的制度のアシストがあっての話だ。完全に無償で人一人を居候させるというのは嫌かなぁ。
「家事全般には自負がございます。それに私は妖狐ゆえ、食い扶持をお気になさることもございませぬ。私はただただ、あなた様の身の回りのお世話をさせていただけることが幸せでございます」
「なるほど……。食費を自分で賄ってくれて、家事全般もやって貰える……。それは確かにありがたいことですね……」
つまり、セフレ兼家政婦との同棲。
なんだこれは。
美人でおしとやか、男を立ててくれる言動に加えて家事スキルも高く、昼は貞淑、夜は情婦。
男にとってめちゃくちゃ都合が良い。良すぎる物件だ。
もれなく意味不明な厄介事がついてくることを除けば。
事情の説明を避けてるのもそれでかな?
全貌を知られると困ることがあって、先に泣き落としと色仕掛けでオレを篭絡しようと……。
ただ、逆効果なんだよなぁ。
オレは普通に助けてって言われた方がやる気が出るというか……。
雅さんの露骨な手のひら返しというか、態度の変化はあまりにも分かりやすくてオレとしても嫌いじゃないんだけど、打算ありきは好きじゃない。
つまり、こういうことか。
オレに恋愛経験が乏しいことを知り、『性と恋慕』で攻めてきた雅さんは、しかしそれだけだと攻略が厳しいと判断し、家庭的な要素も持ち出して来た。
以前ご馳走していただいた食事は確かに美味しかったし、家事全般が出来るというのは嘘では無いだろう。片付けが出来るかどうかは分からないけど。というか木刀の件も聞かないと……。
全部聞きたいけど、違ったときがあまりに失礼過ぎるな……。
「普通に事情を話してくれる気はありませんか? そうでなければオレとしてもこれ以上は話が出来ないと判断して帰るしかないんですけど……。それと前、隠して貰えます?」
「そんな、事情など……。私はただ、あなた様のお傍に……」
そう言いながら、雅さんは再び前を尾で隠してくれた。
「ありがとうございます」
雅さんに小さく頭を下げてから続ける。
「確認したいんで」
「お父さん!!」
えっ?
急に知らない声がしたせいで言葉を呑み込んでしまった。
声がした方に目を向けると、巫女服を着た女性がこちらに走って来るのが見える。
さっきまで神社の中には誰もいなかったのに……。今来たのかな?
レンズの厚い丸眼鏡に、黒髪を三つ編みにし、うなじ辺りから両サイドにおさげを流す髪型が特徴的な素朴な雰囲気の巫女さんだった。
SNSで狙ってやっている人たちのような華やかさは無い。それだけだとレトロな文学少女といった素朴な風貌だが、巫女服を着ているせいか逆に目立っているように思う。
こういう人が眼鏡とって髪を降ろしたらめちゃくちゃ印象変わってドキッとするときあるよね。
巫女さんは全裸の雅さんを認識すると凄い形相になって走る速度を上げた。
そしてオレを雅さんから引きはがすようにオレの肩を引っ張り、オレと雅さんの間に入り込む。
「貴様、妖狐か! 父をどこへやった!?」
巫女さんが雅さんへ向かって叫んだ。
オレは思った。
―――良かった。お父さんってオレのことじゃなかった。
いや、最近は色々あったからさ。
「未来から来たオレの娘が」みたいなのだったらどうしようかと……。
「あの、あなたは……」
「あなたは下がって!」
ここの人なのかなと思って巫女さんに話を聞こうと思ったら遮られた上に割と強く物理的に押し返された。気だけじゃなく、力も強いようだ。
見た目が図書委員とかやってそうだなって感じだから大人しい人なのかと勝手に思ってた。
女性は雅さんを睨みつけたまま、背中越しに語り始める。
「危ないところでした。あなたはわたしの後ろに居てください。あの女は妖怪です。美貌と言葉で男性を惑わし、食い物にする化生。突然のことで信じられないかもしれませんが、妖怪は実在します。そして、大変危険な存在です。しかもアレは狐……。もし伝承に語られる九尾の狐をご存じであれば、その危険性はお判りいただけるかと思います。ですが、わたしは妖怪退治を生業とする一族の出。ご安心を。あなたはわたしが守ります」
かっけェ。
「おい、狐。貴様、父をどこへやった!? この人をどうするつもりだった!?」
「はぁ? いきなり現れたと思うたらなんじゃ、小便臭い生娘が。儂が九尾の狐と同類などと、恐れ多いことを抜かすな」
雅さんが何とも言えない表情で女性を小馬鹿にする。
まあ、二本しかないもんね尻尾。
それにしても、この巫女さんはここの神社の人なのかな。もしお父さんがあの神主さんのことを言ってるなら……爆散させましたオレが。
どうすればいい?
