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元ヤン王女の研究記録  作者: せんぽー
ファイル1 スタイルチェンジからのジョブチェンジ
17/136

No.17 ジョブチェンジ

あれから、

アメリア王女が重度の病になったことを国民に知らせた。

多くの国民の悲しみの声が聞こえたが、それ以上に励ましの声があった。

そんな中飛んでアメリアのところにやってきたのが…、


「「アメリア!!」」


2人はアメリアの部屋の前に立って、話しかけていた。

しかし、返事はない。

確かに2人に教えようと思ってはいたが。

アメリアはずっと黙っている。

そのかわり、部屋の前にいるティナが2人に言った。


「アメリア様は陛下のご命令により使用人以外会うことが許されていない状態にあります。申し訳ございませんが、お帰りくださいませ」

「そんなっ……」

「最近、来なかったのってそういうことだったのか……」


2人は嘆きつつも、国王の命令には逆らえず、踵を返した。

そして、ティナは2人が廊下にいないことを確認すると、アメリアの部屋を叩く。


「アメリア様、行きましたよ」


うちはいつも異なる服、いかにも異国人という格好で部屋の外へ出る。


「ありがと。行くぞ」

「あの指輪つけてます??」

「ああ、つけてる」


指輪というのは例の変装道具。

この魔法道具は非常に便利で、付けるだけでヘヤースタイル・カラーが変化する。

指輪なので装着していても違和感は全くなく変装が必要なうちにもってこいの道具であった。


「桜色のままですよ」

「すぐには変化しないらしい。あ、ほら。30秒はかかるみたいだな」

「すごいっ!! 白い髪のショートカット。かわいいですね」

「はいはい、お世辞はいらねーよ。さぁ、アイツが帰る前に捕まえるぞ」

「ほぼ、私の仕事なんですがね」


うちはティナと言いあいながら、その人の所へ向かった。




★★★★★★★★★★




「アメリア、私たちに隠していたのか……」

「かもね。せめて、僕らだけにでも言ってほしかったな」

「そうだね」


テウタとルースは2人で廊下を歩いていた。

この2人はあれから非常に成長していた。

身体的にも、社会的にも。

テウタはルースよりは低いがそこそこ身長があり、すらっとした体格になっていた。

その見た目からは全く分からないが、筋肉もかなりついており、さすが海賊のトップと言えるくらい強くなっていた。

また、王女直属海賊としても活躍していた。

無断で領海に侵入したものを取り締まり、妖精から輸入したものをルースたちと協力して輸出していた。

その活躍のせいか、性格も少し変化していた。


「アメリアの部屋の窓から侵入したら会えるんじゃないか??」

「バカか」


アメリアに似たのかもしれない。


「いい方法だと思うけど」

アメリア(あっち)の意識がない状態だと会話もできないだろ」


ルースももちろん成長している。

身長はアメリアと同じくらいだったのが、今はもう優に超えていた。

かわいいかった顔も少し男らしくなっていた。

まぁ、彼もアメリアと同じく12歳でまだまだ成長段階なため、さらに身長は伸びる、はず。

また、あのアメリアの提案があってからクルス家は襲われることもなく、むしろ、地位を着実に上げていた。

現在、妖精とコミュニケーションをとれるのはルース、クリスタ、そして、ルースたちの父親だけ確認されている。

他の人もいるかもしれないが、世間に知られているのはこの3人であった。

そのため、妖精にしか手に入れることができない品物を得たい人が殺到し、クルス家は商人として成功していた。

2人は今、このとおり仲がよいが、はじめはぶつかることが多かったが、アメリアが仲介に入ることで徐々にビジネスパートナーとしてうまくやっていけるようになった。

そのため、テウタとルースはアメリアにとても感謝しているし、アメリアのためならと忠義まで尽くしていた。

しかし、突然の知らせにショックを受けていた。


「アメリアがいないとうまくやっていける気がしないんだけど……」

「僕もさ……」


2人は完全に自信を無くしていた。

そのとき、


「テウタ様~!!」

「??」


テウタは自分の名を呼ぶ声が聞こえたので、振り返るとティナが走ってきていた。


「はぁ、はぁ。お見苦しいところ申し訳ございません。テウタ様、少々お時間ありますか??」

「はぁ、あるけど。大丈夫?」

「私のことはご心配なく……では、私に付いてきていただけますか??」

「ええ。じゃあ、なんか呼び出しくらったから、行ってくるわ。バーイ、ルース」


テウタはビジネスパートナーに手を振る。


「ああ。多分、陛下だろう。また、明日な」


そして、テウタとルースは王城入り口で別れ、テウタはアメリア専属メイドのティナに付いて行った。




★★★★★★★★★★




「やあ、テウタ」


私、テウタはアメリアの専属メイド、ティナに付いて行くと、ある部屋に案内されたんだけど……。


「誰……??」


奥のソファに座る人に自分の名前を呼ばれたが、誰だかさっぱり分からなかった。

その人は異国人っぽい服をまとっていた。

聞いたことのある声なんだけどな……。

私がじっーとその人を見つめていると、その人が話し始めた。


「誰とはひどいな。うちだよ、うち。アメリア」

「まさか。アメリアは桜髪でしょ??」

「まぁ、そうだけど。今、変装中」

「はぁ…?? まぁ、その口調で話すのはアメリアぐらいしかいないし、ティナがいるってことは……」

「ええ、そうです。アメリア様です」

「なんだぁ……って、何ウソついてんだよっ!!」

「すごい。ノリツッコミ」

「国民にまでっ!!」

「仕方なかったんだよ。まぁ、説明するから座れよ」

「もう」


テウタは怒りつつも、素直にアメリアと向かいのソファに座った。


「それで、なんでこんなことになってんの??」




★★★★★★★★★★




「あー。そうことかぁ。めんどくさいことするね。普通に婚約者として行けばいいのに」


うちはテウタに変装しなければならない経緯を全部説明した。

テウタは部屋に入ってきたときはがちがちで真顔だった。

少し、顔色悪かったかもしれないが……。

しかし、異国人がうちだと分かるとパッと表情が変わり、嬉しそうだった。


「うーん」


テウタは疑問に思っていることがあるようだった。


「なんだ、テウタ??」

「なんで、私だけに教えたの?? ルースもいるのに」

「そりゃ、アイツ、うちと同じ学校に来るからさ。知ってたら、付いてくるだろ」

「なるほどね」


テウタはうんうんと頷く。


「ひっつきむしが厄介なのね。分かった。これは私たちの秘密??」

「ああ、誰にも言うなよ」


うちがそう命令すると、テウタは立ち上がる。


「言わないよ。じゃあ、仕事もあるし帰るね、アメリア・ホワード。バーイ」

「はいはい、バーイ」


そういうと、颯爽とテウタは帰っていた。

出ていく時の彼女の背中はどこか楽し気に見えた。

なんか、思ったけど、テウタチャラくなってないか??

まぁいいけど。

全ての仕事が終わったうちはふーとため息をついた。


「いよいよ、ウィンフィールド国(あちら)に行くんですね」

「お前もだろ」

「ええ」


ティナはウフフと笑う。

うちのジョブチェンジは完了し、明後日にホワード家に引っ越す日が待っていた。

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