13 可愛いは楽しい!可愛いは正義!
祝☆総合評価500pt達成!
皆様、ブックマーク、評価等の応援ありがとうございます!
やる気が湧いてきますので、是非これからも応援よろしくお願いします!
臨時パーティーを募集する広場にて、俺は誰かしらが声を掛けてくれるのを待っていた。
そこに現れたのは、セクシー可愛いシスターっぽい服に身を包んだ女の子。
開口一番の台詞は、お姉様と呼ばせてください。
見た目は可愛いのにサンゾウと同じものを感じる。
こいつはきっとやべーやつだ。
しかし、何かの間違いかもしれない。
一呼吸置いてから訪ねてみよう。
「えっと、何ですか?」
「お姉様と! 呼ばせてください!」
聞き間違いじゃなかった。
さっきよりも勢いを乗せて宣言してくるあたり、何の憂いも帯びてないぞこの人!
「えっと、おね、え? お姉さま、ですか?」
「はい! その美しさ、堪りません! 是非私を妹にして欲しいんです!」
駄目だ、混乱してうまく言葉が出てこない。
そんな俺の様子を気にしてる素振りは全く無い。
清楚っぽく見えたのに、ここぞとばかりに欲望をさらけ出している。
ここでの会話は他に聞こえないとはいえ、どストレートが過ぎる。
どうしたらいいのか全く分からない。
こういう時、出来る女の人はどう対応するんだ?
「えーっと、臨時パーティーを組んでくれるということでいいんですか?」
「臨時パーティー……? ってなんでしょうか」
「え」
話題を変えようとしたら、まさかの反応だった。
驚いてしまったけど、ここがどういう場所か説明する。
俺も他のプレイヤーに教えてもらったからな。
ユーザーが決めた使い方ならヘルプにも載っていないし、知らないのも仕方がない。
「なるほど、そうだったんですね。教えてもらってありがとうございます!」
「いえいえ。せっかくなので、どこか行きますか? 誰も拾ってくれなくて暇してたんですよ」
「ええっ、そうなんですか!? こんなに美しくも可愛いお姉様を放っておくなんて、他の人達は見る目がありませんね!」
「私が美しくも可愛いかは置いておいて、見た目はパーティー組むのにあまり関係ないですからね」
なんとなく感じたのは、ここにいる人の大半は経験値やアイテム的に効率の良い狩りが目的ということ。
そんな人にとって見知らぬプレイヤーとパーティーを組むのに重要なのは、見た目よりも性能だろう。
そういう感じで、役に立つか不明な俺は放置されていたと思われる。
効率度外視のエンジョイ勢はこんなとこには来ずに気ままに楽しんでるんだろうな、きっと。
俺もどっちかというとそっち側なんだけど、いかんせん知り合いがいない。
しかもキャラクターはソロ狩り不能の性能をしている。
その上俺自身がソロ狩りよりもパーティー狩りが好きなものだから、こういう場所を活用するしかない。
あとは、セクハラ等に対しての通報機能も完備してるから、下手にナンパ行為をすれば最悪データ消去の上出禁だ。
そりゃあ誰も来ない。
一部のヤベー奴らを除いて。
「そんなことありません! ゲームに置いて、見た目は大事です!」
「あ、はい」
「だって考えてもみて下さいよ。パーティーメンバーが自分以外ゴリッゴリのメガマッチョばかりだったら? ええ、モチベーションは筋肉に反比例して地面にめり込んじゃいますね!」
想像してみる。
うん、絵面は楽しくない。
「それが逆に可愛い女の子達に囲まれていたら?」
これも想像してみる。
うん、間違いなく楽しい。
そもそも俺だって、自分が操作するのですら男キャラよりも女キャラを好んで使っていた筈だ。
そう考えると、間違いなく見た目は重要だ。
「楽しいですよね? ゲームなんですから、楽しさは大事です。そして可愛いは正義。可愛いは楽しい。だからこそ、可愛いは重要なのです!」
「なるほど」
これは納得せざるを得ない。
可愛いは楽しい。
マッチョがダメってことはないが、可愛い女の子の方がテンションが上がるのは致し方ない。
そして今の俺は可愛い。
なら、他の人のモチベーションを上げる力が、俺にはあるということだ。
これは、活かさないのは俺の主義に反する。
「そういうわけで、お姉様と呼ばせてください!」