どうすれば責任を取れる……?
そんなことを考えているオレを他所に、二人のやり取りがヒートアップしていく。
「きむ!? 狐が何を根拠に……っ!」
「おーおー。臭いよる臭いよる。男を知らぬゆえ、手入れもしておらぬか? 小便はちゃんと拭いとるか?」
「あなた、奴の言葉を聞かないでください! 妖狐は人の心を惑わします!」
惑わされてるのは君だけだよ。
でも確かに。
「あの、雅さん。そういうことを言うのは止めて欲しいです。聞いていて不快になる」
「は……っ!? も、申し訳ございませぬ……! 私としたことが、東堂様のお耳になんとはしたないお言葉を……っ」
「なっ!?」
巫女さんが凄い速さで振り返り、困惑と敵意が入り混じった表情を向けて来る。
なんか妖怪を使役する奴、みたいに思われてそう。
「雅さん、余計なことを言わないでください。今、明らかに誤解されました。あの、違うんです。オレは東堂といいます。今日はここにお祓いに……。予約してたんですけど……あなたはここの……?」
「なるほど、そういうことでしたか……。確かに予約が入っていたことは存じてます。つまり、あなたはあの妖狐に取りつかれたがためにお祓いを……。分かりました。わたしが父に代わり、今この場で奴を祓います!」
巫女さんが懐に手を入れたあと、手を横に広げた。指先に挟んであるものは……お札か。
まあ、定番ではある。
「観念しろ、狐!」
「儂相手に祓うなど、よう吠えたな小娘が! 上がりし我が位階、おのれで試してしんぜよう!!
……あ、東堂様。少々お待ちくださいませ。ご心配なされずとも、灸を据えるのみでございます。決して危害は加えませぬゆえ、ご安心くださいまし」
それを危害って言うんじゃないかな。
でも正当防衛というか、巫女さんが暴走しているのは否めないから止めないと。
「狐。そうやって人の心を支配しているという訳か……っ!」
雅さんの言葉を聞いて、巫女さんが振り返った。
「どういう状況かは察しました」
マジ?
オレは察せてないと思うよ。
「いや、そこの狐さんは雅さんといって、決して悪い狐……かどうかはまだ分かりませんが、話を」
巫女さんが哀れむようにオレを見ている。
「察します。信じられないかもしれませんが、あなたはあの狐に騙されていたんです。みだらな愛人、貞淑な妻、いじらしい恋人、古来、狐はそのように装い人に近づき、堕落させてきました。とても強力な妖怪です。その妖狐に取り憑かれながら、よくぞお祓いの決心をされましたね。あなたはとても強靭な精神をお持ちのようだ」
なんか「洗脳されてるけど、深層心理でそれに抗って神職の方に助けを求めに来た被害者」みたいな扱いされてんな。
「よく頑張りましたね。もう大丈夫ですよ。奴を祓い、必ずあなたを救います」
巫女さんが指先に挟んでいるお札をオレの額に近づけて来る。
あっ……、それは……。
巫女さんの向こう側で「にやっ」と笑った雅さんが見える。
気づかれないとでも思った?
覚えとくね。
「なっ!?」
巫女さんのお札が燃え上がる。
知ってた。
「か、家宝の札が……!? それほど強力な呪いを!? それともあなたが!?」
巫女さんがパニックを起こしている。
あー、もう無茶苦茶だよ。




