49 可愛さの為にその二!
祝☆総合評価3000pt突破!!
可愛さをアピールする為のいくつかの作戦が、会議によって決まった。
まずはその一つ目、アズに装備を作ってもらう為に俺達は動き出した。
必要な素材を手に入れるべく、一層ダンジョン第二エリアへ。
そこで俺達は猛烈な勢いで採掘を行う。
目当ては金属素材。
現在、交流戦イベント目前ということで需要がかなり高まっていて、いくつもの大手廃人ギルドが素材の買い占めを行っている。
資金力も人数も大幅に負けている俺達が勝てるのは、気合いしかない。
ということで、効率が悪い狩場を全力で走り回った。
▽
可愛さの為にその二!
「ワンツーワンツー! お姉様、不器用なところもとても可愛いですが、ステップが遅れています!」
「は、はい」
ギルドホームの中にある、ダンスホールのような場所。
俺はそこで、ダンスの練習を行っていた。
講師はリリィ。
アイドル的なダンスに詳しいらしく、指導してくれている。
今も、両手を叩いてリズムを取りながら、俺の残念な足さばきを指摘したところだ。
その顔はとてもいい笑顔なのがちょっと気になる。
ちなみに、アズは工房に籠もって装備の制作に取り掛かっており、他のメンバーは庭で対人戦闘の訓練中だ。
何故ダンスかって?
可愛さをアピールする為の特訓だ。
箱に相手を閉じ込めてその上で歌って踊るのは却下されたが、歌って踊ること自体はそのまま残ってしまった。
勿論、ダンスなんてフォークダンスで相手に泣かれて悲しみを背負ったことしかない俺には、縁の無かったものだ。
だけど逃げたりはしない。
それが可愛さに繋がるなら、俺は全力でやってやる。
今まで出してこなかった全力を、このゲームに注ぎ込んでやるのだ。
きっとそれが、趣味としての楽しみ方だからな。
「それではお姉様、時間もあまりないので歌の練習も同時に行いましょう。まずは見本を見せますね」
「はい」
ダンスホールは結構広い。
昔通ってた小学校の体育館くらいはある。
少し距離を取った位置にいたリリィは、そのまま踊り出す。
そして、歌いだした。
「おはようみんな、夢から覚めても夢はずっとそこにある~♪」
曲は、俺が練習していたアイドルソング。
とあるアイドルアニメのオープニングで、歌も踊りも完璧なアイドル声優ユニットが歌っていたものだ。
アニメ内の結構激しめの振り付けをライブで完璧に踊る様は、中の人というものに興味のなかった俺の心を鷲掴みにした。
「お気に入りの、自分らしさで、お洒落してさあ出掛けよ~♪」
その声優アイドルユニットは十年程前に解散し、当時のメンバーも五人中三人が引退してしまっている。
俺の中で可愛さの頂点にいた彼女達の曲を使うことを決めたのは、俺だ。
リリィのダンスも踊りも、まるでその再現だ。
完コピってレベルじゃない。
歌い終わったリリィに対して思わず、だけど心の底から感動して拍手した。
「どうでしたかお姉様?」
「リリィさん、すごいですね! 完璧じゃないですか、感動しちゃいました!」
「ああ、お姉様に褒められるなんて、なんて幸せなんでしょう!」
「この曲、知ってたんですか?」
つい嬉しくなって質問してみると、リリィが固まった。
あれ、何かまずいこと聞いたんだろうか。
しかしそれも一瞬で、柔らかい笑顔を浮かべた。
「……はい。実は私もこの曲が好きで、マスター出来るように歌も踊りも、ずっと練習してたんです。お姉様がこの曲を使いたいって言った時は、とても嬉しかったです」
照れたように笑うリリィの姿は、なんとも珍しい、素直な笑顔に見えた。
いつもはもっと邪悪だったり、欲望に満ちた邪な笑顔をしてるからなこの人。
「私も好きなんですよ。自分らしさが一番可愛いんだ! っていうのが伝わってきて、勇気をもらえるというか……。アニメも女の子達が個性的で皆可愛くて!」
「そうなんですよ! 流石お姉様、御目が高いです!」
このアニメは、十五年程前に開始して五年程やっていたアニメだ。
一応女児向けというカテゴリだった筈だが、当時のオタク達にも大いに受けた。
そりゃあ可愛い女の子が可愛い衣装を着て狂気も交えながらアイドルするアニメなんて、受けない筈がない。
俺もドハマりしてしまった。
一応七歳くらいに見てたと仮定すれば最大でも二十二歳。
俺の設定年齢的にもおかしくはない筈だ。
俺は二十代前半の女性でフリーターの脳内設定でプレイしてるからな。
冴えないオッサンなんていなかったんだ。
その後しばらくリリィとアニメの話で盛り上がった。
元気と気合いが湧いてきた俺は、特訓に全力で取り組んだ。
『条件を満たした為、称号≪新人アイドル≫を手に入れました。
クラススキル≪アイドルステップ≫を習得しました』
『条件を満たした為、称号≪歌姫≫を手に入れました。
クラススキル≪歌姫≫を習得しました』
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