6 箱入り娘の検証タイム!
本日二回目の更新です!
総合評価100pt突破しました!ありがとうございます!
翌日。
清々しい朝が来た。
優雅に三度寝した後、眼が覚めたところで起床。
インスタント味噌汁とご飯と漬物で腹も満たした。
早速ゲームの続きをしよう。
VRMMO、面白い。
フィールドはリアルだし、運動不足な俺じゃ絶対に無理な距離を平気で歩ける。
こんなの嵌まらないわけがない。
一つ気になるのは、俺のキャラクターが何故か女の子であること。
せめて男っぽい格好でも出来ればと思ってたが、変な騎士にもらった装備はとても可愛い。
可愛過ぎて、着るのに抵抗がある。
問題といえばそれくらいか?
恐ろしいモンスターに恐ろしい変態騎士のお陰でちょっと疲れたが、ゲーム自体はすごく楽しそう。
だから今日もレッツプレイ。
幸いなことに、仕事なんていう煩わしいものは無い。
つまり、俺を縛るものは何もないということだ!
いやっほー!
まったりプレイで楽しむぞー!
キャラクターが女の子だっていうのも、よく考えたら大した問題じゃないよな。
他のゲームでも、普通に女性主人公を選んでたりするし。
何故って?
そっちの方が可愛いからだよ。当然だな。
同じ自キャラなら、男が戦うよりも女の子の方が見てて楽しいに決まってる。
VRMMOである≪CPO≫だと、自分で自分の姿がよく見られないのが残念だよな。
▽
目を開くと、そこは異世界だった。
いやー、何度見てもこのファンタジー感溢れる世界はワクワクするな!
よくある洋風の街並みだけど、今までテレビやゲームなんかでしか見たことがない。
それが今、俺の視界に広がっている。
VRMMOの魅力って、このリアルな没入感なんだろうな、きっと。
そりゃあ大人気にもなるって話だよ。
今まで触ってこなかったことをちょっと勿体無いと思うレベルだからな。
平日のお昼前だからか、昨日程はプレイヤーが溢れ返っていない。
それでもある程度の人がいるのは、リリース直後だからだろう。
学業や仕事のある人にとって、木曜日に発売されるのは辛いよな。
俺は気ままにプレイが出来るけど。
無職って最高だな!?
さて、これからどうするか。
昨日行ったのは東の森。
マップで確認したらそう書いてあった。
あそこは、明らかにレベル帯が違う。
若干のパワーレベリングをした俺ですら、まだ早い。
俺自身に攻撃能力なんて皆無だしな。
ここは第一層で、スターレの街を中心にフィールドが広がっている。
二層は実装されているようだけど、その先はまだ未実装。
階層に分かれてるとはいえ高レベル帯の狩場も普通にその辺りにあったりして、実力が伴わないのに行けば即死っぽい。
トラストルのところまで行けたのは運が良かっただけだ。
また辿り着けたらレベル上げしてもらえるだろうけど、あまり気乗りはしない。
出現モンスターのビジュアルとトラストルが強すぎて、ちょっと食傷気味なんだと思う。
少し時間を置きたい。
「えーっと、あっちか」
向かうは西の平原。
ヘルプによれば、初心者向けの狩場らしい。
スキルの確認もしたいし、今日はそこで狩りにしよう。
「うわっ、何あれかわいい!」
「美少女発見伝」
「黒髪ロングのストレート!」
「まだ二日目なのにあんな装備着てるなんて、何者だ?」
「ケモミミふとももワンピース!!!」
なんだか見られてる気がして、自然と早足になる。
自意識過剰なんだろうけどやっぱり気になっちゃうな。
西側の門を抜けると、そこには緑香る平原が広がっていた。
草の香りや通り抜ける風まで感じられるとか、凄すぎる。
超鮮明な夢を集団で見てるようなもんだよな。
科学やべー。
なんて、人類の英知に感動してる場合じゃない。
今の俺は一人の冒険者。
日々の糧を得る為に、モンスターを狩ってお金を稼ぐんだ!
「お、いたいた」
最初の獲物を発見!
膝くらいの高さのある草に丁度埋もれるくらいの大きさ。
たまに跳ねるその姿は、丸い兎。
赤いカーソルに目線を集中させると、名前が表示された。
≪白玉兎≫か。なんとなく美味しそうだ。
いざ勝負!
「ていっ! ていっ! ていっ!」
「キュウ……」
レベル差のお陰か、非力な筈の俺でも杖で三回程叩いたら倒せた。
可愛い兎を撲殺する少女って、絵面が酷いけど気にしてはいけない。
白いふわふわな毛玉を落として白玉兎は消えていった。
うん、どうなるかと思ったけど、初めての戦闘も問題なかった。
力も無いしスピードもないけど、杖で殴るくらいは大丈夫。
昨日のあれは戦闘とは呼ばないからな。
ただの寄生、もしくはパワーレベリング。
後ろを付いて歩いてただけとも言う。
さ、次はスキルを使ってみよう。
使い方は……分からない時はヘルプを開く!
あった! 読む!
なるほどな。オッケー任せとけ!
スキルの使い方は、簡単だった。
まずはスキル毎に指定されたポーズを取る。
対象をしっかりと意識する。
最後に、スキル名を声に出す。
これがこのゲームの、スキルの使い方だ。
しっかりと覚えた俺は、両手を突き出すように翳して、自分を対象に意識を集中。
スキル名を口にする。
「≪プリンセス・ボックス≫!」
すると、透明なピンク色の壁が一メートルほど前に出現した。
前だけじゃなく、前後左右、そして上にも。
まさに箱である。
そこまで窮屈でもない。
杖で軽く叩いてみる。
コンコン。
軽快な音だ。
次は思い切り。
コッ! コッ!
びくともしない。
魅力のステータスで耐久値が増えるってことは、それなりに丈夫そうだよな。
今のところ魅力極振りだし。
色々試したくて、スキルを一度解除。
念じるだけで綺麗に消えた。
何も考えずに使ったけど、消えてくれて良かったよ。
もし消えなかったら効果時間が切れるのを待つか、壊れるまでひたすら殴り続ける羽目になるところだった。
自分からは襲ってこない≪白玉兎≫を軽く一発叩いてから、≪プリンセス・ボックス≫の中に引きこもってみた。
≪白玉兎≫が必死に箱に体当たりするが、やはり箱はびくともしない。
流石の頑丈さだ。
しかし、そのままじゃ俺の攻撃も届かなかった。
そりゃそうだ。箱だもの。
結局、スキルを解除して普通に殴り倒した。
箱で囲った意味とは。
このスキル、攻撃を防ぐのには便利そうだけど使い所は限られそうだ。
移動出来ないし、攻撃も出来ない。
籠もって防御に徹するのには使える。
まさに箱入り娘。
だけど、大勢の敵に囲まれたりしたら箱が解除された瞬間に袋叩きだよな。
恐ろしい話である。