2 気が付けばケモミミ美少女
目を開くと、さっきまでとは別の世界が広がっていた。
明らかに現代社会とは別の、ファンタジー世界。
物凄いリアルだ。
これがゲームの世界だなんて、疑いたくなるくらい精巧だ。
「おっしゃー、狩り行くぞー!」
「えーっと、まずは北のエリアにでも行ってみる?」
「まずは西の平原じゃない?」
「東の森やべー! どんどこ死に戻ってんぞ! 俺もあと三四回は突ってみるか!」
「意味深なイケメンがいたけど何度話しかけてもロクな反応しやがらねぇ。話しかけてる隙にモンスターに一撃でやられちまったし、やっぱイケメンは敵だ」
洋風っぽい街に、色々な種族のプレイヤー達が行き交っている。
叫んでいたり、仲間に愚痴っていたり。
沢山の人で賑わっているな。
ここは広場かな?
俺は今、中央の噴水近くに立っている。
とりあえず邪魔にならないよう、噴水の縁に腰かけるか。
まずはステータスの確認から。
名前:カオル
種族:妖狐
クラス:プリンセス
レベル:1
ステータス
筋力:1 体力:1 魔力:1 敏捷:1 器用:1 幸運:1 魅力:101(+30)
種族スキル
≪魅惑≫
クラススキル
≪魅力上昇≫ ≪魅了≫ ≪治癒の願い≫
ステータスは初期ポイントを全部魅力に振ったお陰で他は全部1。
魅力的になりたかったから仕方ない。
チラッとヘルプを読んでみたが、そこには各種ステータスの意味が書いてあった。
勿論魅力についてもバッチリだ。
被ダメージ時のクリティカル率低下、被ダメージの低下、最大MPの上昇、NPCからの好感度上昇、らしい。
前二つは他のステータスに比べて上昇率がかなり悪いみたいだからオマケ程度かな。
かといって、NPCからの好感度が上がってどうするんだ。
イベントが発生するとか?
ヘルプには、『何かいいことが起こるかも!?』としか書いてない。
適当が過ぎるぜ。
種族スキルの≪魅惑≫はランダムボーナスでもらったものだ。
効果は、魅力を一割アップさせた上で魅力判定にボーナス。
低確率でランダムボーナス発生。
ボーナスって何だ。
クラススキルの方は、初期スキルの中から三つ選んで取得した。
魅力を一割アップさせる≪魅力上昇≫。
魅力を一割アップさせた上で、謎の魅力判定とやらにボーナスのある≪魅了≫。
≪治癒の願い≫は回復スキル。
魅力的になりたいと思っていたらこうなった。
パーティープレイがしたい気持ちもあったから、最後の一つは支援スキルにしたけど。
流石に魅力だけあっても、誰も一緒に遊んでくれないだろうからな。
魅力の持ち腐れは勿体無い。
ちなみに、≪プリンセス≫はランダム専用クラスだったらしく、ボーナスは無い。
これでボーナスまであったら運任せが最高過ぎるしな。
っていうか今更ではあるけど、プリンセスってどうなんだよ。
俺、男なんだけど。
そういえば俺の見た目ってどうなってるんだ?
ランダムで決まるって言われてたし自分じゃ分からないんだよな。
――あれ?
服装は、簡素なシャツに革っぽい鎧。
黒髪が胸の辺りに垂れてるのはまだいい。
ゲームキャラなんだからロンゲもいるだろう。
視界に入ってる俺の膝が露出してるのは、何故だ!?
ああうん、俺が履いてるのがスカートだからだな!!
ちょっと待って、これってまさか……!!
メニューから、装備画面を呼び出す。
そこには、俺の全身と装備中の武器防具の名前が表示されている。
このアバター、女の子だ!!
黒髪ロングのストレートで、頭の上には狐耳が生えている。
これも勿論黒い。
顔の造りは……多分悪くない、セーフ!
これももしかしたら、魅力に極振りしたお陰かもしれない。
ありがとう魅力。
もし素のままだったらえげつないクリーチャーが誕生していた可能性がある。
俺の顔で女装とか、存在が公務執行妨害でしかない。
メニューを消して、周囲の様子を窺って見る。
なんか視線を感じると思ったら、もしかして俺、見られてる?
男が女装してるー、なんて思われてるんだろうか?
やばい、死ねる。
自分で作った訳じゃないけど、そんな目で見られてたら辛すぎる。
一先ず人気のない場所に避難だ!




