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1. 人生って基本的に思い通りにいかない

久しぶりの新作です。頑張って完結させます。


多分、そんなに話を長くするわけではないのでいけるはず・・・。

 私がいる国、キョクトウはとても平和だった。

 だけど、平和は突然くずれたらしい。まるで積み上げたトランプタワーが崩されるくらい簡単に。


「諸君!今日は予言された<侵略>の日である!」


 どこまでも見渡せそうな広大な草原。

 そこには今日、自分たちの国を侵略してくると言われている悪魔から守るために志願した<騎士>の隊列がいた。


「悪魔の襲来に備え!我が国、キョクトウは騎士を募った。そして、君たちのような未来ある若者が志願してくれたこと、心より感謝する!」


 そう、私のように<青少年騎士団>として志願した人もたくさんいる。


「エル、大丈夫?緊張とかしていない?」

「え、エドガーくん!う、うん。実はちょっとだけ緊張、してるかな?」

「アハハ、やっぱりそうだよね。僕も緊張してる。でも僕は、絶対に君を守るために戦うから」

「! う、うん!ありがとう・・・」


 あ~!やっぱりエドガー君は優しくてカッコよくて素敵だなあ。


「おやおや、お熱いね~」

「さ、サクラちゃん!?」

「いや~、あまりにも甘い空間で私はコーヒーが飲みたくなっちゃうくらいだよ~」

「そ、そういうつもりじゃ?!ぼ、僕とエルは小さい頃からの仲で、その・・・」


 エドガーは顔を赤くしながら、早口ぎみに抗弁する。


「へえ~。幼馴染からの、()()()()()、ってわけだね!」

「「・・・・・・」」

「あれ、2人とも顔が真っ赤だね。両想いだったか」


 うぅ!サクラちゃん、直球すぎるよー!


「る、ルナ!」

「! は、はい!!」


 エドガーが真剣な表情で、ルナと真正面に向かい合う。


「この戦いが終わったら、俺と・・・」

「え・・・ふえ?!」

「はい、そこまで。そろそろ時間だよ。続きは後でね」


 サクラが”ぱん”と手を叩いき、2人だけになってしまった世界を現実に引き戻した。


「あ、ご、ごめんエル!その、気持ちが抑えられなくって・・・」

「う、ううん!私は大丈夫だから!その・・・待ってるから」


 エルは頬を赤らめながら、とろんとした目でエドガーを見つめる。

 彼女の顔は、恋をする少女だった。


「いや2人とも両想いすぎるでしょ」


 せっかく2人を現実に引き戻したのに、わずか数秒で2人が甘い世界に入っていったことにサクラは呆れるしかなかった。



 ***



「それじゃあ、最初は私たちとは違う部隊だから一旦お別れだけど、エルは1人でも大丈夫?」


 悪魔が襲来するとされる時間が迫ってくる状況のなか、キョクトウ軍は部隊分けをすることになった。

 そしてエル、サクラ、エドガ―はそれぞれ違う部隊の配属になっていた。


「うん!サクラちゃんの方も頑張ってね!」


 エドガーは先に部隊の方に合流し、残った2人も自分たちの部隊に合流する予定だ。


「任しといて!なんなら私1人で悪魔なんてやっつけてやるわ!・・・それにしても、なんだか感慨深いなあ。夢だったんでしょ?騎士になるのが」

「う、うん。子供のころから、国を守るカッコイイ騎士になるのが私の夢だったから・・・」

「あの時はビックリしたなあ。まさか、おっとりしている照れ屋なエルから騎士になる夢を聞かされた時は!」

「さ、サクラちゃん!」


 でも、否定できない私がいるから言い返せない。うぅ・・・


「じゃあ・・・お互いに頑張ろうね!」

「サクラちゃん・・・・・・うん!!」


 そう言って、お互いに笑顔で背を向けて自分たちが配属する予定の部隊に向かう。

 そう、私は今日からなるんだ。小さい頃から夢だった、国を守るカッコよくて立派な騎士に!!



