No.120 紅の魔女
「紅の魔女……」
「ご存じないですか?? 耳にはきっとしたことはあるとは思いますが……」
「ああ。知ってる。やつは人間を裏切った魔導士なのだろう」
紅の魔女。
本名が分からない謎の女。
一昔前の彼女は崇められていたが、今では世界的に嫌われる人物である。
本によると彼女は一般的な魔導士だったらしいが、学生のあるとき才能が開花したのだという。
基本主魔法は1つ(エリカのような例外はあるが)であるが、彼女はどんな分野でも等しく均等に魔法を扱うことができた。
それも全て弱くなく他の学生よりも強かった。
どのジャンルでもあっても技術は最高峰。
まさに優等生であった。
だからと言って彼女の人間性は悪くなかったらしい。
そのため、魔王討伐の時はかなり活躍できたはずだった。
しかし、
彼女は人が変わったように人間たちを裏切った。
でも、彼女は魔王側についたわけではない。
平気で人を殺し、その死体で自由に実験していた。
また、捕らえた人を実験によって何人も殺したそう。
その様子は狂っている様子はなく、冷静に淡々としていた。
それを見たものは奇跡的に生きて帰ってくることができたが、紅の魔女に捕まったほとんど者はこの世から消えていった。
そんな行為を繰り返した彼女に恨みを持つものは多い。
恨みを持つ中にはシー族もいる。
シー族も紅の魔女の被害者の者が多く、シー族のみんなは自らで紅の魔女を捕えようとしていたらしい。
「でも、始めはうまく行かなかったらしくて……」
「上手くいかない??」
「ええ。私たちは隠れて生活するといったことをしていましたので、紅の魔女にはこの村は来ないだろうと思っていたらしく……」
「実際は来たのか……」
「ええ。それも軽々と」
リッカが聞いた話によると紅の魔女はこの村の結界を容易く破り、多くの人を連れ去ったそう。
もちろん、その連れ去れた人は永遠に帰ってくることはなかった。
それからシー族は結界を強化し、そして、魔女狩り集団へと変貌していった。
「それが今ではシー族の仕事なったのか」
「ええ。そうなんです。その仕事を兄はやっていたんです」
「仕事って言っても兄貴は何をしていたんだ??」
「主な仕事内容は紅の魔女の情報収集だったのですが、ある日を境に消えました」
リッカは静かにカップを取ると、紅茶を口に運ぶ。
「消えた……兄貴はその時1人だったのか??」
「ええ。数人で動くこともあるのですが、情報収集となると人数がいると私たちの居場所が紅の魔女に知られてしまいかねませんので」
「なるほどな……」
手が寒かったのでティーカップを両手で持っていたが、冷めた紅茶を飲むのも嫌だったのでうちは紅茶をぐびっと飲む。
まるでビールを飲んだかのように「はぁー」と息をつくと、あることに気づいた。
「そういや、お前らシー族は自分たちの村に他の者の侵入を避けているが、うちを入れて良かったのか??」
うちは首を傾げるが、彼女は「何も心配はいりませんよ」と笑顔で答える。
「アメリアさんはホワード家の方なので皆さん許してくれます」
「許してくれなかったらどうするんだ?? シー族は世間的に見れば暗殺集団だろ」
「その時は私が止めますので逃げてください」
その後もリッカとシー族について話したり、逆に王都のことについて話してあげたりと楽しい時間を過ごした。
泊まるところがないんだと言うと、「大丈夫です。兄の部屋がありますので、そこでお眠りくださいませ」と優しく答えてくれた。
うちは外で寝るサンディに毛布を掛けてやると、リッカの言葉に甘えてリッカの兄貴の部屋を借りてベッドの上で目を閉じた。
そして、朝。
うちはある声で目を覚ますことになる。
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