☆2
森の入口にたどり着くと、
茂みの中から勢いよく、うさぎが飛び出してきた。
「うわっ!」
驚いたクロスケはドスン。
地面にしりもちをついた。
「ごめん、ごめん。だいじょうぶかい?」
うさぎはあやまると手をさしのべてきた。
その手につかまり立ち上がると、
クロスケはうさぎにきいた。
「そんなにあわててどうしたの?」
「うん、ボクね、星のカケラを見つけたんだけど、
どこかでなくしちゃったんだよ」
星のカケラ!
「すごいや、ぼくも探しにきたんだよ」
「えっ、きみもかい? 何色のカケラを探しているの?」
うさぎにきかれてクロスケは、
「えっと、黄色とね、オレンジ色」
うっかりそう答えてしまった。
本当は虹色のカケラを探しに来たのに。
さっきの蝶との約束をちゃんとおぼえていたからだ。
「そうなんだ……あ~あ〜……」
そこでうさぎは自分の耳と同じくらい
なが〜いため息をつくと、
「ボクが探しているのは赤と緑のカケラなんだ」
と話し始めた。
「さっき森で、見つけたんだよ、赤いカケラと緑のカケラ。
ほら、ちょうどボクの瞳とおんなじ色だろ?」
そう言うとうさぎは自分の目の辺りを指差した。
確かに。
きれいな赤い瞳をしている。
だけど……。
「じゃあ、緑は? なんの色なの?」
クロスケが気になってたずねると、
「友だちのキツネくんの色なんだ」
うさぎの表情は、だんだんしょんぼりと
悲しげになっていった。
「キツネくんはね、とっても優しい緑の瞳をしているんだ。
それでね、今日はキツネくんの誕生日なんだよ。
だからカケラをふたつ、見つけたときに、赤はボクので、
緑はキツネくんへのプレゼントにしようって……
あ〜あ〜、せっかくそう思ったのになあ……」
うさぎのまっかな瞳からは、
今にも涙がこぼれ落ちそうだった。
気の毒に思ったクロスケは、
「だいじょうぶ、きっと見つかるよ。
ぼくもいっしょに探してあげる」
うさぎを元気づけようと、笑顔で言った。
「えっ、ほんとうに?」
「うん。だってまだ、なくしてからそんなに
時間がたってないんだよね?」
うさぎはコクンとうなずいた。
「じゃあ、ぼくもこれから森に行くから、
もし見つけたら、届けてあげるよ」
うさぎの顔にようやく笑みが戻ってきた。
「ありがとう! 助かるよ」
ぴょんぴょんうれしそうに
飛びはねるうさぎに見送られながら、
クロスケは森の中へと分け入った。