似たもの同士
藤堂高虎の心配は杞憂に終わり、無事実家に帰還。
良かったですね。
藤堂高虎「『もうこの世に居ないと思っていた。』と父に言われたよ。」
何か叱責されましたか?
藤堂高虎「しみじみ『血は逆らえないな……。』と。」
お父様も昔、やんちゃをされていた?
藤堂高虎「近江を離れた時期があったんだと。」
商売で?
藤堂高虎「詳しくは聞いていないが、その可能性は高いな……。」
どちらへ?
藤堂高虎「最終的には甲斐に落ち着いたそうな。」
武田家でありますか?
藤堂高虎「そう。今の晴信が追放した信虎の時代に取り立てられたとか。俺の父。名前を虎高と言うのだけど、その虎の字は信虎の虎から頂戴したそうな。」
将来を嘱望されていたのですね。
藤堂高虎「話半分で聞いた方が良いかも知れないがな。」
では何故甲斐を離れる事になったのですか?
藤堂高虎「信虎は新参者を積極的に採用していたそうな。実際、父以外にも多くの者が取り立てられ、今の晴信を支えている者。息子の代になっても引き続きと言う者も多い。ただ余りにも採用人数が多かったのと、代替わりしても引き続き支えていると言う事はそれだけな優秀な者が多かったと言う事。実績を積み上げる事により信虎から更に重用される。収入が増えていくのを面白く思わない人物が居た。それも代々甲斐で活動している方々が……。」
中途採用の辛い所ですね。
藤堂高虎「父はその後。越後の長尾為景を経て近江に戻ったのだが、その越後時代に発生したのが信虎の追放であった。その最も大きな要因は信濃に遠征し勝利を決定づける活躍をしたにも関わず、たいして戦ってもいない諏訪と村上に権益を持ってかれてしまった事に対する家臣の不満なんだけれども。その跡を継いだ晴信があまり新参者を採用していない。居ないわけでは無いけれどもほとんど居ない。信虎時代よりも格段に勢力が拡がったにも関わらず。」
晴信が中途採用を躊躇う理由がある?
藤堂高虎「実際、武田家中に居た。それも新参者として採用された父の偏った意見ではあるけどな。」
この後はどうされるのですか?
藤堂高虎「とりあえず家がある事は大きい。住所不定では応募する事も難しいので。ただなぁ……。」
どうされましたか?
藤堂高虎「俺の実績……。今、ここを治めている織田方の人物を倒した事ばかりなんだよな……。」