No.8 チョオォォォ――――プ
「アーロン、何か情報はあったか」
ヒラリーとフレイたちは馬で街を駆け抜け、アメリアを探していた。
「ええ。最近、レグルス港で海賊が再び現れたようです。バルバロッサ海賊とか」
「バルバロッサ海賊か……」
「以前から対処はしていたのですが……」
「ああ、分かってる。アイツらは悪名高いで有名だからな。簡単に消すことはできないだろう」
「ヒラリー姉、アメリアはそこにいるのですか」
「あぁ、たぶんな。さぁ、とりあえずそこに向かおう。可能性が一番高いからな」
ヒラリーとフレイたちはレグルス港へと馬を走らせた。
★★★★★★★★
「あの怪物王女が現れたぞおぉぉぉーーーーーー!!!!!!」
あのおっさんの叫び声と同時にうちは重い体を目的の建物へ動かす。
うちと船は建物挟んで反対側にいるから、海賊の男どもと会う可能性は低い。
ただ、建物には数人いるだろうから注意しないとな。
「行け―!! あの怪物王女を捕えろ!! もうどうでもいい!! 倒せー!!」
建物の反対側からそんな声が聞こえる。
怪物王女って……やめろや。
そんな声を耳にしながら走っていると、裏口を見つけた。
裏口にはやはり見張りの男がいたが、もともと最高値の低い限界速度で真っすぐ裏口へ走る。
「あっ、お前まさかっ!!」
「おやすみ」
見張りの男の喉を殴り、そのあとすぐに首もとをチョップ。
男は気絶した。
はい、次っ。
敵が消えた裏口から入り、地下室に向かう。
建物の見取り図はあのおっさんに大体教えてもらっていたため、すぐに階段を見つけることができた。
そこに行くまでに一応何人か気絶させていた。
騒がれたら困るしな。
寝てる方がいいだろう。
階段を下り地下室に行くと鍵の部屋が2部屋あった。
「お前はっ!!」
「はいはい、おやすみ」
慣れた手つきで見張りたちをポポイのポイっで気絶させていく。
見張りを全員気絶させると、鍵を探すのが面倒であったため2つの部屋のドアを蹴とばして壊した。
「あっ!!」
「ワンっ!1」
片方にはサンディ、少年、少女。
もう一方の部屋には男女の大人2人がいた。
「王女様っ!! なんでここまでっ?!」
少年は信じられないとでも言いたげな顔をして驚いていた。
そりゃそうか、うちってまだ6歳だっけ??
「うちの犬が捕まったもんでね」
「ワンっ」
サンディはすぐにうちに寄ってきて、しっぽをふりふりさせていた。
その時コイツの体がボロボロであったことにも気づいた。
サンディ、ごめんな。
「王女様、本当にありがとうございます」
「本当に助かりました」
男女の大人が言った。
「まだ、助かってないぞ。ここから脱出しなければ。さぁ、早く」
再会したうちらは急いで1階へと走る。
うちは走るのは遅いため一番後ろで走っていた。
「きゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
階段を上っている途中、先に上ったであろう少年と少女の悲鳴が聞こえた。
すぐさま急ぎ足で上りきると、少年と少女の前にナイフをもった男がいるのが見えた。
「親分から、許可が下りたんだぜ。少し傷がついてもいいってな。回復魔法もあるし、一発当ててやるよ」
男はナイフ振りまわすが、少年たちは必死に後ろに下がりよけていた。
でも、このままだと時間の問題だ。
確実にナイフで切られてしまう。
しかし、ガキたちのところまでは距離があって、間に合わない。
クソっ。
バリアとかなんでもいい、ガキの前に何かあればっ。
「はい、ガキから行くぜっ!」
「いやだあああぁぁぁぁぁーーーーーー!!!!」
すると、少年の目の前に光る何かが生まれた。
カキイィィ―――――――ン!!!!!!!
ナイフとガラスのようなものがぶつかる音がした。
「なんだっ。これはっ!!」
少年が目を開けると、目の前に分厚いガラス膜のようなものがあった。
丁度、少年と少女を守るような形、大きさのバリア。
自分の目を疑った。
うちが想像したバリアが少年たちの前に生まれていた。
うち、魔法なんて使ったことないのに。
呪文も唱えていないのに。
「おい、ガキら。早く、うちの後ろから逃げろっ!! あっちが裏口だっ!」
「え?? あ、はい。分かりました」
うちが叫ぶと少年と少女はすぐさま走り出し、裏口へと向かった。
後を追いかけるように大人たちも逃げた。
あの大人たちも逃げたか……良かった。
「クソっ、あとちょっとだったのによぉ!」
ナイフをもつ男はバリアを蹴っていた。
あのバリア、解除できるか??
試しにバリアに向かって命令を出すように手を横に振る。
すると、バリアは消え、蹴ろうとしていた男がこけた。
「王女っ!! 俺をバカにしてんのかっ、オラっ!!」
男はブチギレたのか猪突猛進のごとくこちらに向かって走ってくる。
来るなら、来いっ!!
