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元ヤン王女の研究記録  作者: せんぽー
ファイル2 スタートからの全力回避
32/136

No.32 僕は姉さん以外のは見たことがありません

「なんやねん」


思わず出た関西弁。

令嬢の格好に関西弁はなんともミスマッチングである。

植木鉢を落とした令嬢を責めていたうちは突然現れた貴族らしき男を冷たい目で見ていた。

顔をしかめた男はずんずん歩いてアメリアの目の前まで来た。


「僕はサイネリア国のエクセター家のトマスだ」

「……」


いかにも偉そうな男に冷たい視線を送る。

エクセター家……確かホワード家(うち)と同じ公爵家だ。

しかも、サイネリア国か。

やっかいだな……。

サイネリア国、植木鉢令嬢を脅した張本人アゼリア王女の実家があるところである。


「それで?」


本来の役職が悪役令嬢のうちは練習してもないのに勝手に出てくる悪魔のような顔をして、挑発気味に言ってやった。

それに対し、上手く引っかかるトマス君。

トマスはうちの態度にイラっとしたのか、こちらを睨む。

いや、うちもお前の態度に腹が立ったんだが。


「今すぐ彼女を解放しろ」

「あんた、さっきの見てなかったのか?? それとも、ふざけているのか?? その子何しようとしたかわかっているのか?」


イベントをまともに見られなかった上、自分のしたいことをトマスに邪魔されているのでうちは爆発寸前のところまで来ていた。

しかし、先にトマスの方が一足早かった。


「君は女性なのに分からないというのかっ!! ドレスを着た彼女を2階から降ろす時、何も配慮をしなかっただろうっ!! 下に人がいるのにも関わらずだっ!!」


トマスは声を荒げ、うちの胸倉を掴む。

うちも反射ですぐにトマスの腕を掴んだ。

配慮ってなんだ。

アイツは下手をすれば殺人行為をしようとしたんだぞ。

トマスの言った意味がさっぱり理解できなかったため、令嬢の方へ目を向ける。


「配慮って、あっ……」


彼女はドレスだ。

たとえ、下に何を穿いていようと中を見られるのは……。

アメリアはトマス()の言っている意味に気づいた。

そして、胸倉を掴まれていたトマスの手を退()ける。

アメリアはその時ちょっと反動で体が揺らいだが、持ち直した。


「お前……そんなにみんなが見ているわけないだろ?」

「みんな注目していたではないかっ!!」


熱くなっているトマスに対し、死んだ魚のような目を向けてあげていた。

そのくらいいいじゃん。

見て減るもんじゃないだろ??

背後で呆然として立っていた彼らに聞いた。


「エリカ、彼女の……見えたか?」

「いえ??」


エリカはにこやかに答える。

はぁ良かった。

主人公が見たとか言ったらなんかうちのエリカに対するイメージ変わってしまいそうだったわ。

はいっ!!

次っ!!


「フレイ、お前見たか?」

「いえ?? 見てませんよー」


コイツも営業スマイルしやがって分からんっ!!

怪しいがな……。

まぁ、これでうちは有利になってくるんだけど。


「ルイ、お前は……」

「僕は姉さん以外のは見たことがありません」


真顔のルイは結構な人がいる前で言い放った。

ルイの爆弾発言にエリカとフレイは思わずルイの方に首を素早く向けてくる。

そこにいた人たち全員、うちとルイに驚愕の目を向けていた。

適当なことをいうルイに軽い溜息をつく。


「ルイ、変なウソはいらん」

「ホントじゃないですかっ!! 僕が姉さんの部屋に行ったとき、入っていいって言うもんだから入ったら……」

「あー?? そういや、そういうこともあったな」

「おい、お前!! 話がずれてないかっ!!」


トマスはうちに詰め寄ろうとしていたが、うちの体はフッと後ろから腕を引っ張られ抱き寄せられていた。


「トマス殿、今回はこのアメリアが君の婚約者に申し訳ないことをした。そのことに関して僕が謝罪する。本当にすまない」


トマスは王子であるフレイに突然謝罪され、うっとなり驚いていたが、さすがサイネリア国の公爵家。

へこたれることもなく、引き下がりもしなかった。


「殿下、頭をお上げください。今回殿下は何もやっておりません。やったのはこの女です。今回のことはこの女が地面まで頭を下げたとしても許せません」


気の小さい男だな、トマス。

だから、顔もぶさ……。

と心の中でトマスの悪口を言っていると、トマスはあることを言い出した。


「だから、私はこの女にデュエルを申し込みます」

「えっ」


フレイはそのトマスの発言にドキリとしているようだった。

なんでそんな顔するんだよ。

ケンカだぞっ!!

久しぶりのケンカだぞ!!

うちがワクワクしているとフレイが尋ねてきた。


「アメリア、なんでそんなに目を輝かせているの?」


何に怖がっているのかさっぱりであったが、フレイはうちを見て怯えていた。


「久しぶりにケンカ…できるからさぁ……」


興奮気味で、声が震えていた。


「え?? アメリア?」

「おう!! とうますぅ!! そのケンカお受けしよう!!」

「何言ってんのっ!! 令嬢はケンカしないっ!!」


フレイが何か言っていたが、主人公を助けれなかった男の言葉はスルースルー。

今はケンカができるんだから、それを楽しまないとな。


「僕の名前はトマスです。かわいくひらがななんかで表さないでください。あとケンカじゃないです」


そんなアメリアの反応に完全に冷めていたトマスだった。

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