プロローグ
よろしくお願いします。
「ああ、そういえばねだられて必死に注文したんだったな」
箱の中に入っていたのは、ヘッドギアのような機械。
それとファンタジーちっくなパッケージの小箱。
これはVRゲーム用の機械と、専用ゲームソフトだ。
VRゲームというのは、簡単に説明してしまうと、ゲームの中に入って身体を動かすような感覚で操作する、最先端の技術が駆使された夢のゲームだ。
当然の如く、とても高い。
そして競争率も半端じゃない。
俺の目の前にあるこいつも、パンク寸前の申し込みページを連打しまくって抽選を申し込み、更に運良く当選して購入出来た代物だ。
申し込みですらあまりの盛況ぶりに二十分程で終了。
抽選に至っては競争率一万倍以上とか聞いたような気もする。
紛れも無く、超絶人気の最新VRMMO。
どうしてそんなものがここにあるのか。
実にしょうもない理由だ。
入れ込んでいた女の子にねだられただけ。
その女の子には、今日告白して見事に砕け散った。
そのショックと勢いで、会社も辞めた。
お金は両親の遺産が十分あるし、世間体を気にして就職しただけのブラック企業なんてもう用は無い。
俺はこのゲームを趣味にして、のんびりだらだら幸せに生きるんだ。
ゲームの経験はほとんどない。
超話題の新作ゲームを注文したことすらすっかり忘れていた程だ。
フラれた彼女から、誕生日プレゼントは持って来い、と言われたことがきっかけではあるけども、良い機会だった。
新しい趣味を俺に与えてくれてありがとう。
勿論速攻ブロックした。
ゲームが趣味になるのかどうかは、若干不安もある。
何年か前に人体実験に使われていたとかいう大きな事件も発覚してたし。
だけど、引きこもるにはぴったりだと思うんだ。
煩わしい人間関係からは、しばらく離れたいからな。
もし俺に合わなければ、止めればいいんだし。
とりあえずやってみてから判断する。
犯罪でもなければそれが一番分かりやすい。
というわけで早速試してみるか。
説明書に従って、セットアップを始める。
とは言ってもパソコンに繋ぐだけだし、すぐに終わった。
「ふーん、色んな機能があるんだな」
ゲームだけじゃなく、動画を見たり、色々出来るらしい。
だけどとりあえずは、同梱されていたゲームを起動するのが目的だ。
タイトルは≪カスタムポジビリティオンライン≫。略して≪CPO≫
気になって、開始前に少しだけ調べてみた。
世界観は、よくある剣と魔法のファンタジー
≪クラス≫と呼ばれる、剣士とか魔術師みたいな職業的なものを発展させていくシステムが特徴らしい。
βテストもきっちり開催されていて、そこから既に人気が爆発しかかっていたらしい。
ふむふむ、なるほど。
多数のクラスがあるようだ。
共通のクラスだけじゃなくて、種族専用のクラスもあるのか。
せっかく初めてのゲームをやるんだし、これ以上調べるのも無粋だな。
他の人はどうか分からないけど、俺は攻略情報は見ない。
強い弱いなんて二の次で、楽しく遊びたいだけだからな。
だからプレイヤースキルが要求されるようなゲームはほとんどしたことがない。
ああ、なんか緊張してきた。
ヘッドギア型の機械を頭に被り、ベッドに横になる。
よし、準備完了。
「ダイブスタート」