無罪放免
藤堂高虎。無罪放免。
おめでとうございます。
藤堂高虎「ありがとうございます。」
見事。疑いが晴れたのですね。
藤堂高虎「いや。そうでは無い。」
では何故無罪となったのですか?
藤堂高虎「追われる心配が無くなったんだよ。」
訴えが取り下げられた。と言う事ですか?
藤堂高虎「いや、違う。」
どう言う事でありますか?
藤堂高虎「私を取り締まろうとした役所が無くなったんだよ。」
よくわかりません。
藤堂高虎「これはあまり言いたくは無い事なのでありますが……。」
無罪を勝ち取ったのでありますよ。照れる必要はありません。
藤堂高虎「いくさでも無い場所で人を殺めた事実に変わりは無い。」
自白した事により、恩赦が与えられた?
藤堂高虎「いや。そうでは無い。」
勿体ぶらずに仰って下さい。
藤堂高虎「……元の勤め先。浅井家が滅びたんだよ。滅ぼしたのは織田信長。浅井を継承する立場には無い。むしろ元あった浅井の秩序の解体し、織田の仕組みをここ江北に持ち込もうとしている。そのため……浅井家により罪に問われた人物は皆。解放される事になったんだよ。」
それは何より。
藤堂高虎「でも複雑だぞ。」
石もて追われた職場でありますよ?
藤堂高虎「その原因を作ったのは俺だよ。いくさでの活躍に対し、我が主君長政は感状と脇差で以て評価していただいた。その恩に報いるべく更なる奉公を誓っていたにも関わらず、あのような失態を犯したばかりに……。」
『浅井が滅んだ原因は自分が居なかったから。』とでも言いたいのでありますか?
藤堂高虎「いや。私の力で国の衰勢を留める事など出来ぬ。そこまで過大評価してはおらぬ。ただ……。」
ただ?
藤堂高虎「『生き残った者が何言ってるんだ?』と謗られる事を承知で言うが、信長に蹂躙されていく様子を。ただ眺める事しか出来なかったのが心残りである。」
では今後は信長打倒のために活動される?
藤堂高虎「わからん。それよりも今の状況を脱却しない事には何も始まらない。」
何か伝手があるのですか?
藤堂高虎「とりあえず(父の謹慎処分が解けた)実家に連絡を取る事にする。門前払い喰らったら、他を探す事にする。」