 ***



「諸君、今日は本当に国の防衛に志願してくれたこと、心より感謝する。私がこの青少年騎士団第3部隊の隊長、カルロ・ゴードンだ」


 ゴードンと名乗る男は、年齢でいえばルナよりも歳はそこまで離れていない20代後半に見える。

 だが、彼の目の奥から発せられる鋭いオーラは、その場にいる誰もが彼を歴戦の騎士だと認識する。

 その風格にエルは気を引き締められると同時、彼のような騎士になりたいと憧れる気持ちになった。





 ゴゴゴゴゴゴゴ!!





 ()()()は突然に始まった。


「うわ!?な、なんだ!?」「これって、もしかして地面が揺れている!?」「もしかして、大地の怒り!?」


(これって、もしかして・・・!)


 激しい揺れの地震が起こった。そして、どうやらその地震が合図だった。


「諸君!我らがキョクトウに悪魔が攻めてきた!これより予定通りに我々第3部隊は目の前ある<ゲート>をくぐり、悪魔の本拠地に攻め入る!!」


 ゴードンが指さした方向には、巨大な空間の歪みがあった。

 その歪みには白い霧のようなモヤが巨大な円となって存在している。


「お、おお!ついに始まるのか!」「や、やだ、私、なんだか怖くなってきた・・・」「俺はやるぜ!家族のために手柄を上げてやる!」「私も!お母さんやお父さんが暮らしてる国を守るために戦う!」


(き、緊張してきた!・・・でも、頑張らなくっちゃ。サクラちゃん、エドガー君、力を貸して!)


 青少年騎士団は悪魔の襲来に様々な反応を見せる。

 興奮する者、恐怖する者、大切な人のために奮起する者、そして自分の夢のために頑張ろうとする者。


「行くぞ!皆の者、己の胸に正義を抱くのだ!そして恐怖を勇気に変えろ!!そうすれば迷いはなくなる!!!」


「「「「はい!!!」」」」


 ゴードンの鼓舞によって、バラバラだった部隊の士気が1つにまとまる。


(正義・・・そうだ、私は悪い悪魔をやっつけて立派な騎士になるんだ!そして、いつか憧れのあの人と一緒に!)


 ゴードンに率いられた部隊は、猪突猛進となってゲートに入っていった。



 ***



「ここは・・・雲の上の空?」


 白い霧のようなモヤで作られたゲートをくぐった先は、空中だった。それもかなり高い位置だ。


「お、おい!下にあるの・・・あれはなんだ?!」「な、なにアレ・・・四角の建物?」「お、おい、下で走ってるアレは何だ!?鉄の塊?が、走ってるぞ!?」


「これが、悪魔が住むといわれていた、あの・・・」


 青少年騎士団第3部隊は下にある常識外れの光景に目を疑う。

 そこには硬い「何か」で造られた長方形の建物が、規則的に建てられていた。

 そこには遊び心とかいったものはなく、ただ無機質に並んでいるだけのように感じた。


(なに?この光景。見たことのないものばかり・・・・・・あれは、走る鉄のヘビ?)


「このまま落ちるぞ!着陸は私の<風スキル>でサポートする!諸君、ここは既に悪魔が住む町だ!どこから攻撃してくるか分からない!各自、注意を怠るな!!」


「「「「は、はい!!」」」」


 部隊はそのまま地面に急降下していく。そして着陸する直前、


「メガ・ウインド!!」


 ゴードンが<スキル>を唱えると全員の足元に風ができ、そのままフワリと綺麗に着地した。

 そして、彼らが目にしたのは、


「え、人?」「悪魔じゃ、ない?」「あ、でも待って。みんな、()()()()よ!」「ほ、本当だ!な、なんておぞましい・・・」「で、でも、中には金髪の悪魔もいるぞ?」「み、みたことのない服装・・・」


「これって・・・本当に、悪魔、なの?」


 そこにはたくさんの悪魔たちがいた。

 悪魔の髪は黒色かもしくは茶色だった。金色や緑も中にはいるが、ほとんどの者が黒色だ。

 そして、悪魔は自分たちを取り囲むように陣取っている。

 青少年たちは、自分たちの常識を超えるような光景に、再度パニック状態になる。

 対して、悪魔の反応は・・・・・・


「おお!見たか!?人が空から降ってきたぞ!?」「すごーい!なにアレ?!コスプレ?」「地震が収まったと思ったら、今度は変人集団?やめてくれよ、会社に行かないといけないのに」


