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8 ハズレクラスとゴミスキル、おまけに不遇なステータス


 声がした方へ視線を向けると、二人のプレイヤーが立っていた。

 片方はソフトモヒカンで軽装の男。

 もう一人もソフトモヒカンで軽装の男。


 色合いや雰囲気は違うけど、同じような装備をしている。

 流石に武器は違うっぽいけど、顔はよく似てる。

 双子か?


「誰ですかこの人達?」


「もずく兄弟……!?」


 レンが驚いたように二人を見ている。

 二人の名前は、≪モズ≫と≪ズク≫。

 二人合わせてもずく、ってか。


「いや、本当に誰ですか?」


「有名なプレイヤーだよ。CPOのβテストでかなりがっつりとやりこんでたっていう」


「そう、オレ達こそがCPOの最先端をひた走る最強プレイヤー兄弟!」


「モズと!」


「ズクだ!」


 その最強プレイヤー兄弟とやらが何故絡んで来るのか。

 俺達はまったりプレイのエンジョイ勢だぞ。


「そっちのエルフ、お前≪空間爆縮≫なんて取ったのか?」


「そうだけど、何か?」


「あーあ、可哀そうに。あんなゴミスキル取っちまうなんて。なぁ兄者」


「そうだな弟者。あれはよっぽど条件を揃えてなんとか使えなくもないかもしれない程度。貴重な初期スキルの枠をそんなものに割くとは、哀れ以外の何ものでもない」


 二人揃って大きな高笑いを上げる。

 なんだこいつら、本当に煽りに来ただけなのか?


 悔しそうに拳を握るレンの前に出る。


「用が無いならどこかへ行ってもらえませんか?」


「おおっと、オレらが用があるのはカオルちゃんだけだから。なぁ兄者!」


「そうだぞ弟者! カオルちゃん、こんな産廃初心者放っておいて、オレ達と狩りしない?」


「お断りします」


 考えるまでもない。

 何故楽しむ為のゲームで、こんな不快な奴らと遊ばないといけないのか。


 っていうか、こいつらの目当て俺だった!

 俺が可愛過ぎるのがいけないんだな畜生!


 カオルちゃんなんて可愛い呼び方やめてくれ!

 現実でも散々からかわれていじめられたんだから!


「いやいやいや、さっきの見たでしょカオルちゃん。あのスキルはくっそメンドイ連携をこなしてやっと当てられるようなスキルだぜ? なぁ兄者!」


「全くだな弟者! 詠唱の間、前衛はモブが動かないように足止めしないといけないし、巻き込まれないようにギリギリのタイミングで逃げなきゃいけないんだ」


「前者をするのに避けタンクだとしんどいし、後者は受けタンクだとタイミングがシビア過ぎる。なぁ兄者」


「その通りだ弟者。それだけ苦労して得られるメリットは、一体を倒せるだけ。この辺なら他のスキルを使うか、素直に殴った方が早いよマジで」


「……詳しいですね」


「そりゃオレ達だって色々試しまくったからよ。なぁ兄者!」


「そうだな弟者! だからそいつのクラス≪破壊者(クラッシャー)≫も散々実体験したんだぜ? そうやって辿り着いた結論が、≪破壊者≫は不遇クラス。≪空間爆縮≫はゴミスキル、ってわけよ」


 そうか、こいつらβテスターって言ってたな。

 βテスターというのは、製品化前にお試しプレイをした人達のことである。


「あとあれだな、≪魅力≫は振る意味無さ過ぎるゴミステータス。なぁ兄者」


「その通りだ弟者。どれだけ振ってもNPCがおまけしてくれたり、しょっぱいイベントが発生する程度。≪魅力≫依存のスキルはどれも使い勝手が最悪だ」

 

 何故かついでのように俺まで馬鹿にされた気がする。

 こいつらに俺のステータスは見えない筈だから、単純に流れで口にしただけなんだろうけど。

 そんなに役に立たないのか、≪魅力≫って!