うちはギュッと拾っていた剣を握りしめる。
「待て、そいつは僕がやる」
待ち構えているとナイフ持ち男の後ろから声が聞こえた。
走ってきていた狂人男は背後の奴の声を聞くと立ち止まった。
こちらからは暗くて声の主の姿は見えない。
「さっきはよくも僕の部下を使ってくれたね」
男の後ろから1人の男が現れた。
彼はゆっくりと足をこちらに進めてくる
あれが親分だろうな。
なんかどこか見たことがある気がする。
なんでだ??
そんな疑問を浮かべつつも、親分に答えてやった。
「いいじゃねえか。お前はどんどん奴隷を売り飛ばしてるくせに。悪さはもっとしてんだろ、たとえば……麻薬売買とか」
「なんでそれを知ってんだい、小さな王女様」
「さぁー?? 知らねえよ」
勝手に頭に浮かんできたんだよ。
バルバロッサ海賊がどんなことをしてるのかがさぁ。
だから、知った過程は知らねーよ。
「まぁ、どうでもいいか、そんなこと。どうせ、王女様はここで死ぬのだから」
「あ゛あ??」
親分はしまっていた剣を取り出す。
その剣は至って普通の剣。
しかし、気品だけはある親分は自信気に嫌な笑みを浮かべていた。
「この剣はね、毒がぬってあって、この剣で切られた者は1時間以内に毒が体の中を回って最後に死んじゃうという代物なんですよ。さすがにこれでは怪力王女様でも勝てることは無理でしょう?? だから、さっきの人たちを僕に返して頂きたい」
毒か……。
「はあぁ?? いやあぁーーーーーーだぁ」
悪魔のような笑みを浮かべる。
「毒が何?? 当たらなければいいんだろ」
あー、良かった。
本当に地下室で剣を拾っといて。
さっきから握りしめていた剣を構え直す。
そんなうちの様子に呆れたのか親分ははぁーと重いため息をつく。
「仕方ない、王女様を殺るしかないんだね」
親分はこちらに向かって、廊下を一直線に走る。
部下も上司もやること変わらねえな。
ほんと。
「殺ってやるよおぉーーー!!!!」
★★★★★★★★
「あそこの建物に今いるのか……??」
「はい、ヒラリー王女様」
「君たちはあそこから逃げてきたのか??」
「ええそうです。アメリア王女様に助けてもらって……」
「そうか。君たちが無事でよかった」
ヒラリーはレグルス港に向かっている際、逃げていた少年たちに出会い、そのまま案内してもらっていた。
あのアメリアが人助けとはな……。
口調が変わる前のアメリアは人に手を差し伸べる何てことはなく、よく人をいじめていた。
アメリア専属メイド、ティナもその対象だった。
しかし、口調が変わりアメリアの全てが変わってしまったあの日からティナとももちろん仲良く、他のメイドや使用人たちとも仲良くなっているようだった。
妹の成長を喜ばしいが……。
もう少し王女としての自覚を持ってもらいたい。
幼い王女というのは身代金を要求するために非常に狙われやすい。
(結構前に、ラニャがそういったことに巻き込まれたが)
姉妹の中でも一番下のアメリアは一番対象になりやすいのだ。
危険を冒してまで自分で人を助けると、逆に他の所に危険が及び王女たちに何かあれば国民も心配になる。
王族でいるのはそれほど難しい立場なのだ。
でも、起きたことは仕方ない。
「アーロン、フレイ、兵士たち。私の後ろについて来い。あの扉から入るぞ」
「了解です」「了解」「「「了解」」」
フレイたちは小さな声で答えた。
そして、ヒラリーを先頭に裏口ドアから侵入した。
すると、奥の方で剣がぶつかり合う音が聞こえる。
その音に向かって走っていくと、海賊の男と身長が圧倒的不利な状況下の中小さな妹アメリアが戦っていた。
「アメリアっ!!!」「アメリアっ!!!」
ヒラリーとフレイが名前を呼んだとき、パッとアメリアが振り向いた。
「ヒラリー姉っ!! フレイ王子っ!?」
「王女様、余所見はいけませんよっ!!!!」
海賊の男はアメリアの首元を狙い、剣を右上から左下へ振る。
彼女は左へよけるが少し間に合わず、肩を切られた。
「クっ、でも、お前も一発やったからって安堵してんじゃねぇーよっ!!!」
アメリアは慣れたように親分が左に剣を振り切ったと同時に左で喉元なぐり、首をちょんとチョップ。
親分は右へ左へと足がよろつき、ついに倒れた。
「ゔあっ」
親分は気絶していた。
「はぁ、やっとか…」
アメリアは巨人を相手にし、とてもくたくたそうであった。
「アイツらを捕えろ。そして、牢屋に連れていけ」
「了解」
兵士たちはヒラリーの命令で海賊たちを捕えた。
ヒラリーたちはアメリアのもとへ駆けつける。
「アメリア、大丈夫か??」
ヒラリーは妹の顔をじっと見た。
彼女の顔色は悪そうに見える。
「あぁ、大丈夫。あの犬は?」
「大丈夫だ、全くお前は何してんだか。さぁ、帰るぞ」
その時アメリアは横にフラフラとして座り込んだ。
「アメリアっ!? 僕だけど、分かる??」
フレイは何とか座っているアメリアを支える。
「……フレイもいたのか。大丈夫、私はなんとかな……」
「アメリアっ!!!!」
アメリアは自分を呼ぶフレイの声を最後に意識がなくなった。