No.40 虫よけと肉壁
第3章入ります。
「僕と婚約していただけますか?」
「聞かなくても分かってんだろーがよ」
アリーナのど真ん中で座り込んでいるアメリアはボソッとつぶやく。
「……みんな見てんだけど、答えてくれるかな?アメリア?」
フレイはリングケースを開け、アメリアの返答待ちをしていた。
本来、この状況下で婚約指輪を貰えるのはアメリアではない。
このフレイの隠しルートは主人公のステータスをある程度上げないと出てこない。
あ、この乙ゲーにはステータスが存在するんだよな。
現在はアメリア自身ではそのステータスは見えないが、ゲームプレイ中は当然確認することができた。このゲームには乙ゲーにも関わらず、RPG的な要素が入っていた。
たしか、うちの姪っ子がこの隠しルートを教えてくれたんだっけ?
アメリアは姪っ子恵莉香が教えてくれた情報を思い出す。
プレイヤーが一旦フレイルートをクリアすると、もう一度プレイしたとき主人公がこの学園に入学してくる前から開始され、ステータスを上げることができる。
ある程度上げ、学園に入学し、フレイルートを進めていくとなぜか知らんが主人公の精神力がアップし、植木鉢のシーンでゾフィーを詰め寄ることができる。
その時、現れるのがトマスだ。
アイツ……設定上現れる仕組みだったのか……。
まぁ、それで主人公とトマスがデュエルすることなり、主人公が勝つとフレイがこうやって婚約指輪を……。
あれっ?
これ、もしかして、うちがルートに乗っかっている??
アメリアがフレイの顔を見てボーっとしていると、フレイはアメリアの耳に口を寄せ小さな声で話す。
「ねぇ?? 陛下から話聞いてんじゃないの?? ねぇ??」
「バカっ。近い」
アメリアは寄ってきたフレイから離れる。
そして、アメリアはフゥと息をつき、胡坐をかく。
なぜか悪役令嬢のうちが主人公の行動をしてるんだけどな。
仕方ない。
これも、あのおっさんとの約束だしな……。
「あー、はいはい。あんたと婚約してやるよ」
「うわ。上から目線」
「うるせぇ。あのおっさんがこの婚約受けたらイベントをパスしていいって言ってたんだよ」
「そうですか。よっと」
「おいっ!! なにするんだっ!!」
フレイはアメリアを横抱きし、お姫様だっこ状態になっていた。
突然すぎるお姫様だっこにアメリアは暴れる。
「おいっ!! おろせっ!!」
「えーと、僕とこのアメリア・ホワードは今日婚約します。皆様、よろしくお願いいたします」
フレイはアメリアの言葉をドスルーし、観客席中に聞こえるような大きな声で婚約を宣言した。
お姫様だっこから解放されないアメリアは観客席に目を向ける。
衝撃過ぎて、泣く令嬢、腰を抜かす令嬢、叫ぶ令嬢と令嬢たちは様々な反応をしていた。
見渡していると、とても鋭い視線を感じる。
その視線の方向にはこの乙ゲーのアメリアとは別の悪役がいた。
殺気を漂わせるアゼリアは一癖ある睨みでアメリアを見ていた。
あー。
これはヤバいな……。
多分、他の令嬢も仕掛けてくるかもしれないが、きっとアゼリアが一番仕掛けてくるだろうな……。
アメリアが嫌な未来を想像していると、フレイが見ているのに気づいた。
フレイはアメリアと目を合わすと、笑顔を見せた。
「これからよろしくね、虫よけさん」
「おい、ぶっとばすぞ」
いいように利用されたアメリアはフレイを思いっきり睨む。
そして、心の中でこう決意した。
よし。
戦いシーンの時はフレイを絶対肉壁にしてやる。
ぜってーい、に・く・か・べ!!!!!!!
★★★★★★★★★★
デュエル終了後、ルイは厄介な令嬢や子息たちを撒いた義姉アメリア、エリカ、ハオランとともにアメリアの研究室に来ていた。
いらない人も付いてきたけど……。
ルイは姉の婚約者となったフレイを横目で見るなり、本を読もうと椅子に座ったアメリアに近寄る。
「姉さん!! 陛下の呼び出しの時の話ってこのことだったのっ!?」
ルイは突然の婚約発表に動揺を隠せず、アメリアに対し、思わず大声を出す。
「んあ?? そうだが??」
「なんで僕に教えてくれなかったの……?」
ルイは大好きなアメリアの婚約に目を潤ませる。
僕は姉さんと過ごし始めて1週間強。
僕は強くて優しい姉さんが好きになっていた。
ん?
