No.83 無防備すぎません??
ぺちぺち。
『アメリア王女様、愛しています』
ぺちぺちぺち。
うちは寝ぼけて変なことを言ったルースの頬を手でぺちぺち。
本当に何言ってんだ。
起きろ。
ルースはうちがいくらぺちぺちと軽く平手打ちをしても目を覚まそうとはしない。
それどころか夢の中でなんだか楽しそうにしている。
「フフフ。アメリア、それは違うよ」
ルースはベッドの上で眠ったまま微笑む。
いつもとは違うアメリア呼び。
どこか優しくて、温かくて。
きっと、アメリア・ホワードではなく、王女のうちのことなのだろうけど……。
『アメリア王女様、愛しています』
……。
さっきのあれはどういうことなのだろうか。
夢を見ていたからからあんなことを??
でも、さっきから夢の中で王女のうちと楽しそうにしているのだけれど。
とうちが考えながら平手打ちを続けていると、ご飯ができたのかマティアも2階に上がってきていた。
マティアは入り口で壁にもたれじっとこちらを見ていた。
「なぁ、マティア。コイツ起きないんだけれど」
うちがそういうと、マティアはフフフと笑う。
マティアの笑った意味が分からず、きょとんとしているとマティアはうちの隣まで来て、
「ルース君が起きるまで隣にいてあげて」
「はぁ……??」
「下に降りているから、ルース君が起きたらご飯を食べにおいで」
マティアはそう言うとニコニコ顔で1階に降りて行った。
うちはますますマティアの発言の意味が分からなかったが、寝言を言うルースは滑稽だったのでうちはマティアの言う通り起きるまでベッドの隣にいることにした。
「アメリア……僕と一緒に旅をしよう??」
眠ったままルースは真剣な顔でそう言った。
そんなルースの様子にアメリアははぁーとため息。
きっと、ルースは疲れているんだな。
でも、その夢はやめとくれ。
★★★★★★★★★★
「うう゛ぅん……」
ルースは一瞬目を開け、ぼやけた天井を見るとまた目を閉じる。
どこか重たい体。
起こそうとするが、なんだか重く感じ、なかなか起き上がれない。
昨日、動きすぎたかな……。
普段の僕は基本的机での作業が多い。
妖精語で書かれた書類。ヴァンパイア語で書かれた書類。そして、さまざまな人界の言語で書かれた書類。
それを処理することで大体の時間をつぶす。
たまに、妖精の島に訪れたり各地に出向いたりすることはあるが毎日はない。
そのため僕はそんな体力はなかった。
なのに、昨日は50層ぐらいある魔窟を歩き、森を歩き、妖精の街を走りでずっと動き回っていた。
そのせいで今は体がぐったり。
もうちょっと寝たい。
というのが本音だが、さっき太陽の光を感じた限りでは起きなくてはいけない時間と分かっていたので、僕は重い瞼を開け、起き上がる。
「……」
僕のベッドにはなにかいた。
うん、アメリアがいた。
僕の愛する王女様じゃないアメリアがいた。
ぐーすか寝ているアメリア嬢が。
さっきから重いと思ったら、この人のせいだったのか。
アメリア嬢はそれはご丁寧によだれを垂らしている。
全然かわいくもないし、美しくもない。
でも、どこかあのアメリア王女に似ている。
髪色も何もかも違うのにどこかに類似点があるように感じる。
なんなだろ……身分だって違うアメリア嬢とアメリア王女に似ている所なんて一切ないはずなのに。
なんなんだろう……。
僕はアメリア嬢のかわいげのない寝顔を数分見つめて、もういい時間になっていたのでアメリア嬢の肩をゆすった。
「アメリア、起きて」
「う゛うぅん……。2度寝させろ……」
アメリア嬢は馬鹿力で僕の腕を掴み、肩から外そうとする。
痛いんだけど……。
アメリア嬢は僕の気持ちなんてシカトで寝返りまた寝始める。
ねぇ、アメリア嬢。
なんだかんだここ、男が寝ていた場所なんだけれど。
無防備すぎません??
まぁ、こんなよだれタラシの令嬢を襲うなんて馬鹿らしいからしないけど。
でも、邪魔だ。
こんな令嬢を襲うなど1個もたりとも考えていない僕は容赦なく蹴って、アメリア嬢をベッドから落とした。
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