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元ヤン王女の研究記録  作者: せんぽー
ファイル5 CからのV
126/136

No.126 さいごのこと

「最期……??」

「ああ、最期さ。君は12年前に母上が急な病気で亡くなったと教えてもらっているだろう??」

「はい」

「あれは嘘なんだ」

「嘘……??」

「本当は君の母上はある人の病気を治すために命を失ったんだ」

「えっ……」

「あの日のことを全て話すよ」


そこからメガネのっぽが語り始めた。

うちは仕方なしにその話に耳を澄ませる。


12年前。

シー族の村にある1人の女とその女が抱えた赤ん坊がやってきた。

その女はフードを深くかぶり、顔のほとんどが見えなかった。

口には真っ赤な口紅。

それだけが見えていた。

抱えていた赤ん坊は大人しく、目を覚ましていたが泣くことはない。

そんな結界を破り、入ってきた見知らぬ女性を私たちは別れてしまったシー族の子孫と判断し、招き入れた。

女性は決して素顔を見せることはなかったが、

メガネのっぽはその彼女に指を指す。

指の先は確かにうちに向いていた。

いや、うちを巻き込むなよ。

そんなこと身に覚えがないぞ。


「うち、重大な病気なんて患った覚えないのだけれど。だいたい、ここに来るのは初めてだ」


いつだってうちは健康で、病気という病気をしたことがなかった。熱が出たのは毒に侵された時ぐらいでそれ以来何もない。

それにシー村(ここ)に来るのは初めて。

サンディの母親になんて会ったことがない。


「そうでしょうね。あの時の殿下はまだ赤ん坊でしたので、記憶がないのは当たり前でしょう」


赤ちゃんの時の記憶。

12年前。

覚えてもいないし、この世界を舞台にしたゲームを知っている前世のうち(うち)でもアメリアの赤ちゃんのことなんて、知らない。知るはずがない。


「だいたいどこが悪かったのかよ。うちは元気だぞ。不自由ない」

「そりゃあ、そうでしょうね……」


メガネのっぽはうちに向かって無理した微笑みを見せる。


「しかし、赤ん坊だった殿下は当時障がいを持っていた。その証拠として殿下の名前に刻まれています」

「名前……??」

「ええ。そうです。殿下、疑問にお持ちになったことはございませんか?? 自分のミドルネームに」

「C……」


アメリア・C・トッカータ。

ミドルネームに値するCの文字。

聞いたこともないけれど、Cの意味なんて知らない。


「殿下には『C』というミドルネームがございますが、殿下の姉君には別のミドルネーム。しかも、省略されたものではございません」


確かに、うちのねーちゃんたちはみんなちゃんとした(Cもしっかりしているとは思うが)ミドルネームを持っていた。過去の王族たちから全て取ったものであったが、うちと同じミドルネームを持つ者は……。


「ユリアナ元女王……」


彼女とうちは唯一同じミドルネームだったはず。

でも、なんで大おばあちゃんから取ってるのだろうか。

他の人でも良かったのだけれど。






「Cの意味……それは『目の見えない』という意味を指すCeCe」






「なっ!?」

「先生っ!? それは本当なんですか??」

「ああ、本当だ。ここにいるほとんどの者が知っているよ」


メガネのっぽがあたりを見渡すと、周りにいたシー族の者たちはコクコクと頷く。


「殿下の見えなかった目を治すため、サンディ、君の母上が犠牲となったんだ」

「そんな……」


真実を伝えられたサンディは顔こそ見ないが、震えた声から動揺を隠せないようだった。

すると、長老がうちに真っすぐ指をさす。

その指には迷いがないようだった。


「さぁ、サンディ。お前の母親の仇だ。捕らえろ」


長老は顔を俯かせているサンディに声を掛ける。

しかし、サンディがうちの方に正面を向けることはない。


「サンディっ!!」

「僕はそんなことできませんっ!!」


サンディは背を向けたままうちの前で両手を広げる。


「僕は殿下を捕えることなんてできません……」

「ならば、他の者あやつを捕えろっ!! 今すぐにだっ!!」

「なっ!?」


長老の声でシー族たちがこちらに向かってくる。

捕らえようと必死の目。


なんだよ……これ。


その瞬間、頭上にバリアを作り、ジャンプしてそのバリアの上に乗った。

高さがあまり足りなかったのか、シー族の者が下からバリアの上に乗ろうとする。

さらに高いバリアを右側に作り、飛び乗る。

そして、先ほど作ったバリアを解除。


「王女が逃げるぞっ!!」


背後からはそんな声が聞こえたが、気にせずバリアを作っては壊し、シー族の森へと入っていった。

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