No.78 アメリア様に比べお兄様はヤワですよ
「つまり、サガ島は反人間派妖精の島の1つで、もしかしたら姉さんたちはそこにいる可能性があるってこと??」
「ええ、高確率でそこにいるかと思われます。トランスファーマリンなんて他の所で見たことありませんから」
僕、フレイはルイ、エリカ、ハオラン、クリスタ、テウタの6人で図書館の長方形の机を囲み話していた。
机の中央にはトランスファーマリンについて書かれたページを開けている図鑑、ハオランが調べてくれた構成成分が書かれた書類、そして、小さな輝きのないトランスファーマリンが置かれていた。
「でも、反人間派ってところが厄介なんだよなー」
テウタは椅子にもたれかかり、頭の後ろで腕を組む。
そんなテウタの一言にエリカは首を傾げる。
「今、人間と妖精は良い関係を作れているではありませんか??」
「一部の妖精にはね」
一部……??
テウタはそう答えるとはぁーとため息。
エリカがまだ理解できなかったため、代わりに妖精のクウォーター クリスタが説明し始めた。
クリスタが言うには、
一昔前、人間と妖精は争い、決着がつかず終戦を迎えたもののそこからも人間と妖精の仲は悪かった。
時が経つにつれ人間との関係を戻そうとする妖精が現れた。
その時も、反人間派の妖精とバトったらしく、内戦になっていたとか。
それでも、どの島が親人間派か?? 反人間派か?? というのははっきりしていなかったらしい。
しかし、ある事件がきっかけで境界線ができた。
事件が起きる前、その妖精の前国王の弟は人間たちととても仲良くしていた。
その人間の中にある1人の女性が現れ、前国王の弟は恋に落ち、その女性と弟の間に子どもが生まれた。
その子供がクリスタの父親らしいけど……。
「え!? クリスタ様、王族の血を持っているのですか?!」
エリカは驚きのあまりか目を見張った。
その後、図書館にいることに気づき、大声を出した口を両手で押さえていたが。
照れているのかクリスタは頬をポリポリと手でかく。
「まぁ……、そういうことにはなりますね……お兄様もですが」
コホンと咳払いをし、クリスタは説明を続ける。
弟と人間の女性の間に子どもができたことを知った反人間派の前国王はすぐに弟を妖精界追放。
それに対し、親人間派の妖精たちが反乱し、それ以来新・反の島が決まったとか。
反人間派の妖精達は自分たちの島に以前から張っていた古代魔法を強化し容易には出入りできないようにしたらしい。
「だから、アメリア様、お兄様が反人間派の島にいれば……」
「そう簡単にはアメリアたちの自らの脱出も救出も難しいってこと」
「でも、どうしたらいいの??」
僕がそう尋ねると、クリスタは苦しそうな顔をした。
「唯一、古代魔法に引っかからず反人間派の島に出入りができる島があります。その島はオルム島というのですが、サガ島から最も離れた位置にあります。また、島々は1本の石橋でつながっているのですが、そこには検問があるのでそこを突破しないといけません……」
「……壁が分厚いね、さすが反人間派」
唯一の救出方法もかなり難易度は高く、みんなは深い溜息をつく。
数分間沈黙が続いていたが、テウタは突然席を立った。
「とりあえず、今日はここまでにしよ。準備をきちんとして明日、妖精の島に行って助ける。王子さんがいるし、アメリアが婚約者だから兵士も連れていくことができると思うけれど、人間が侵略しに来たと誤解されかねない。だから、この6人で行く」
「でも、急いだほうが……」
エリカが心配そうな声を出すと、テウタはニコッと笑う。
「あいつはそんなヤワじゃないし、ルースだっているんだ。大丈夫」
「そうですね」
エリカも笑みを浮かべる。
アメリアは……怪物だもんね。
僕がアメリアの今までの怪物ぶりを思い出しているとルースの妹クリスタは「アメリア様に比べお兄様はヤワですよ、テウタ様」と言い、みんなは笑っていた。
読みあさって机に置きっぱなしだった本を片付け、僕たちは図書館で解散した。
★★★★★★★★★★
あたりが暗闇、真っ黒の世界に1人の少女。
エリカは真っ暗な光1つない世界で浮かんでいた。
あらっ??
ここどこ??
さっきベッドに入ったはずなんだけど……。
エリカは周囲を見渡すが、何もなく暗闇が広がっているだけ。
『いや、いやよっ!!!!!!』
すると、どこからともなく女性の声が聞こえた。
誰の声……??
『なぜっ!? なぜよっ!!!???』
女性は誰かと話しているようだが、相手の声は聞こえない。
『キャアアァァァァァ――――――――!!!!!!』
女性が突然耳が裂けような高音の声で叫び、エリカは両耳を手で塞ぐ。
一体誰なのっ!!??
「はっ!!!」
エリカは目を覚まし、起き上がる。
夢か……。
あたりを見ると、いつも通りの自分の部屋で窓からは月明かりが入っていた。
起きたものの、エリカは先ほどの女性の叫び声が頭に残っていた。
一体誰だったんだのだろう……。
エリカはそう疑問に思いつつも、落ち着くと再び眠りについた。
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