 流石に一足先にプレイしてるだけあって、その知識は馬鹿にならない。

 しかもβテスターには少し特典もついてたんだったか。

 言葉通り、このゲームでは最強クラスのプレイヤーなのかもしれない。


 だけど、大きなお世話だ。

 言葉を続けようとしたところで、俺の前に立つ影があった。

 レンだ。


「忠告ありがとう。だけど僕達は僕達で、使い道を探したいんだ。放っておいてくれ」


「はっ、自分で模索したい気持ち、分かるぜ。なぁ兄者!」


「全くだな弟者! ならばその心意気、汲まないわけにはいかねぇな!」

 

 割と素直?

 βテスターでも物凄い活躍したらしいし、自分達で色々試さないと納得出来ない人種なのかもしれない。

 口は悪いしなんかノリが軽いけど。


「しかし、そのままって訳にもいかねぇよな、兄者」


「よく分かってるな弟者。レン、そしてカオルちゃん、二人に決闘を申し込む!」


「決闘!?」


「分かった、受けて立つよ」


「ええ!?」


 こうして、何故か俺達は決闘することになってしまった。

 とはいえ今すぐではない。


 次の次の日曜日、リリース十日目を記念して初のイベントがある。

 それは、プレイヤー同士の大決闘大会。

 そのタッグマッチの部で決着をつけようということらしい。


 向こうが勝てば、俺はあいつらとパーティーを組む。

 こっちが勝てば、ゴミスキルと言ったことを謝る。しかも、レアなアイテムを慰謝料代わりにくれるらしい。


 俺が驚いてる間にレンが話を纏めてしまったから、これで決定してしまった。

 もずく兄弟はご機嫌な様子で去って行った。

 二層へ続くダンジョンのボスを倒しに行くらしい。


「ごめんなさい、勝手に決めてしまって」


「うー……」


 まぁ、決まったものは言っても仕方がない。

 ようは勝てばいいんだ。

 勝て、ば?


 俺は魅力極振りで、変な騎士に絡まれる姫。

 レンは唯一の攻撃スキルが使い勝手最悪の、魔力極振り魔法使い。


 対する向こうは、β時代からやりこみまくった有名プレイヤー。

 装備も動きも、色んな意味でレベルが違う。


 勝てるか?

 いや、勝つんだ。

 あんなのとパーティー組むとか、常に効率狩りを要求されて息が詰まりそうだ。


「こうなったら、なんとかして勝ちましょう。≪空間爆縮(インプロージョン)≫さえ使いこなせればきっと勝てます。そして、ぎゃふんと言わせてやりましょう!」


「ありがとう、カオルちゃん」


 カオル、ちゃん?

 ああ、俺今女の子だった。

 なんとなくだけど、恥ずかしい。


「カオルちゃん、っていうのはちょっと、恥ずかしいといいますか」


「あ、ごめん。それじゃあ……姫ちゃんっていうのはどう?」


「……姫?」


「えっと、カオル、さんのクラスって≪プリンセス≫なんだよね。装備もお姫様みたいだから、そう呼びたいんだけどダメ、かな?」


 姫、姫かぁ。

 本名じゃないしセーフ?

 クラスを仇名(あだな)にするくらい、ゲームで知り合ったばかりなら自然だよな。

 よし、そう呼んでもらうことにしよう。


「それくらいなら大丈夫ですよ」


「じゃあ、姫ちゃんって呼ぶね。僕のことも好きに呼んでいいから」


「分かりました」


 こうして、俺とレンは≪空間爆縮≫の使い道を必死に探すことになった。

 ≪空間爆縮≫に拘る必要はないんだけど、どうせならこのスキルで見返してやりたい。

 俺とレンの思いは一つだと思う。多分。



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― 新着の感想 ―
[一言] 口約束だし自分が口を挟む間もなく、勝手に決められたという事で無視すればいいだけじゃな。
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