No.67 銀髪の死神と話すことなんてないんだがっ!?
「なんでここに……??」
正気に戻ったアメリアはホワイトネメシアの王子を見つめていた。
ニト……。
前世で彼のルートを途中にしてしまった、確か。
出現が突然すぎてわけわからん。
状況を確かめたいうちは周囲を見渡す。
隣を見ると、近距離にフレイ。そのお隣には苦手なアゼリア。
そういや、さっきカオスなことになってたな。
アメリアは常にどこか遠くの暗闇の世界で、別人アメリアと同じ世界を見ていた。
幽体離脱とは異なるが、感覚はそれに近い。
それにしても……。
「フレイっ!お前、ちけーわっ!!!!」
「えっ!?理不尽っ!」
アメリアはフレイから距離を開けるよう、反対側に押す。
フレイは少々よろけていた。
そのフレイを受け止めようとするアゼリアがキラキラ笑顔で両手を広げる様子を冷めた横目でうちは見ていた。
くだんね。
それで……。
なぜ、ここにニトがいるんだ??
普通はエンドに近くなったところでその姿で現れるんだろ??
おい、公式。
なんでだよ……??
人違いではないか確認したいうちは真っすぐこちらを見つめるニトに向かって歩き出す。
彼はうちが近づいていても動じることはなく、凛とした姿で立っていた。
そして、アメリアはニトの目の前で止まる。
本当にこの時期になんでここにいんだ??
攻略対象者のお前が……。
「カンデラ……」
うちは彼の仮の名をつぶやく。
そう、彼はカンデラ。
うちとエリカを攫い、うちの記憶を消そうとした男、カンデラなのだ。
確かにニトの髪色は銀髪で、カンデラの髪色とは異なる。
しかし、輪郭や声質はほぼ一緒。
きっと、うちの指輪と同じような魔法道具を使っていたのだろう。
この王子姿は本物で、カンデラの姿が仮の姿。
だから、今の姿は彼にとって普通なんだが……。
「フレイ王子、あなたの婚約者と2人でお話してもよろしいてしょうか?ちょっと、用事がありまして」
「ええ」
「へ?」
フレイに許可をもらうなり、ニトはアメリアの右手を取り、ずんずんと歩き出す。
棟の入り口ではなく、植物園の方へ。
うちは引っ張られるままに歩いていた。
背中を見せるニトはうちの方に振り替えることはなく、ただ歩いていた。
えっ!?
手を繋いでるっ!?
キャアーーーー!!
……。
じゃなくて……。
なぁ、ニト、うちの死神だぞ??
ねぇっ?!
うち、死神と話すことなんてないんだがっ!?
しかし、ニトの行動封じを知っているアメリアは彼の手を離すことはなく、そのまま植物園に連れられたのだった。
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