3:人は自分を正当化する生き物である
この作品は一応、あと数話程度での結末は考えてます。
ただ、読む人が増えたり、自分が書きたくなったら続けていく感じです。
渋谷、人が多い場所。だけど今日はいつもより、ちょっとだけ人が少ない。
「うがっ!・・・」「キャアアア!」「助けて!助けて・・・あっ・・・」「神様!・・・かみさまああああ!!!」
「・・・まって」
血が舞い踊る。異世界の、二ホンの悪魔たちの血が舞い踊る。
「ファイア!」「うぉおおおお!・・・やった、これで悪魔の討伐数5だ!」「いける!私たちなら悪魔から国を守れる!」
邪悪な者をみんなで倒すことによる1体感で興奮する青少年騎士団の行進。
「待ってください!!」
それを止めたのは1人の少女の悲痛な叫びだった。
「「「「・・・・・・」」」」
「君はたしか、エルミーヤか」
騎士団の前に立ちふさがったのはエルだった。
「こ、こんなの、おかしいです!」
「落ち着ついてくれ、一体どうしたというのだ」
興奮ぎみに話すエルに対し、冷静に話すゴードン。
「だ、だって!これは・・・騎士のすることじゃないです!」
「・・・どういうことなんだい?この者たちは悪魔だ」
「本当に悪魔なんですか!?私には普通の人にしか見えません!」
「アイツは何を言ってるんだ?」「悪魔じゃない?・・・でも確かに、俺たちと同じ人間だって言われると・・・」「もしかして・・・」
騎士団の反応を見て、自分の言葉が届いたと確信する。
「お、おい・・・何言ってんだよ。コイツらは悪魔だろ?」
「え?」
だが、1人の男は違った。彼は真っ先に二ホンの悪魔を討伐した人だ。
「でないと、俺が倒したのは・・・」
「・・・・・・あ」
間違えた。
「・・・じゃあ、私たちがやったことって」「え、ウソでしょ?」「あ・・・・・・」
「ま、まって 」
自分の正義を貫いたはずなのに、『なにか』を致命的に間違えた気がした。
騎士団の半分の人が慌て始める。それはつまり、半分の人間が悪魔討伐・・・いや、『 』をしたということだ。
「諸君!冷静になるんだ!この者らは間違いなく悪魔である!」
ゴードンの”ピシッ”とした声が、狂気に陥りそうな騎士団の空気を変えた。
「ご、ゴードン隊長?」
「で、ですが隊長・・・この人たちの見た目は・・・」
「我々と同じ人間に見える。だが、それこそが悪魔の狙いなのだ!」
「ど、どういうことですか!?」
「我々と同じ姿になることで、私たちに罪悪感や同情心を植え付けるという卑劣な手段なのだ!現に君たちは罪の意識をもってしまっている!それでも、この者らは悪魔だ!見ろ、ほとんどの者が黒い髪で統一されている!これが悪魔である証明なのだ!」
「な、なにを言って・・・」
ゴードンの言葉にルナは信じられない気持ちになる。
自分が憧れていたはずの隊長の姿が、今は恐ろしくて仕方がない。
「た、たしかにそうだ!」「・・・二ホンの悪魔め!なんて卑劣な!!」「と、とても怖いわ・・・」
「み、みんな・・・?」
しかし、そう感じたのはエルだけだった。他の青少年たちはゴードンの言葉を信じている。
「諸君!私たちは騎士だ!王のために、二ホンの悪魔どもを滅ぼすのだ!私に続け!!」
「「「「おぉおおおおおおおお!!!」」」」
ゴードンの号令で騎士団は再び団結する。
「みなさん!!私の言葉を聞いてください!!!」
エルがゴードンに負けないくらいの声量をだした。
「エルミーヤ。君はもう帰った方がいい。悪魔の卑劣な手によって今の君は戦える状態じゃない」
「違う・・・!違います!!」
「では、どうしたというのだ」
「仮に・・・彼に彼らが悪魔でも!!この人たちは、私たちに危害を加えようとせず、ただ逃げただけではないですか!?」
「そうだ、この悪魔どもは自分たちの同胞を簡単に見捨てて逃げるような卑怯者だ」
イヤな感じだ。もはや何を言っても自分の言葉は聞いてもらえないような雰囲気だ。
それでも、エルは声をだそうとする。
「で、ですが、この人たちは私たちに危害を加えたわけでは・・・」
「・・・・・・何を言っている。彼らは私たちを攻撃してきただろう?」
「え・・・な、何を言ってるんですか?!」
エルは目の前で対話している者が、本当に自分と同じ人間なのか分からなくなってしまう。
それとも・・・私がおかしくなってしまったのだろうか?
