27 箱の中に破壊球を発生させるだけの簡単な戦法
本日二回目の更新となります。
イベントが始まった。
俺が参加したのは、ペア戦の部。
自由にペアを組んでいいそうだけど、既にレンとパーティーを組んでいたし、とりあえず目標を達成するまでは他の人と組むつもりもない。
俺とレンの二人であのもく……もずく兄弟に勝たないと意味がないからだ。
ハズレクラスとゴミステータスで、しかも二人共が極振り。
そんな理由で産廃と馬鹿にされた俺達の意地を見せてやる!
走り出した頃、空中に沢山の画面が現れて、戦闘の様子が映し出され始めた。
ここでも対戦中の様子を見ることが出来るんだな。
しかし、じっくり見ているつもりはない。
視界の端で映像の動きを感じながら、手近な舞台へと飛び乗る。
レンと一緒に舞台の上に立つと、視界が白に包まれた。
特に眩しくはない。
数秒の後に色が浮かび上がってくるかのように、景色が戻ってきた。
そこは石畳のステージの上で、向こうには二人のプレイヤーの姿があった。
俺達との距離は十メートルくらいか?
割と近い。
丁度真ん中あたりに数字の≪10≫が浮かんでいて、今≪9≫になった。
「なるほど、あれが0になった時が戦闘開始ですね」
「みたいだね。頑張ろう、姫ちゃん」
気合いを入れ直して相手を見ると、既に構えている。
カウントが終わるまでは一定の範囲しか動けないようで、地面を奔る薄い緑の線より外側には行けないようだ。
俺達のペアは、魔法使いと姫。
近距離の肉弾戦は苦手としている組み合わせだ。
プリンセスってなんだよっていうのは今は置いておく。
だから距離を空けておいてもらえるのはありがたい。
近接型が目の前にいる状態で戦闘開始されても困るからな。
やがて、カウントが≪0≫になった。
「≪プリンセスボックス≫!」
「「なっ!?」」
相手のペアも二人とも杖を持っていることから、恐らくは両方魔法職。
火力と支援のペアだろう。
なのでなんとなく魔法使いっぽい方を狙って箱に閉じ込めた。
「くっ――≪ファイアボール!≫」
「壊れない!?」
狙いは当たったようで、閉じ込めた方が火の玉を放ったが、箱に阻まれて霧散した。
残ったもう一人は困惑している。
「くっ、俺を閉じ込めてる間にお前を潰すつもりだ、この箱の陰に隠れるんだメリア!」
「わ、分かった!」
慌てて出された指示に従って、支援職のプレイヤーが箱の後ろに隠れた。
確かに、その箱は敵味方問わず攻撃を防ぐ。
「時間を稼いでる間に壊してやる! ≪ファイアボール≫! ≪ファイアボール≫! ファイ――」
「≪空間爆縮≫!!」
「あ゛ぁっ!?」
レンが長々と詠唱していた魔法が炸裂する。
丁度男のいる場所に黒く禍々しい渦を内包した球体が出現。次の瞬間には、男を囲っていた箱ごと、メシャッとひしゃげて砕いた。
「クロム!!」
「こっちだったかー……」
≪CPO≫はグロとかには配慮されたゲームらしくプレイヤーの身体がひしゃげることはない。
HPが0になっただけで、元の形のまま倒れ伏している。
「まだ続けますか?」
「ま、まだやれ――」
「≪プリンセス・ボックス≫!」
「参りました!」
強化期間中に詠唱時間-20%の効果を持つプリンセス装備を手に入れた俺は、詠唱が-60%される。
ついでに、杖の持つスキルディレイカットの効果も-60%に。
元々詠唱時間なんてあってないようなものだった≪プリンセス・ボックス≫の発動が更に早くなったわけだ。
一瞬で現れた箱を見た相手は降参を選択した。
勝った!
▽
それから俺達は、何度か負けながらも、遂に決勝ステージへと辿り着いた。
アタッカー同士のペアは相性が悪い。
一人を閉じ込めてももう一人が猛攻をしかけてくる訳で、詠唱中のレンを守りながら一人で対応出来る程、俺も強くないからな。
決勝会場は、最初の会場に比べて少しこじんまりとしていた。
ステージは二つしかない上に、一ステージ上には誰もいない。
それはそうだ。
決勝会場に来られるのは六連勝したペアだけ。
そして準決勝以上は負けたら最初の会場に戻される。
人で溢れる訳がない。
「待ってたぜ。なぁ兄者!」
「そうだな弟者! お陰で待ちくたびれたわ!」
そこには、もずく兄弟がいた。
藻屑じゃなくてもずくだったが、関係ない。
諸共ステージという大海原の藻屑にしてやるぜ。
もずく兄弟は律儀にも俺達が来るまで待っていたようだ。
ああ、一回舞台に上がれば勝ち続けるか負けるかだし、そうなるのか。
「待っててくれてありがとう。お陰で君達に謝ってもらえるよ」
「はっ、威勢がいいな。俺達は待ってる間、お前達の戦闘をずっと見ていた。なあ兄者!」
「その通りだ弟者! 故に、アタッカーのペアに弱いことも承知している。あの≪空間爆縮≫を活かしたスタイルは見事だが、あれではオレ達に勝てるとは思えんな」
やはり、もずく兄弟にもしっかり見られていたようだ。
負けた後のクールタイム中に調べたところ、特定の相手の戦闘を見ることも出来たからな。
そして、もずく兄弟は二人ともがアタッカー。
立派な武器と防具を携えてるからとても分かりやすい。
相性は最悪だ。
「それでも、僕達は負けない」
「ふっ。ならばこれ以上の言葉は不要、かかってくるがいいさ!」
皆とてもノリノリだ。
盛り上がった状態で舞台へ上がる。
他に誰もいなかったから、もずく兄弟が向こう側に現れた。
「ではレンさん、手筈通りにお願いします」
「任せて。十秒きっかり、稼いでみせる」
カウントが0になった。
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