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元ヤン王女の研究記録  作者: せんぽー
ファイル2 スタートからの全力回避
38/136

No.38 はっ!! アメリア様!! それでは下着がっ!!

「あなた、本当に令嬢ですか??」


トマスは呆れた顔でこちらを見る。

一方うちは指をポキポキと鳴らし、準備をしていた。


「あー、いちおうな」


ケンカ以外は今の所どうでもいいと思っているうちは面倒なあまり適当に答えた。


「初めてお会いした時から思っていましたが、あなたは本当に令嬢にふさわしくないとおもうんですよ、いくら庶民上がりとはいえ」


彼は剣を右手に持ち、30m離れているこちらに向かってゆっくり歩く。


「だから、ぜひこの勝負であなたが負けたら、退学していただきたい」

「ふーん」


相手から条件を出してもらえたので、思わず悪い笑みが出てしまった。


「じゃあ、お前が負けたら、ゾフィーとの婚約を破棄しろよ」

「はぁっ!?」


うちのとっておきの提案にトマスは目が飛び出そうなぐらい見開いていた。

そんな驚くこともないでしょ。


「何言ってるんですかっ?! 婚約はあなたには関係ないでしょっ!?」

「ああ、婚約に関することを私が誰にも頼まれなかったらな」

「はっ、まさかっ!!」


悟ったであろうトマスは2階の観客席に目をやる。

その観客席にゾフィーはトマスと目を一瞬合わせるが、反射的に逸らした。

準備万端にしたうちは1歩前に足を進ませる。


「まぁ、お前が負けなければそんなことする必要ないんだがな」

「はっ、お前みたいな女に僕が負けると思うか?? しかも、お前は剣すら持っていないじゃないか」

「今のうちにはバット(相棒)がいないからな。それにお前なんかに剣なんて使う必要がないと思ったんだよ」

「はぁっ!?」


十分にトマスに挑発すると、腰を低くし構えた。


「フィールドはこのアリーナ内のみ。ルールは自分の魔体が死んだらでいいんだな」

「ああ」


うちと同様にトマスも構える。

席がほとんど埋まるほどいる観客は静かになり、アリーナには外にいる小鳥のさえずりが聞こえた。

アメリアは唾を飲み込む。


ピ――――――


スタート音が鳴った瞬間、嫌な予感がし避けた頬には剣で切られた傷ができていた。

傷を触るとリアルな血が手についていた。

周りを見渡すと、風の音が聞こえるだけ。

トマスの姿はない。

はぁ??

魔法アリなの??

アメリアは拳を構えたまま、あたりを観察していた。


聞いてないんだけど??



★★★★★★★★★★




「姉さん、大丈夫かな」


アメリアの義弟ルイはパソコンを操作し、壁からテレビのようなものを出した。

隠れていたテレビを起動させ、アリーナの様子を映していた。


「姉さん、ちゃんと魔体に移れたんだね……」


ルイは席を立ち、アメリアの体が寝ているベッドの端に座る。

そして、アメリアのサラサラの髪を触れた。


「姉さんの髪キレイだね」


幸せそうに笑うルイは徐々にアメリアに顔を近づけ、お互いの唇がつきそうになるまで寄せた。


「全てがキレイ……」

「どうもって、ルイ。……何してんの」

「おはようございます、ルイさん。ん?」

「……フレイ、どうしたの?僕、入れないんだけど」


ルイがアメリアにキスをしそうになった瞬間、ドアが開き、フレイとエリカ、ハオランが現れた。


「あ、姉さんが最近死神3キャラって呼んでいる人たちだ」

「……君たち姉弟、最近意味が分からないけど失礼そうなことをぶっちゃけるね……で、ルイ。それ今どういう状況??」


呆れ顔を見せるフレイは部屋に入り、アメリアと近距離のルイに向かって歩いていく。

ルイは何事もなかったように笑顔を見せる。


「姉さんの瞼に小さなごみがありまして、それを取っていたのですよ」

「ふーん、その割にはなんか距離が近くなかった??」

「とても小さなごみでして、姉さんの瞼を傷つけないように慎重に取っていたのですよ」

「お2人とも、テレビを見てくださいっ!! アメリア様がっ!!」


エリカの声とともに、何やら不気味な雰囲気を醸し出していたルイとフレイは画面を見る。

その画面には顔に傷をおったアメリアが移っていた。

アメリアの表情からは何が起こったか理解できていないようだった。


「……ねぇ、ルイ」

「……はい」

「アメリアに魔法使用可能なこと教えた??」


画面を見つめるルイは冷や汗をかいていた。


「……いいえ」

「エリカ、観客席で見ていた時、さっきトマスがアメリアに何か言ってなかったけ??」

「はい。アメリア様が負けたら退学しろと」


フレイは顔が青白くなっていた。




★★★★★★★★★★




フレイはエリカの言葉にフリーズしていた。

アメリアが負ければ……。

嫌な予感しかしなかった僕は予測できるこの先の未来を脳内で再生する。

もし、アメリア嬢が負ければ退学。

つまり僕はアメリア嬢と婚約しても虫よけがいなくなるわけだから、きっと強気な令嬢たちが迫ってくる。

僕はアメリア王女の()どうこうではなくなってしまう。


「ルイっ、お前はなんてことを……」

「あ、アメリア嬢がバリア使った」

「え??」


珍しく慌てていたフレイはルイから画面に目を移す。

そこにはアリーナを囲むような立方体バリアがあり、アメリアはバリアの上で胡坐(あぐら)をかいていた。


「はっ!! アメリア様!! それでは下着がっ!!」


女性のエリカはいつもの異国風のドレスを着ていたアメリアを心配していた。

それに対しアメリアと過ごす時間が多いルイが答える。


「あ、大丈夫だよ。エリカさん。姉さん、最近ドレスの下に手作りミニズボン穿いてるから」

「……アメリア嬢、さすがだね」


ハオランはアメリアの自分がそういった行動をするだろうと予測して作っていたことに呆れていた。




★★★★★★★★★★




「さぁ、どうしようか」


天井近いバリアの上でうちは姿を現した対戦相手を見つめる。

トマスが何か叫んでいたが、バリアをしている上に、アゼリア軍団の声援とブーイングがうるさすぎて何も聞こえなかった。

反撃をかましてやろうと考えていたうちはトマスが叫んでいる時間で作戦を練ることにした。

もし、うちがバリアを解除したら当然さっきのようにやられる。

でも、ずっとバリアを張った状態だとトマス(アイツ)に反撃できない。

じゃあ……??

うちはバリアの上で立ち上がり、バリアを徐々に収縮していく。


「うわぁっ!!」


突然、小さくなり始めた立方体バリアにトマスは驚き、バリアを剣で壊そうとする。

しかし、バリアは傷つくことなく、トマスに迫っていた。

バリア、つよっ。

バリアの強さに改めて実感し、自信を思ったうちはバリアの収縮速度を上げる。


「このっ!!」


追い詰められるトマスはうちの近くで強風を起こし、その風がうちに襲い掛かる。

バリアの高さはそれなりにあったが足場が小さくなっていたため、構えていたにも関わらずうちはバランスを崩してしまった。


「おっ?」


いつの間にか空中に体が投げ出されており、目の前には天井が見えていた。

あ、やべ。

落ちた。

バリアの高さも低くするんだった。

落ちている瞬間、うちは地味ミスに後悔していた。

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