No.41 キスって言葉何回言うんや
「僕とキスしよ~~??」
アメリアは調子がおかしいルイに押し倒され、身動きが取れない状況にいた。
一方、熱っぽいルイはアメリアの唇に自分の唇を寄せようとしていた。
アメリアはルイの口を手で押さえる。
「おいっ!! ルイどうしたんだっ!?」
さっきまで、いつものルイだったはずなのに。
さっきまでのルイはうちが本を読んでいたため、1人寂しかったのかうちの隣で静かに本を読んでいたはずだ。
お腹が痛いのも治っていたみたいだしな。
でも、ルイは突然うちに抱き着き、押し倒してきたのだが……。
ルイは口を押えるアメリアの手を引きはがし、アメリアの上に乗ったまま体を起こす。
「どうしたって?」
ルイはへんにょりと首を傾げる。
「いや……突然キスしようなんて言うもんだからさぁ……」
「いいじゃん、キスしたって」
「義理とはいえ、うちらは姉弟だぞ?分かってんのか?」
ルイは満面の笑みでアメリアを見る。
「うん、分かってる。でも、僕ねぇ……」
ルイが何か言いかけたとき、アメリアは床に落ちている空っぽの茶色いビンを見つけた。
あれは確か、さっきルイが飲んでいたような……。
「姉さん、話聞いてる?」
ルイはアメリアの顔を両手で自分の方に無理やり向ける。
「おい、あれ何?」
ルイはぼーっとアメリアが指で示した方を見る。
「ふぇ?」
あーこりゃダメだ。
★★★★★★★★★★
攻略対象者ハオランのいつも静かな研究室。
「う゛―――――」
自分の研究室で勉強していたハオランは席を立ち、背伸びをしていた。
……疲れた。
……あれ飲もう。
ハオランは給湯室に向かい、魔動式冷蔵庫を開ける。
いつもどおり棚の2段目へと手を伸ばす。
えーと、昨日ここに置いたような……。
あ、そっか。
ルイにあげたんだった。
残念。
大量のビンがある冷蔵庫をいじるハオランは数時間前に走ってやってきたルイにいつも飲む清涼飲料水をあげたことを思い出す。
ん?
あれっ?
しかし、冷蔵庫にはないはずの清涼飲料水はあり、もう1つの試作品のアレが減っていた。
え?
あれっ?
ハオランの顔が徐々に青くなっていく。
もしかして、ルイにあげたものって……。
ルイが大変なことになると気づいたハオランは急いで研究室を出た。
★★★★★★★★★★
ハオランは夕日でオレンジの光が入る廊下を走りながら思い出す。
数時間前。
向かいのソファに座っていた僕は席を立ち、給湯室からビンのようなものを持って、それをテーブルのルイの前に置いた。
「これ何?」
ルイはその小さな茶色いビンを手に取る。
「……これは自作の自律神経を整える清涼飲料水」
「……」
「安心して、臨床試験済みだから」
「いや、なんで僕に……」
ハオランは頬を人差し指でかく。
「……ルイがなんだか疲れてそうだったから。それにアメリア嬢はおてんばそうだから弟の君は忙しそうだなと思って」
言葉遣いの荒く行動の予測がつきづらいアメリア嬢にはルイがついていたのを僕はよく見かけていた。
ルイは笑顔を絶やしていなかったが、実際は疲れているのだろうと僕はずっと思っていた。
……家のため頑張るのもあれだけど、たまには息抜きをしてほしいんだよね。
ハオランはそう思いながらソファに座ると、ゆったりと紅茶を飲む。
ルイはそのハオランの気遣いが嬉しかったのか笑顔を見せる。
「姉さんといることはたまに疲れるけど、でも、それ以上にいつも楽しいんだよね。だから、忙しいのは別にって感じだよ。ああ、でも、これがいらないわけじゃないよ。後で飲むね、ありがとう」
「うん」
それから、僕とルイは話をしたり、僕が魔法について教えたりして別れたんだっけ?