「いいでしょう!」
改めての問いに即答。
即答しかない。
そういうお姉様的なものなんて、アニメや漫画でしか見たこと無いけど、きっとなんとかなるだろう。
「そうだ、見えてるとは思いますけど、自己紹介しますね! 私は≪リリィ≫っていいます。よろしくお願いしますね、お姉様!」
「よろしくお願いします。私は≪カオル≫です。お姉様なんていう柄ではないんですけど、よろしくお願いします」
「お姉様、私は妹なんですから、そんなに緊張しなくていいですからね! 肩の力を抜いてください!」
早速ダメ出しされてしまった。
どうやら俺の緊張が伝わったらしい。
鋭いというかなんというか。
「出来るだけ頑張ってみます」
「自信なさげですね。でも、そんなお姉様も素敵……!」
「それじゃあ、どうしましょうか。どこか狩り行きますか?」
「それなんですけど、お姉様ってどういうクラスなんですか?」
かくかくしかじか。
端的に説明する。
レベル21のプリンセス(32歳)独身。
魅力が足りていないので、魅力極振りで使えるスキルは回復と箱。
勿論、リアルの情報には触れていない。
ただの俺の脳内だけの冗談だ。
「なるほど。お姉様はサポート的なスタイルなんですね。≪プリンセス≫なんて、お姉様にピッタリ過ぎて化学反応がマッハです!」
「リリィさんはどんな感じなんですか?」
「お姉様。私のことは持ちうる限りの親愛を込めて、リリィ、って呼んでください」
「は、はい。リリィはどうですか?」
「私は種族が≪半天使≫で、クラスは≪アコライト≫。Int極振りの支援特化型です。攻撃魔法もありますが、アンデッドと悪魔系にしかダメージが与えられません」
「そうなると、リリィも直接戦闘がほとんど出来ない型ということですね?」
「はい!」
リリィは元気一杯に返事をしてくれる。
俺と話すのが楽しくて仕方ない、という目をしている。
中身がおっさんでちょっと申し訳ないが、どうせゲームなんだから気にしてはいけない。
俺は可愛さを振りまくプリンセスなんだ。
「二人での狩りは厳しそうですね。他に誰かを募集してみますか?」
「えー、お姉様との時間を邪魔されたくはないです!」
はっきりと言い切った。
なんて清々しいんだ。
そういう人、嫌いじゃない。
変に意見を隠して陰で不満に思われるよりよっぽど楽だ。
「うーん、それなら一度、情報収集でもしてみますか。もしかしたら、私達だけでもいけそうな狩場があるかもしれませんし」
「そうですね、そうしましょう!」
俺の提案にリリィも賛成してくれたので、一度会話ルームを解除した。
ヘルプに載っていたのは初心者向けの西の平原についてだけで、他の狩場に関しては自分達で調べるしかない。
だから、一層にもリリィの攻撃スキルが活きる狩場があるかどうか調べてみるのも良いだろう。
「お前ら、ほんといい加減にしろよ!」
「ん?」
「どうしたんでしょうか」
早速情報を求めて移動しようとしたところ、臨時広場に怒鳴り声のようなものが響き渡った。
顔を向けてみると、人混みの中に少し空間が出来ていて、分かりやすくなっていた。
そこにいるのは、杖を持ったプレイヤー。
激おこって感じの顔をしている。
彼が怒鳴ったようだ。
その隣にも二人程いて、同じような顔をしている。
こわい。
その前にいるのはどちらもガタイがよくて、筋肉モリモリ。
赤い鬼と、青い鬼。
青い鬼の方は眼鏡を掛けていて、知的な雰囲気を醸し出している。
見た目が印象的過ぎて、すぐに気付いた。
今日の昼頃に武器屋で見掛けた二人だ。
「こんなところで喧嘩なんて、迷惑な連中ですね。お姉様、行きましょう」
「ごめんなさい、ちょっと行ってきます」
「お姉様!?」
驚くリリィを振り切って、鬼達の方へ向かう。
知り合いですらないけど、彼らはゲームを楽しんでいる風だった。
変なことをするようには思えない。
それに、少なくとも赤い方は極振り仲間だ。
何かの手助けくらいは、出来るならしてあげたい。
「すみません、何かあったんですか?」
少しでも面白いと思っていただければ、ブックマークや感想、評価、レビュー等での応援よろしくお願いします!