「これを見たまえ」
ゴードンが指さした方には、既に死体となって倒れている男が手に持っている、手のひらサイズの大きさの長方形でできた鉄の板だ。
「こ、こんなのが武器だっていうんですか?!」
「なら聞くが、私たちが剣や槍を構えた時、彼らがこの鉄の板を私たちに向けた理由をどう説明する?」
「そ、それは・・・」
「コレは悪魔の武器なのだ。たしかに私も最初は分からなかった。しかし、そうでなければ説明がつかないんだ」
「・・・」
ゴードンの説明にエルは認めたくなかったが・・・納得してしまう。
「そして、もしかしたら我々は悪魔の攻撃で全滅していたかもしれない。しかし!そこの彼が!私たちの窮地を救ってくれた!!」
ゴードンが後ろにいる騎士団に振り返る。
その視線の先にいたのは、始めに悪魔を討伐した青年だった。
「え、お、オレっすか?!」
「そうだ。君のおかげで私だけじゃなく、他の者たちも救ったのだ。ありがとう、君と共に戦えてることに私は感謝と敬意を表する」
「そ、そんな!オレ・・・自分なんかのために頭を下げないでください!?」
「いや、君のしたことはそれだけの価値があるのだよ。君は間違いなくこの戦いで英雄と讃えられるだろう」
「おぉ!」「す、すげえ!」「英雄・・・」「ね、ねえ、もしかして私たち、スゴイことをしてるんじゃない!」
騎士団全体の雰囲気がプラスなエネルギーに満ちていく。
「さあ!皆の者!私と共に二ホンの悪魔を根絶やしにするのだ!恐れることはない、我々には神のご加護がある!」
「オォオオオオオ!!!」
「「「「「オオオオ!」」」」」
「ま、まって・・・」
「正義は我らにあり!」
「「「「「正義は我らにあり!!」」」」」
***
止められなかった。
「駅だ!駅から電車にのって逃げるんだ!」「お、おい!そこをどいてくれ!!」「電車!電車はまだ来ないの!?」「た、助けて!・・・助けて!!!」「まだ死にたくない!」「この子だけでも、この子だけでも助けてください!!」
悪魔の叫び声が聞こえる。
「逃がすかあ!」「メガ・サンダー!」「や、やった!私にも、できた!」「なあ!悪魔を討伐した数で勝負しねえか?」「おいおい、俺たちは騎士なんだぞ?そんな遊び気分でいると足元すくわれるぞ?」
若い騎士団の歓喜の声が聞こえる。
「あ、アア・・・」
『憎悪』『歓喜』『悪意』『善意』『後悔』『希望』『絶望』、様々な感情の叫びを聞いた彼女は・・・・・・背を向けて逃げ出す。
(サクラちゃん!エドガー君!2人とも、今どこにいるの?・・・会いたい。2人に会いたいよ・・・!)
結局、彼女1人ではどうすることもできなかったのだ。
強いて彼女が為したことをあげるとするならば・・・・・・騎士団が駅にいる人たちを襲撃する時間を数分だけ遅らせたことだろう。
ゴードンさんの誘導演説が上手く書けたか自身がないですが、とりあえず自分の低レベルの頭脳を振り絞って書きました(笑)
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