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友達

羽田巻と友達?になってから俺はずっと羽田巻といた。


「環君!ご飯食べに行こ!」


「あぁ、行くか」


綾乃との一件があった後、俺はクラスで腫れ物扱いされるようになった。誰も近づかないし話しかけない。みんなが俺を避けていた。でも羽田巻だけは違った。そんなこと気にしないと言って俺と対等に話してくれるのだ。俺はそれがとても嬉しかった。


「今日はいい天気だね」


「そうだな」


屋上に出た俺たちは地面に座ってご飯を食べ始めた。


「ねぇ…環君」


「ん?どうした?」


俺はコンビニ弁当を口に含みながら羽田巻に目を向けた。


「いっつもコンビニ弁当だよね…」


「あぁ…それは」


「あ、い、言いたくないなら言わなくていいんだよ?!」


慌ててそう言った羽田巻を見て自然と笑みがこぼれる。


「いや、大丈夫だ」


本当にこいつは人に気が使えるやつだ。常に俺のことを考えてくれている。そんなの今までにはなかったことだな…


「まきさ…母さんが仕事で忙しいからだよ」


俺はそう答えた。そう答えるしか無かったと言った方が適切か?


「環君のお母さん、大変なんだね」


「そう、だな」


「…」


「羽田巻?どうかしたのか?」


羽田巻が急に黙ってしまった。自分の弁当を見つめて何かを考えているようだった。


「環君、もうずっとお昼はコンビニ弁当なの?」


「あぁ、そうだな。ずっとコンビニだな」


手作りの弁当なんてもうずっと食べていなかった。


「…じゃ、じゃあさ」


「うん?」


羽田巻は自分の弁当箱から卵焼きを箸で掴んで俺の顔の前に持ってきた。


「ぼ、僕の作った卵焼きで良かったらた、食べてもいいよ?」


そう言った羽田巻の顔は真っ赤になっていた。


「え、い、いいのか?」


「う、うん」


なんでこんなに優しくしてくれるんだ。その優しさが本当に嬉しい。だからこそ怖い。羽田巻が俺の事を嫌いになってしまわないかと心配になる。でも、今だけはこの優しさに浸っていたい。



そう思い俺は羽田巻から差し出された卵焼きを口に含んだ。


「ど、どうかな…?」


口に入ってきた卵焼きはとても美味しかった。でも、それ以上に俺の心を満たしてくれる何かがあった。


「美味い…あぁ、めっちゃ美味い」


「え、え、そんなに不味かったかな!?」


何をそんなに慌ててるんだ?そう思っていたのだが何故羽田巻がそんな状態になっているのか直ぐにわかった。



地面に何かシミが出来ていた。そのシミは上から降ってきた水によって出来ていた。そしてその水は俺の目から出ていた。


「あれ?お、おかしいな。最近勝手に涙が出てくる…」


「環君…」


「美味いよ、本当に美味い」


あぁ、羽田巻ともう少し早く出会えていたら何かが変わったのかもしれないな。そう考えてしまうことはいけないことなのだろうか?


「…わかった!」


「え、な、なにが?」


羽田巻が急に立ち上がって何かを決意したような顔になった。


「僕、明日から環君の分の弁当も作ってくる!」


「い、いや、さすがにそれは悪い。大丈夫だ」


「だめ!そんなコンビニ弁当じゃ体に悪いよ!」


羽田巻と過ごしているうちに気づいたのだがこいつはかなり押しが強い。


「で、でもな」


「でもじゃない!決まったことなんだよ!」


そして頑固だ。こうなった羽田巻にはもう何を言っても仕方ない。


「…材料費は俺が出すからな」


「!!!任せといて!美味しい弁当を作ってくるからね!」


羽田巻…お前良い奴すぎんだろ…



俺は本当にこいつに救われていた。だからこそこいつが離れたらもう俺は立ち直れないだろう。それほど大切な友達に羽田巻はなっていた。



こういうので良かったんだ。俺はこういうの何の変哲もない日常を送りたかったんだ。あぁ、本当に楽しい。

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