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今日は少し早くに家を出た。なぜなら学校で委員会の仕事があるからだ。もちろん入りたくて入ったわけじゃない。何かの仕事にはつかなくてはいけないからしょうがなく美化委員に入ったというわけだ。



美化委員の仕事は花壇の水やりや大掃除後のワックスがけ、トイレの石鹸が無くなったら補充すると言った仕事だ。かなり楽だと思ってこの委員会にしたがそんなことは無かった。朝早くから学校に行かなければならないと分かっていたら美化委員にはなっていなかっただろう。



まぁそんなこと言っていても仕方ない。早く行って花壇に水をやろう。



花壇の横に置いてあったジョウロを手に取って蛇口を捻る。冷たい水が出てきて俺の手を濡らす。その水をジョウロに入れながらぼっーとしていると声が聞こえてきた。


「えー?まじで?」


「まじまじ!あいつやばくね?」


「それヤバすぎでしょ」


いかにもギャルと言った感じの声だ。その声の元に目を向けると三人のギャルがこっちに来ながら話していた。こっちに来るというのは違うな。きっと校舎に向かっているのだろう。



俺は三人の顔をチラッと見る。そして見覚えのある顔を見つけた。


「久井さん…」


そこにいた久井さんは本当に誰か分からないほどに変わっていた。メガネなんてしてないし口調も全然違う。制服は着崩して肌の露出が多い。バイトの時の久井さんを見ていたら想像も出来ない変化だ。



そんなことを考えていると久井さんと目が合ってしまった。

…久井さんだよな?知らない人と目が合うなんて気まずいぞ…



そう思っていたが相手も俺を見て目を見開いていたから間違いじゃないだろう。学校で話す必要がいため俺は花壇の水やりに戻る。


「さ、先行ってて」


「ん?愛花どしたん」


「ちょ、ちょっとね」


「ふーん?ま、いいや。先行っとくね」


やっぱり久井さんだった。あそこまで変わるなんて凄いな。

そう思いつつ水やりを続けていると横から影が伸びてきた。


「あ、あの…お、おはよう環君…」


「おはようございます。久井さん」


「…」


「…」


会話が続かない…なんでこの人話しかけてきたんだ。学校なんてお互い干渉しなくていいだろう。そう思っていたのだが久井さんは話しかけてきた。


「え、っと…びっくりしたよね。私がこんなに変わってるなんて」


「えぇ、確かにびっくりしました」


「だ、だよね…やっぱり気持ち悪いよね」


そう言った久井さんの目は灰のように色がなかった。


「そんなことないですよ」


「あはは…ありがとう」


「本当に凄いと思いました」


「ありがとう」


「愛されるためにそんな努力できることが凄いと思いました」


「え?」


久井さんは少し呆けた顔になった。


「俺はそこまで努力できないと思います。でも久井さんはそこまで努力できる。容姿を変えることはできるかもしれませんが口調なんかを変えるには並大抵の努力じゃ出来ないはずです。それをしている久井は本当に凄いです」


「あ、ありがとう…」


久井さんは小さくそう言って俯いてしまった。しまった。なんか癪に障ること言ったか?


「わ、私もう行くね」


「はい」


そう言って久井さんは小走りで校舎の中に入っていった。



あれ?結局なんで久井さんは俺に話しかけてきたんだ?まぁいいか。



「愛斗」


いきなり後ろから声をかけられて心臓を跳ねさせる。


「な、なんだ綾乃か」


そこには綾乃が立っていた。


「どうしたんだ?」


「さっきの人、誰?」


「…なんでお前にそんなこと教えなきゃいけないんだ?」


相手を疑うようにそう問いかける。


「いいでしょ?教えてよ」


「……友達だ」


俺はなんと言おうかと少し迷ったが友達と言った。


「へぇ、そうなんだ」


「なんだよ」


「まぁいいよ。私は優しいから許してあげる」


許す?何を?


「何を許すんだ?」


「そんなのあの女の人と喋ってたことに決まってるでしょ?」


何言ってんだ?


「どうしてそんなことをお前に許してもらわなきゃいけないんだよ」


誰と喋ろうが俺の勝手だろ。


「だって私は愛斗の彼女だから」


「…はぁ?」


思わずそんな声が出た。誰が誰の彼女だって?そんなこと有り得るはずがない。


「お前ほんとに何言ってんだ?」


「私は愛斗の彼女だから愛斗が浮気しないように見張っとかないとね」


「…まず俺とお前は付き合ってない」


「???」


目の前の女は本気で俺が何を言っているのか理解出来ないような顔をしていた。その表情に恐怖すら抱いた。


「あ、こんな時間。私もう行くね」


そう言って綾乃は俺に背を向けて歩き出した。

額に嫌な汗がつたる。


「あいつ…なんなんだ?」


本能でヤバいと分かってしまう。あまり関わりを持たない方がいいかもな…



俺はそう考えながら校舎に向かった。

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