 落ち着いていた。


「総員、構え!」


 ゴードンの叫びで、部隊全員が武器を構える。


「うおお!すっげえ!刀とか剣とか槍もあるぞ!」「本物なんじゃね!?」「もしかして、映画の撮影?」「ねえ、なんかヤバイ感じがするんだけど・・・」


 対して悪魔の反応は様々だ。

 だが自分たちと違い、どこか危機感が欠如しているようにも見えた。


「写真とか撮ろうぜ」


(なに、アレ。悪魔が持っているの・・・小さな鉄の板?)


 自分たちが身構えていると、悪魔たちはみんな手のひらサイズの長方形の形をした、鉄の板のようなものを自分たちに向ける。


「な、なんだ?」「もしかして、悪魔の武器か?」


「諸君!落ち着くんだ!!」


 ”パシャパシャ!” ”カシャ!” ”ピロン♪”


「この音って、もしかして鉄の板から?」


「な、なんだ!?」「もしかして、悪魔の攻撃!?」


 謎の音に部隊はパニックになる。

 もはや成長途中にある若い世代の青少年たちのストレスは、限界に達していた。


「く!これは攻撃なのか!?一体、どうすれば・・・」


 しかし、それはゴードンも同じだった。

 これまで数々の経験を積んできた彼であったが、未知の生物、未知の光景、なにもかもが自分の常識を簡単に覆すものばかりで、どう判断していいのか分からなかった。


「オイ!邪魔だ!どけ!!」


 そんな一触即発の状態の時だった。

 自分たちを取り囲んでいる悪魔の集団の中から、1人の男(?)の姿をした悪魔が向かってくる。


「ね、ねえ!?悪魔が来るよ!?」「あ、ああ・・・」


「止まれ!これ以上こちらに来るようなら!!」


 ゴードンが制止を試みるも、悪魔は気にしてない。むしろ興奮して状態で走ってくる。


「なあ、俺を異世界に連れてってくれよ!!あるんだろ!?異世界でチートできる世界が、」


「う、うああああぁアアアア!!」

「!? よせ!」


 部隊の中で、1人の青年の我慢が切れた。

 彼はパニック状態のまま悪魔に近づく。そして、持っていた刀を悪魔に向かって振り下ろすと、


「なあ!俺を異世界てん、せ、」


 ”ズバっ”


