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元ヤン王女の研究記録  作者: せんぽー
ファイル5 CからのV
127/136

No.127 実験体

「えっ??」


僕が彼女を守ろうと手を広げて魔法攻撃を待ち構えていると、彼女は僕の頭上にいた。

桜色の髪をなびかせ、立方体のバリアの上を飛ぶアメリア王女。

久しぶりに見た姿だった。

彼女は追う村人に対し、森へと姿を消していった。


「はっ!!」


僕はこんな所で立ち止まっている場合じゃない。

僕が彼女……殿下を助けないと。

たとえ、僕の母の仇でも。

僕も彼女を追って森へと走り出した。




★★★★★★★★★★




必死になって逃げていたら、いつの間にか知らない場所というかシー族の村の入り口とは反対であろう場所に来ていた。

なぜ、そんなことが分かるのか。

それはこの場所がさっき来た場所とは様子がかなり違っていたためである。

追っ手こそ後ろを振り向いても姿は見えなくなっていたが、自分がどこに行けばよいのか分からない状況だった。

追っ手を撒いて一安心し、うちはバリアから降りて地面へと足をつける。

地面は苔が覆っており、その下からは太い木の根っこがうねうねと生えていた。

ここは道だったのか……??

歩いている場所は人が歩く分には結構広く、人4人が並んで歩けるような幅の道だった。

この道をある行った先に何があるのかと奥を見るが、白い霧のせいで何も見えなかった。

ただ、この先に何かがあると感じる。

うちの直感が言っているだけだけど。

少し歩きづらいその道を歩いていく。

すると、徐々に奥が見えていった。

ん??

よく見えず気になったうちは滑らないよう注意し走り出す。

そして、奥にあったものの前で足を止めた。


「なんだこれ??」


目の前に現れたのは苔だらけの遺跡。

大きな一枚岩が堂々と立っており、その中央には何やら文字が書いてあった。

その文字は見たことがないへんてこりんな字。


「殿下……」


振り向くとシー族の本来の姿に戻ったサンディが立っていた。


「なんで、お前がここに……」

「殿下、帰りましょう。こんなところには……」

「あらあら、王女さん??」


背後から女性の声が聞こえた。

くるりと体を半回転させると、赤い髪の女性が立っていた。


「王女さんがこんなところにねぇ……」

「お前は……」

「なんで、お前がここにいるっ!!」


声を掛けようと瞬間、うちの隣来たサンディが赤髪の女性に叫んだ。

威嚇しているように見える。

サンディは女性に対し警戒心を高めていた。


「あらあら、男の子がいたのね。気づかなくてごめんなさい」


燃えるような赤色の口紅をつけた女性はこれまた赤色の女優帽をかぶっていた。

つばの長い帽子をかぶっているせいか女性の瞳は見えない。

口元は微笑んでいるように見えた。


「私はそんな悪い人じゃないからそんなに警戒心を持たなくてもいいのよ」

「あ、あんたは誰だよ」

「私?? そうね……なんと名乗ればいいかしら」

「……紅の魔女」


赤髪の女性の返答を待っていると先にサンディが答えた。

サンディは女性を穴が空くぐらい睨み付けている。


「紅の魔女??」


紅の魔女ってあの紅の魔女か??

前に立っている女性からは何も感じない。

魔力を持っているのであれば多少オーラを感じるはずだが。


「あら、私の通り名を知っているのであれば話は早いわね」

「なぜここにいる!!」

「そりゃあ、自分が治した患者さんの様子を見に来たのよ」

「患者?? その非人道的なお前が治した患者はこのシー族の村にはいないはずだが」

「あら、私の目の前にいるわよ」


サンディが紅の魔女と呼ぶ彼女は真っすぐ腕を伸ばした。

私に指をさすように。


「なっ」

「お前は……まさか……」

「王女様は確かに私の患者だったわ。この手で王女様の目を治したもの」

「貴様っ……」

「その時犠牲になった人がいたけれど……」


紅の魔女はこちらに向かってゆっくりとヒールの靴の足を進めだす。


「あの人はあなたの母親だったわね、サンディ」

「お前が母をっ!!!」


サンディは怒りを抑えれず、紅の魔女に向かって走り出す。

魔法が使えるのかサンディは構えていた。

しかし、余裕がある彼女はニヤリと企みを含めた笑みを浮かべる。


「邪魔よ」


紅の魔女がそう呟いた瞬間、走っていたサンディはぱたりとその場に倒れた。


「サンディっ!!」

「じゃあ、行きましょうか」

「は?? どこに行くってんだよ」


何を言ってんだ、コイツ。

目の前でサンディが倒れているというのに。

放ってどっかに行く??

行くバカがどこにいるっていうんだ。

彼女はそのまま足をこちらに進めていく。

高いヒールは滑りそうな苔の地面を踏んでいた。


「そりゃあ、私の家に決まっているでしょう??」


また、紅の魔女が口を開いた瞬間、うちの視界は真っ白になった。

何も見えない。


「実験体801498番、さぁ、戻りましょうか」


体の力が抜けていくうちはその紅の魔女の声が聞こえただけだった。

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