ああ、そうだ。
で、ルイにあげたやつがきっと……。
★★★★★★★★★★
ああ、ルイ、媚薬飲みやがったな。
ルイに動きを封じられているアメリアは力を振り絞って、床に落ちているビンのラベルの文字を読んでいた。
そこには、
“媚薬 プロトモデル3 ×月〇◇日 ハオラン・ターナー”
と書かれていた。
いつ作られたかは分からなったが、製作者は確認できた。
ハオランっ。
なんてもの作ってんだ……。
ふざけんなよ……。
呆れたアメリアは力を抜いてしまった。
「ねぇ、姉さん。キスしよ?? 僕のこと好き??」
「あー、好きだー」
色気ムンムンのルイに対し、力尽きたアメリアは適当に棒読みで答えていた。
「良かったぁ。キスしてくれないから嫌われてるのかと思ったよ」
「……」
「でも、好きなのになんでキスしてくれないの?」
何回キスって言うんや。
そんなにキスしたいんか?
アメリアは頬が火照っているルイを見つめる。
別に減るもんじゃないし、キスして済むんだったら……。
「姉さん、僕のことじっと見つめてどうしたの?? キスしたいの??」
「ん。キスをしてもいいかなってな」
「え!!ホント!!」
アメリアがそう答えると、子どものように無邪気に喜ぶルイはアメリアにグイっと寄せる。
バンっ!!!
キスをしそうになったとき、扉が勢いよく開く音が聞こえた。
「ルイっ!! 目を覚ませ!!」
思いっきり扉を開けたのは媚薬製作者ハオランだった。
ゲーム内でも見ることは少ない珍しい大声で叫んでいた。
あー、あぶね。
諦めてたからキスしそうだったじゃねーか。
この野郎。
アメリアは主犯のハオランにブチギレていた。
「おいっ!! ハオラン、ルイを離せっ!! てか、なんちゅうもん作っとんや」
「……ごめん、僕のミス」
さっきより小さな声に戻ったハオランはアメリアのところへ駆け寄り、ルイを引きはがす。
「え?? ハオラン、突然どうしたの?? 僕とキスしたいの?? でも、僕は男とキスする趣味はないけど。でも、したいのなら……」
「……僕もないよ。さ、早く部屋に戻るよ」
「姉さん、おやすみ前のキスしよ」
「ハオラン、連れてけ。それで後で、説明しろよ」
「……うん」
アメリアの殺気を感じながらハオランはルイを引っ張り、アメリアの部屋を出ていった。
アメリアが1人なって数分後、買い物に向かわせていたティナが帰ってきた。
「ただいま戻りました。ん?? アメリア様?? そのような顔をされてどうしたのですか??」
「あ?? 変な顔をしてるのか??」
「変な顔というより……あ、アメリア様??」
ティナの言葉をスルーして、アメリアは駆けてめったに使わない鏡を覗く。
さっきのルイの色っぽさを思い出すとなんか……。
クソっ!!
乙ゲーの攻略対象者だからカッコイイのは当たり前だっ!!
そして、うちがにやけるのは仕方ないっ!!
そうだっ!!!
そう言い聞かしアメリアはパンと頬を叩くと、読みかけにしていた古代魔法の本を読み始めた。
★★★★★★★★★★
次の日、正気を戻ったルイとミスを犯したハオランはアメリアに対し、必死に謝った。
アメリアはルイは当然かのように許した。
しかし、ハオランに対してはニヤリと口元を上げ自身の研究を手伝うという命令を与えた。
もちろん、無期限の。
ハオランはアメリアに反抗すれば大体予想がついていたので、すぐに首を縦に振った。
その媚薬事件からは日常っぽいものに戻った。
アメリアはバットを作るため、電気分解的なものを魔法で行えないか探し、メインキャラたちはなんだかんだアメリアの研究を手伝っていた。
うちとしては平穏すぎて逆に少し怖かった。
予想で令嬢(特にアゼリア)が何かしらうちに仕掛けてくると思っていたのだけれど。
平穏は一時は続いた。
エリカの主魔法が使えると分かったあの日までは。
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