28 奥の手ぶつけんぞ! ☆
本日三回目の更新です!
「≪プリンセス・ボックス≫!!」
戦闘開始と同時に箱を出す。
俺達の常とう手段だ。
箱は狙い通り、弟のズクの方を閉じ込めた。
モズが大剣、ズクが片手剣装備。
ズクを狙ったのは、そっちの方が動きが早そうだからだ。
「ふん。オレを閉じ込めたところで、関係ないぜ。なぁ兄者!」
「その通りだ弟者!」
≪空間爆縮≫の詠唱時間は約十秒。
決まれば一撃で倒せるだろうけど、詠唱が完了するまでに一でもダメージを受ければ中断されてしまう。
それを狙ってだろう。詠唱を始めたレンに向かってモズがまっすぐ突っ込んでくる。
あんな武器で殴られたら、詠唱中断どころか一撃でダウンだ。
かといって俺も正面に立つことは出来ない。
耐久力に関してはレンと同じくらいだから、一撃で死んでしまう。
つまり、攻撃は最大の防御!
ピースサインを目の横に持っていく。
「≪チャーミングショット≫!」
ピンク色の光弾が目から放たれた。
よく見るとハート型であることが分かるそれは、光の筋を残してモズへと向かっていく。
今イベント初めての使用だ。
「≪パリィ≫!」
「あっ」
「きかねぇな!」
当たる寸前、素早く振られた剣に弾かれてしまった。
今の今まで伏せていたのに、あっさりと対応してくるとか。
流石は有名プレイヤー。反射神経が素晴らしすぎる。
しかも、相手は足を止めていない。
振った大剣を走りながら担ぎ直して、もうレンの目の前だ。
詠唱は途中で止めることは出来ない。
つまり、詠唱途中のレンは逃げることも、他のスキルを使用することも出来ない。
と、思う訳だ。
「≪キャストキャンセル≫」
「ちっ」
レンがスキルを使用して、詠唱が中断される。
魔法の扱いに長けたエルフの持つ種族スキルの効果だ。
更に、俺達との狩りにおいて近距離で魔法を使い続けたレンは、新しい称号とスキルを獲得していた。
それは、近距離でこそ威力を発揮する、魔弾の嵐。
杖が剣を振りかぶろうとしているモズへと向けられた。
「≪ショットガンブラスト≫!」
短い詠唱のすぐ後に、スキル名が響く。
杖の先端からいくつもの細かい破壊球が拡散するように放たれた。
その様子はまさにショットガン。
射程は短い上に一発一発の威力は低いが、まとめてぶち当てることによってかなりの破壊力を有する。
これで片付くかと一瞬思ったが、やはり相手は手ごわかった。
「っとと、あっぶねぇ。何か企んでるとは思ったが、ここでキャストキャンセルはびっくりだぜ。そんなスキル知らねぇし、本サービスで追加されたか?」
ダメージは入っているが、一割程だ。
レンの攻撃に感づいたモズは、咄嗟に後ろに飛んで大剣を盾にしたらしい。
くるりと担ぎ上げた大剣の刃の部分に着弾した跡がある。
「はっはぁ、ここまで隠してたのはびっくりしたぜ。確かに直撃すりゃあやばかった。けど、それは近距離用の――って、聞いてんのか!?」
レンが再び詠唱を始めたのを見たモズからツッコミが入った。
対象はズクの方。
長々と話を聞く義理なんてないしな。
それに、もう終わった。いい判断だ。
「≪プリンセス・ボックス≫!」
「……は? はぁ!?」
こっちに向かって駆け出そうとしていたモズが箱に囚われた。
どういうことかとモズが振り返るが、ズクの方も箱の中。
これが真の奥の手だ。
狩りをしている時に、≪収納上手≫の称号を手に入れた。
習得したスキルは≪ワンモアボックス≫。
効果は≪プリンセス・ボックス≫を同時に二つまで発生させることが出来るというもの。
ペア戦である以上、二人ともを箱にしまってしまえば勝ちはほぼ確定する。
今までは一つしか出せなかったから気にならなかった、≪プリンセス・ボックス≫自体のクールタイム
だけがネックだった。
だからさっきの攻防は、その時間を稼ぐのが目的だったわけだ。
勿論、レンの奇襲で仕留められたら良かったんだけどな。
流石は有名プレイヤーといったところか。
「やべー、これはやべーって兄者!」
「やべーな弟者! こうなったら箱を破壊するしかない!」
「分かったよ兄者! ≪バッシュ≫≪バッシュ≫≪バッシュ≫バッ――」
「≪空間爆縮≫!」
「弟者あぁぁぁぁあぁああぁぁあ!!」
「さぁ、次は貴方ですよ。――」
ズクが倒れ、レンはかっこよく煽ってから詠唱を開始する。
これが決まれば俺達の勝ちだ。
モズは焦ったように、しかしまだ力のこもった顔で大剣を振り上げた。
「まだだ、全力で壁を壊せばまだ!」
「≪プリンセス・ボックス≫!」
「あ……」
すでに設置してあった箱のすぐ外側に、新たな箱を発生させた。
二重構造だ。
これなら詠唱が終わるまでに破るなんて不可能だろう。
鍛え上げた俺の≪魅力≫が、箱をかなり頑丈にしているからな!
「ちっくしょー! カオルちゃん可愛いー!」
「≪空間爆縮≫!」
こうして、モズも圧殺された。
俺達の勝ちだ!
▽
名前:カオル
種族:妖狐
クラス:プリンセス
レベル:28
ステータス
筋力:1 体力:1 魔力:1 敏捷:1 器用:1 幸運:1 魅力:361(+594)
種族スキル
≪魅惑≫ ≪美しい毛並≫
クラススキル
≪魅力上昇≫ ≪魅了≫ ≪治癒の願い≫ ≪プリンセス・ボックス≫
≪フェイクモーション≫ ≪障壁強化≫ ≪チャーミングショット≫
≪プリンセスフォースⅢ≫ ≪ワンモアボックス≫
≪チャーミングミスト≫
称号
≪箱入り娘≫ ≪詐欺師≫ ≪守り手≫ ≪お転婆≫
≪真のプリンセスへ挑む者3≫ ≪収納上手≫
≪可愛さを振りまく者≫
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