 悪魔は真っ二つになって絶命した。


「え」「うそ」「お・・・うおぉおおおお!すげえええ!」


「や、やったぞ!やったぞーーーーー!!」


 歓喜に震える青少年騎士団。


「え・・・」「は?」「に、・・・逃げろーーーー!!」「うわあああああああ!?」「キャアアア!!」


 怯え、逃げ惑う悪魔たち。


「・・・・・・ちがう」


 そしてルナは、真っ二つにされ切り口から出てくる真っ赤な液体・・・・・・真っ赤な血を見て、


「よくぞ悪魔を倒してくれた!見ろ!奴らは仲間を見捨てて逃げるような卑劣な悪魔だ!」

「お、おお!」「も、もしかして、私たちなら!」


「・・・違うよ」


「正義は我らにあり!」

「「「「正義は我らにあり!」」」」


「違う・・・」


「諸君!私に続け!()()にあった下劣な・・・()()()()()()どもを根絶やしにするのだ!!」

「「「「おぉおおおおおおおお!!!」」」」


「やめてえぇえええええ!!!」


 今ここに、二ホンの悪魔の侵略を阻止するキョクトウの人間たちの戦いが始まった。



 ♢ ♢ ♢



 ~さかのぼること数十分前~


 2人の高校生が人通りの多い渋谷スクランブル交差点を歩いていた。


「はぁ・・・」

「おいおい、どうした。もしかして将来に対する不安か?」

「そうだよ。受験勉強とか将来のこと考えると不安になるんだよ。よく分かったな」

「だって星水、いつもその悩み言ってんじゃん」


 2人はとても対極的な存在にいた。

 1人は気楽な雰囲気で軽い足取りであるのに対して、もう1方は陰鬱なオーラを身にまとった思い足取り。

 まさにプラス()マイナス()、陽と陰、ポジティブとネガティブな2人であった。


「太陽はいいよな。勉強ができるからランクの高い大学行けて。将来安泰だよ」

「それは普段から勉強してないオマエの責任だろ~?ほれほれ」

「ぐっ、ぐうの音もでねぇ正論は人を傷つけるだけなんだぞ!」

「正論なのかよ」


 そんな正反対な2人だが、仲はいいので人間はつくづく意味不明だな、とネガティブの方の男、星水零一は思った。

 それはそれとして、いつもニコニコしている朝神太陽が俺と仲良くしていていいのか?とも思った。


「はぁ・・・ほんっと、こんな悩みをするくらいなら、今すぐ世界が  」


 何かを言い終わる前だった。





 ゴゴゴゴゴゴゴ!!





 地震が発生した。



 ♢ ♢ ♢



「っととと、すごい揺れだったな。星水、大丈夫だったか?」

「あ、ああ・・・」


 その地震は、とても大きいもので立っているのもやっとなほどだった。


「お、おい!なんだアレ!?」


 地震が収まった直後、誰かが空に向かって指を差していた。

 空を見上げてみると、


「ひ、人だ・・・」


 人がゆっくりと空からやってきた。

 そう、文字通りなのだ。別に飛行機に乗ってきたとか、そういうわけではない。

 生身の人が空からやってきたのだ。それもたくさん。

 その現実離れした光景に、星水は<天使>が天の楽園からやってきたみたいに見えた。


「な、なあ」

「あ、ああ。これって、あれだ・・・昔に流行った<なろう小説>展開だな」

「いや、そうじゃなくてさ・・・」

「?」

「空が・・・違うように見えるんだ」

「? いや、空は・・・普通だろ」



 ♢ ♢ ♢



 そして空からやってきた奇妙な集団は、そのまま地面にゆっくりと着地すると、その場に留まる様子をみせる。


「な、なあ、星水。これって・・・」

「とりあえず・・・・・・様子を見よう」


 2人は集団を囲む人混みから少し離れた場所で観察することにした。

 最初はみんな、「コスプレ」だの「映画撮影」だのと騒いでいた。

 だが、「異世界転生」だと言った者が現れた次の瞬間、


「キャアアア!」「う、うわぁあああああ!?」


「「!?」」


 人の叫び声が聞こえると同時、集団を囲んでいた人ごみが崩壊する。

 そして人ごみが崩れていくと、そこには・・・





 真っ赤な血を流しながら真っ二つに斬られている死体があった。


「・・・・・・ぜ、ゼロイチ、」


 死体を見た朝神は顔が真っ青になる。「逃げなきゃ」頭では分かってる。分かってるはずなのに、非日常な光景に目が離せない。

 そして、星水は・・・


「・・・逃げるぞ、太陽」

「え?」


 冷静だった。


「あ、でも逃げる時はあまり大声を出さない方がいい。目立つ逃げ方はリスクがある」

「あ、あぁ・・・!」


 だが、逆に冷静な友達の姿を見たことで朝神も我を取り戻すことができた。



 ♢ ♢ ♢



 2人は走り出す。


「それにしても、こっちが異世界転生するんじゃなくて向こうが異世界転生するパターンか。そんな展開、今まであったか?いや、あったな・・・ふっ、ふふふふふふ」

「ほ、星水?」

「ふふふふ、ハハハハハ!た、フフ、たの・・・()()()!!」

「え」


 太陽は自分の耳を疑った。

 だって、人が死んだんだ。なんの前触れもなくアッサリと。普通は怖くなるはずだ・・・はずなのに。

 隣にいる親友から今まで聞いたことのないような声と、そして、





「アハハハハハハハ!!!」





 悪魔のような笑顔を浮かべている。



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