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79 暴れたくなるお年頃

本日二回目の更新です!


 ランコがギルドに正式に加入して、ギルドホームへ案内した。

 真っ先に連れて行ったのが、アズの工房だ。


 聞けばランコも生産系のクラスであり、しかも製薬と呼ばれる、薬の作成をメインとしたクラス。

 工房の半分はその製薬用のスペースであり、とても丁度良かったのだ。


 工房を見たランコは大興奮。

 とても幸せそうに隅々まで眺めた後、早速使ってみたいということで、ランコとアズを残して俺は立ち去った。

 まだ時間は三時前だったが、一度ログアウトして日課をこなすには良い時間だろう。





「なんとか私も戦う方法はないでしょうか」


「おう、どうした姫さん。姫さんもがっつり戦いてぇのか?」


「前衛は僕達が受け持つので、姫様は見ててもらってるだけで百人力ですよ? 普段は支援までもらってるんですから、それこそ千、いえ、万人力でしょうか!」


「それもそうだな! 姫さんがいりゃあ元気万倍だ!」


 時刻は五時。

 メンバーの活動時間的には半端な時間で、俺がログインした時には鬼コンビしかいなかった。

 だからこうやって一緒に自主練に混ぜてもらっていたのだが、つい気持ちが洩れてしまった。


 ダイナとダリがマス夫と名付けた奇妙な植物と共に筋トレを続けながら、豪快に笑っている。

 あの花、前よりもかなり大きくなってきたな。

 もう少しであの島で見たものと同じくらいになる気がする。


「役割とかあるので、それは勿論分かっているんですけど、私もモンスターをバッタバッタとなぎ倒してみたい気分になったんです」


「なるほどな! そんじゃあ、ダイナみてぇに筋力に振ってみりゃいいんじゃねぇか?」


「そうですね。そうすれば、姫様の攻撃で十分なダメージを与えられるようになるかもしれませんよ」


「そうですねー……」


 今の俺のステータスは、全て≪魅力≫に振っている。

 いわゆる極振りってやつだ。

 そこまで≪魅力≫に振る意味があるかは正直分からない。

 現実世界で魅力的になれなかった俺の悲しい意地みたいなものだ。


 かといってここまで来て他のステータスに振るのも、ちょっと勿体無い気がする。

 ゲーム的には全くおかしくないというか、いくつかステータスに振り分けるのが普通なんだけど。

 このゲームでも、極振りってやつはハズレとか産業廃棄物なんて馬鹿にされてるらしいし。


 でも選択肢としてはありなんだよな。

 うーん、悩む。


 ちょっと迷っていると、脳内に突然リリィが現れた。

 その顔は怒りの形相である。


『お姉様に筋力なんて必要ありません! お姉様の全ては魅力で構成されてるんです!』


 俺は疲れてるんだろうか。

 イメージのリリィを頭の片隅に追いやってしまう。

 しかし、なんか正論な気がする。

 やっぱり筋力に振るのは止めておこう。俺の分までダイナに振って貰えばいいんだ。


「少し勿体無いというか、ここまで来たら全部魅力に振りたいんです」


「そうですか。高い攻撃力を持つ武器を装備するとかどうでしょう」


「なるほど。それはありですね」


 セット装備ではなくなるが、支援せずに殴るだけなら特に問題はない。

 メニューからストレージを開いて、何か良い装備が無いか探してみる。

 

 しかし、≪筋力≫が低くてあまりアイテムを持ち運べない俺は、使わない装備品なんて持っている訳が無かった。

 せいぜい着替えのワンピースくらいだ。


「オレの方も盾くらいしかねぇな」


「ありがとうございます。ダリさんは何か持ってますか?」


「そうですね……この間試しに買ったメイスならありますよ。攻撃力はそこそこだと思います」


「メイスは……装備出来そうですね。貸してもらっていいですか?」


「どうぞどうぞ」


 このゲームでは武器の種別も豊富だが、≪クラス≫によって装備出来るものが決まっていたりする。

 俺のクラス≪プリンセス≫は割と制限が緩いようでメイスも装備出来る種別の覧に載っていた。


 ダイナからメイスを受け取り、装備してみる。

 金属製の棒の先端に分厚い鉄の板を縦に何枚もくっつけたような鈍器が、俺の右手の中に現れた。


「これは、かなり重たいですね」


「そうですか。攻撃出来そうですか?」


「試してみます」


 ズッシリとした存在感を持つメイスをなんとか両手で持って、裏庭の隅に設置された金属製のカカシの前に立つ。

 これは特訓用に用意された的、その名も≪ドMくん一号≫である。

 名前はリリィがつけた。


「えいっ!」


 ここで、ふんぬぅ! などという掛け声は出さない。

 心はおっさんでも今の俺は美少女で姫なのだから、そんな愚行は犯さないのだ。


 ゴッ。


 渾身の力で振り下ろしたメイスは、鈍い音を立ててその先端を打ちつけた。

 先端が数センチ程めり込んでいる。地面に。


「どうですか姫様」


「これは、当たる気がしませんね」


 俺は肩を狙ったのに、メイスは大きく外れた地面を叩いた。

 ただでさえ≪器用≫が低いのに、≪筋力≫が足りないペナルティが大きすぎる。

 必死に振り回しても十回に一回当たるかも怪しいぞこれは。


 それでも一応、十回振り回してみた。

 結果は、一度も当たらなかった。

 これは酷い。


「そのメイスでも重たすぎるみたいですね。攻撃力はあるので当たればそれなりだとは思うんですが」


「当たらなければ意味ないですからね」


「おっ、いいこと思いついたぜ姫さん!」


「なんですか?」


「大剣って、すげぇ攻撃力高ぇんだよな?」


「そうですね。以前姫様からもらったこの大剣なんかは、とてつもない性能だと思います。命中補正もついていますし。ですが……」


 明るいダリとは対照的に、ダイナは言い淀んでしまう。

 続きは俺が引き継ぐことにした。


「多分その大剣、このメイスよりも重たいですよ。それに、私のクラスだと大剣は装備出来ないようです」


 そう、装備出来ないのだ。

 結構何でも装備してしまいそうに思える≪プリンセス≫だが、大剣は対象外だったようだ。


「ふっふっふ、オレが思いついたのは、もっとすげぇことなんだぜ」


 ダリが意味深に笑う。

 なんかちょっと嫌な予感がしてきた。



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