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58 ≪最強可愛い姫様のギルド≫の最強可愛い戦い方


 今日のイベントの、二度目の対戦でようやく初ステージとなった。

 俺が前線に立って、攻撃を避けながら歌って踊り、隙があれば色々なスキルを撒く。

 一戦目の反省から、攪乱をサンゾウだけに任せて真っ直ぐ突っ込んだのも良い方向に働いた。


 お陰で、記念すべき初ステージを勝利で飾ることが出来た。

 それでも反省点はいくつも見つかったが、楽しかった。

 メンバーの皆も満足そうにしていたし、相手パーティーも爽やかに笑っていた。

 対戦後に握手して見送るなんて、俺に縁の無かった爽やかな光景ベストファイブくらいには入ってるよ絶対。


 その後も、俺達の戦い(ステージ)は続いた。





 俺に目掛けて前衛職が四人、殺到してくる。

 それならこうだ。


「~~♪」


 ブシュー!!


 ≪チャーミングミスト≫を発動。

 スカートの下から濃いピンク色の霧が放出される。

 この俺の可愛さを具現化した霧は、範囲内のいる敵の速度と攻撃力を低下させる効果を持つ。


 視覚的にも中々の存在感を持つスモークを見て、相手パーティーも驚いている。


「ピンク色のガスが!」


「うわ、なんだこれ、動きが鈍く――毒ガスか!?」


「お姉様の可愛さよ!」


 混乱した相手の発言に、思わずリリィがツッコミを入れた。

 気持ちは分かるけどこんな時まで訂正しなくても。

 しかも、可愛さと言われても相手には意味不明すぎるだろ。あってるけど!



 ▽



 今回は逆に、四人が遠距離というパーティーが相手だ。

 ガチムチな前衛が一人突っ込んできて、残りは弓や杖を構えて攻撃体勢に入ろうとしている。


 ≪最強可愛い姫様のギルド≫側はいつも通りサンゾウが突っ込んでいるが、恐らく一人で抑え込むのは難しそうに思う。

 それならば、こうだ。


「~~♪」


「えっ!?」


「こいつ、どこから!?」


 新しいスキル≪ポジションチェンジ≫を使用して、後衛の目の前まで迫っていたサンゾウとダイナを入れ替えた。

 丁度振りかぶっていたダイナの大剣が、間髪入れずに振るわれた。


「よいしょお!!」


「うわああああ!!」


「ぎゃああああ!!?」


 気合い一閃。

 お祭りみたいな掛け声と共に振るわれた一撃は、隙だらけの後衛を二人まとめて吹き飛ばした。

 残った二人がダイナに攻撃をしかけようとするが、既にサンゾウが距離を詰めている。


 魔法職は詠唱中に1でもダメージを受けると詠唱が中断されてしまう。

 攻撃力は低くても、動きが早く手数も多いサンゾウは天敵と呼んでも良い。

 サンゾウが相手の魔法職を抑え込むのは今回の作戦の要でもある。





「どうせ当たんねぇだろうけどとにかく攻撃してこい! 早く行けグズ!」


「はいぃ!」


「~~♪」


 ギルドメンバーにせっつかれるようにして、一人の少女が向かって来る。

 その手に装備しているのは釘の刺さった棍棒。

 バット程長くはないが、中々凶悪なビジュアルをしている。


 動きは早くない上に、≪プリンセスミスト≫の効果で更に遅くなっている。

 しかし、丁度≪ポジションチェンジ≫を使いたいタイミングで攻撃が来た。

 スキルのモーションは≪フェイクモーション≫の効果でピースに統一しているとはいえ、スキルを発動する時には一度動きを止めないといけない。


 だけど、ここでサンゾウと≪ショットガンブラスト≫の詠唱が完了しそうなレンを入れ替えたら、相手に大きなダメージを与えることが出来る。


 躱すか、受けるか。

 一瞬悩む。

 でも今がチャンス。攻撃が最大の防御だ。


 ボゴッ。


「え?」


「へ?」


 ピースのポーズを取ったと同時に、釘棍棒が俺の腹に当たった。

 いつもよりも鈍い音がしたが、ダメージはそんなにない。


 問題は別の部分だ。

 ダメージを受けて一瞬声が出なくなり、歌が途切れる。

 それによって≪歌姫≫の効果も失い、スキルが発動しなかった。


「あ、~~♪」


「え、えっと、えい!」


 一瞬呆然としてしまったが、結局完全回避の発動は運だ。

 命中することだってあるだろう。

 気を取り直して歌い出す。


 当たったことに自分でもビックリしていた少女も、再び歌い出した俺を見て釘棍棒を振りかぶった。

 今当たった直後だし、続けて命中はないだろう。

 そんな油断をしてしまった。

 まだ待機しているレンを早く送り届けたかったのもある。


 ボゴッ。


 しかし、またしても命中した。

 続けて!? そんなことある!?


「お姉様、それはクリティカルです! 攻撃を避けてください!」


 焦ったようなリリィの言葉が飛んで来る。

 さっきのダメージエフェクトが少し違ってたように見えたけど、気のせいじゃなかったのか。


 どうやらクリティカルは完全回避では避けられないらしく、自力で攻撃を躱さないといけないようだ。

 そうとわかれば怖くない。

 

 がむしゃらに振り回される釘棍棒を避けながら、俺は歌い始める。

 完全回避に頼れない状態で貼り付かれるのは厄介だったが、何度か攻撃を躱しつつ、ダリに割り込んでもらった。

 そうなってからは俺も役割を十全にこなすことが出来、なんとか勝利した。





 俺達は対戦を大いに楽しんだ。

 勿論負けることもあった。

 悔しくないわけではないが、お互いに全力を出し切った結果だから、とても楽しい。

 それに、勝っても負けてもそれは俺達の(かて)になってくれる。

 可愛さは十分にアピール出来てる筈だからな。

 

 新しいスキル≪ポジションチェンジ≫がとても便利だった。

 サンゾウが突っ込んで他のメンバーと入れ替えれば、足の遅いメンバーもすぐに最前線に突っ込める。

 そのサンゾウも数秒あれば戻れるし、不意打ちにはもってこいだった。


 唯一欠点は、≪再使用までの時間(クールタイム)≫が十五秒と長いことだ。

 まぁ、これが短かったらえげつないことになりそうだし、今のままでも十分強いんだけど。

 

 ランダム対戦を続ける内に、チラホラ指名も入るようになった。

 せっかくだし俺達は、指名の方を優先することにした。

 そうやって対戦相手に≪最強可愛い姫様のギルド≫を指名してくれたギルドと戦っている内に、とあるギルドからの指名が入った。


 申請覧に表示されたのは、ギルドホーム用の金策をしている時に狩場を独占していた、大手ギルドの名前だった。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 極振り姫プレイの主人公はあんまり無い設定だから面白い [気になる点] 55話~58話、冒頭が似すぎてて「あれっ読んだっけ?」 って混乱する [一言] あらすじみたいな冒頭は続けて入れない…
[一言] クリティカル少女もなかなか尖った、と言うか普段運が悪いからとか言う理由でラック極の可能性がありますね たぶん積極性が足りなすぎるのが主因でしょうが、巡り合わせが悪いのは改善されなかったようで…
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