展開が早い?
黙って。
好きになるのはいつでもいいでしょ?
フレイ王子やエリカさん、ハオランさんに対して厳しい態度をとる姉さんは僕にはとっても優しい。
(ルースやクリスタに対しても優しいっぽいんだけどね)
姉さんは僕のことを本当に信頼してくれてるし、だいたい僕と過ごしてくれてる。
そんな姉さんのことが大好きなんだけど……。
アメリアは横に立っているルイの顔を見上げる。
「あー、陛下が言うなってな」
「身内なんだからいいじゃん。僕は誰にも言わないんだし」
姉さんはきっと僕に言うこと忘れてたんだ。
「ああ……そうだな」
アメリアは適当な返事をする。
やっぱり。
ルイはアメリアに背を向け研究室を飛び出した。
「おい!! ルイっ!! どうしたっ!! 腹が痛いのかっ!?」
ルイはアメリアの声が聞こえていたが、無視した。
アメリアは突然走り出したルイを心配するが、追いかけない。
姉さん……。
なぜ、今の流れでお腹が痛いになるの??
そう思いつつ婚約について教えてくれなかった姉さんに苛立ってルイは彼の研究室に向かった。
★★★★★★★★★★
「……ルイ、それで僕のところに来たんだ」
「うん、そう」
飛び出したルイは先に帰っていたハオランの研究室に来ていた。
ルイとハオランはなんだかんだ仲良くなっており、義姉の実験を手伝いたいと思っているルイはハオランに勉強を教えてもらっていた。
過去のデータを見ていたハオランはソファに座るルイにお茶を出す。
「……アメリア嬢に言ってもらえなかったことがそんなに嫌だったんだね」
「うん……」
「……僕の予想だけど、言ったらもしかすると危険があるから反対されると思って言わなかったんじゃないかな??」
「え?? どういうこと??」
ハオランの予測がいまいち理解できなかったルイは首をひねる。
「……えーと、君もこの前聞いたでしょ?婚約は解消したけど、フレイはまだアメリア王女のことが好きだって」
「うん……」
「で、フレイは王子だし、顔もいいし、能力があるもんだから、モテるでしょ」
「うん…」
「……フレイはアメリア嬢を虫よけに利用するつもりだと思うよ」
「うん……って!? 虫よけ?? 姉さんがっ!?」
「……それで陛下が関わってんでしょ?? 多分、希少なバリア主魔法保持者のアメリア嬢をとどめておきたいと思惑も入っていてるし、婚約する代わりとしてアメリア嬢は陛下に対してなんらかの条件を出していると思う」
「え? E? え?」
情報量が多すぎて頭がパンクしているルイは目を回していた。
「まぁ、つまり、今後フレイの熱烈なファンがアメリア嬢に何かするかもねって話」
「ああ……それで言わなかったのか……」
「……あくまで僕の予測だけどね。こんなデメリットをおってまで婚約するって一体アメリア嬢は陛下にどんなお願いをしたんだか……」
そうつぶやくハオランに対し、ルイは黙って一時床を眺めていた。
★★★★★★★★★★
数時間後。
古代魔法に関する本を読んでいたアメリアは自室にやってきたルイとともにお茶をしていたのだが……。
「ねぇ~、姉さん」
「んっ?? なんだ?」
色気を醸し出すルイはアメリアに迫まり、ソファにアメリアを押し倒す。
「僕とキスしよ~~??」
顔を赤らめるルイはアメリアの上に乗っかり、アメリアに顔を近づける。
なんでこうなってんだっ!!!
忘れている方もいるかもしれませんが、海賊騎士テウタは苗字がムラカミです。
ムラカミは村上なんですが、これは村上水軍からネーミングしました。
私が純粋に村上海賊が好きってだけです。
因みにテウタは実在した女海賊です。
女王とも呼ばれていたらしいです。
今後のテウタの活躍をお楽しみください。
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