5 姫と詐欺師は紙一重?
新しく取得したスキル。
その名も、≪プリンセス・ボックス≫。
効果は、魅力を一割増加。
アクティブスキルとしての効果も持ち、使用すると周囲に攻撃を防ぐ壁が現れる、らしい。
取得条件は何もせずに他の人にレベルを10上げてもらうこと。
出現した壁の耐久値は使用者、つまり俺の魅力値に応じて上昇するそうだ。
こんな感じで、行動がスキルの取得に繋がる。
称号は≪箱入り娘≫。
≪プリンセス≫で、≪箱入り娘≫。
確かにぴったりだ。
俺がプリンセスでも娘でもないというのを無視すれば。
「姫、到着しました。ここまで来れば大丈夫です」
そうこうしてる内に、門の前まで到着していた。
門番がいて立派な門もあるが、ゲーム的な事情かフリーパス。
特に呼び止められることもない。
「送ってもらってありがとうございました」
「いえ、姫の為ならばこの程度。しかし、一旦ここでお別れです」
どうやら、姫の生き写しの俺を放っておけずここまで送ってくれたが、お墓を放置する気にもなれないらしい。
良かった、思ったより正気だった。
親切心で送ってくれただけだったようだ。
「なので貴女にこれを」
「え?」
ピロン。
トラストルが何かを差し出すポーズをすると、何か陽気な音がした。
何かもらったのか?
試しにアイテムストレージを開いてみると、何か増えてる。
目線を合わせて、説明を呼び出す。
プリンセス……ワンピース?
≪プリンセスワンピース≫
防具/鎧 レア度:B 品質:A
Def:2 Mdef:2
魅力+50
≪プリンセス≫のクラススキルの消費MP-20%
王女が愛した普段着。シンプルながらも上品なオーラは、王女の隠しきれない美しさを表現していると言われている。
「姫がそのような御姿では、笑われてしまいます。せめてそちらに着替えてからお帰り下さい」
「え?」
「さあ、どうぞ着てください」
じっと見つめてくるトラストル。
え、もしかして今すぐ着替えないとイベント進まない系?
明らかに女性用なんだけど。
いや、確かに今もスカートだけどさ。
「あの……戻っても良いですよ?」
たっぷり十秒。
駄目だ。
返事がない。ただのやべーやつのようだ。
進まないなら仕方ない。
無視して街に帰って、無言で付いてこられても恐怖でしかない。
ストレージの中の≪プリンセスワンピース≫をタップ。
次の瞬間、シュバッと装備が切り替わった。
ゲームって便利だ。
普通に着替えたらエロゲみたいになってしまうからな。
ピンクで少しふんわりとした感じのワンピース。
ワンピースだけど、ドレスっぽい雰囲気もある。
だけどこれ、男が着るには可愛らしすぎない?
こうしてみると胸の膨らみもしっかりと分かって、とても複雑な気持ち。
生憎、これで興奮出来る趣味を俺は持っていない。
しかし、トラストルは俺のワンピース姿に満足したようで、笑顔で頷いた。
「それでは私は姫の墓所へ戻ります。心の迷いが晴れたその時は、姫の為尽力すると誓います」
「あ、はい、ありがとうございました」
助かったのは間違いない。
複雑な感情を顔に出さないよう堪えつつ、満面の笑みのトラストルを見送った。
ピロン。
『条件を満たした為、称号≪詐欺師≫を手に入れました。
クラススキル≪フェイクモーション≫を習得しました』
新しく得た称号、詐欺師。
取得条件は、正体を偽った状態でNPCから十万J以上の金銭もしくはレア度B以上のアイテムを入手すること、らしい。
誰が詐欺師か。
ちなみに、≪フェイクモーション≫はちょっと分かりにくいスキルだった。
その効果は、物理攻撃系以外のスキル発動の際に必要なモーションを、別のスキルのものに置き換えることが出来る、というもの。
説明文だけ読んでもいまいちピンと来ない。
これは、実際に試してみないと分からないな。
とりあえずは他のスキルを試してみるところからスタートだ。
とはいえ、色々あって少し疲れた。
今日はこのくらいにして、また明日やろう。
俺は街に入ったところで、ログアウトすることにした。
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