ナルコレプシー
「ねぇ、ここって映画館?」
───おそらくな。
「さびれすぎてわかりにくいな」
───ウチとは時代から違うんだろう。10年20年なんてもんじゃないぞ。
「まだやってるみたい」
「あれ、」
¥ 一枚…千円
「ありがとう あの、ここってこの映画しかやってないの?」
¥ (コクリ)
「そう、わかった」
¥ 階段のぼって…3番目のホール
「どうも」
「結構広いなぁ」
───他に客がいないから余計広く感じるのかもな。
「ホントだ、セルフ貸切状態」
─── 全部空席なのにわざわざそんな隅に座るんだな。
「うん」
「この手のジャンルの映画って正直あんまり興味ないし」
「それに、ココの映画の出来なんて、初めから期待してないから」
───見栄張るなよ 小心者。
「ちがうし」
「ところで"反応"は?」
───近いな。
───だがまだ弱い 映画を観る時間くらいはあるだろう。
「そう、」
<ガ───ッ>
「あ、始まるみたい」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「めっちゃよかった」
───お前観る前なんて言ったか覚えてるか?
「?」
───なんでそんな純朴な目ができるのか本気で理解できないんだが。
「まぁまぁ、面白かったんだからいいじゃない」
「そう怒ってもいいことないよ?」
─── 今接続切ってやってもいいんだぞ。
「ごめんなさい」
「すみませんでした」
「許してください」
───よろしい。
「さて、気晴らしも済んだし、さっさと片付けちゃいますか」
─── ああ。
「(スゥ)」
「反応係数」
───8
「揺れ幅」
───0〜0弱
「深行強度」
───2.707kgf/s2
「上々」
「じゃ、サポートよろしく」
───承知した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「"隠滅"完了」
「いや、つかれたつかれた」
───思ったより骨が折れたな。
「うん、"居た"のが室内で良かったよ」
「じゃなきゃ詰んでたかも」
───お前の賦能は広場じゃ使い道ないからな。
¥ あの…
「あっ」
───おい ちゃんと"隠して"おけよ。
「いいの」
¥ 私は…私は…!
「うん、全部見たよ」
「すごく面白かった」
「自信持って」
¥ そんな…こと…私なんて…
「じゃあファン第一号の席をもらってもいい?」
¥ …!(コクリ)
「よかった、それじゃ」
「今度こそおやすみ」
<シュワ…>
─── それをやっても記憶には残らないんだぞ。
「そうだね」
「だからこれはただの自己満足」
「不満?」
───いや だから組んでる。
「(ニッ)」
───さ 抜けるぞ。もう自壊を始めてる。
「うん」
───「開示、」。