No.100 預言者
女王に憑りついていた悪魔たちが去って行ってから、倒れた女王の手当をすぐに行い始めた。
始めは妖精の家来たちは人間のうちらを嫌そうに見ていたが、マティアがすぐに指示をするとテキパキと動き始めた。
どうやら女王は疲労が溜まり過ぎて倒れたらしく、一時眠っていたら回復に向かうだろうと医師が言っていた。
悪魔に憑りつかれていた女王を助けたうちらは時間も時間だったので仕方なく王城で一晩過ごすことにした。
意外にも妖精たちはうちらのことを嫌がる様子は少なくなり、うちらは城下町に出て、妖精語を話せるルースとクリスタに翻訳してもらいうちは妖精たちと会話を少ししてみた。
因みに光魔法を使えるエリカは悪魔に憑りつかれていたということで女王の様子を見ていた。
光魔法は回復魔法としても有効らしい。
城下町で食べていると、妖精たちが集まりいつの間にか祭り騒ぎになっていた。
道の傍で楽器を弾き、その音楽に合わせて道の中央でダンスを踊る。
みんな楽しそうだった。
うちはお腹がとんでもなく空いていたからひたすら食べていたが。
アメリアは口いっぱいにし食べているとふと思ったことがあった。
昨日まではこんなところにいたら攻撃されるだけだったのにな……。
妖精たちに「人間が悪い奴じゃない、仲良くしよう」と誰かが言ったのだろうか??
女王が眠っているのに一体誰が……??
「アメリア」
うちがそんなことを思いながら口に食べ物を突っ込んでいると、後ろから声を掛けられた。
後ろをちらりと見るとそこにはフレイが立っていた。
フレイはにっこりと笑っている。
どうしたんだ??
「どうしたんだよ」
うちがそういうとフレイはうちに向かって手のひらを出してきた。
彼は優しくうちに微笑む。
「せっかくなので踊りませんか??」
「はぁ……??」
「食べているばかりでは太るよ」
「ああ、踊ろう」
確かにうちはバカ食いをしていたけれど、別に太りたいわけではない。
お腹が空いていたし、なんせ妖精たちが作った料理がおいしかった。
手が止まらなかった。
と心の中で言い訳してながら、フレイの手を取り立ち上がる。
そうして、うちとフレイは多くの人が踊っている広場に行き、向かいあって踊り始める。
ダンスなんて久しぶりだ。
ダンスはよく王女の時に踊らされていたけれどそれ以来まともに踊っていない。
でも、体は覚えておりフレイに合わせて足は踊る。
上手く踊れるか心配だったうちは一安心し下に向けていた顔を上げる。
そこには温かな笑みを見せるフレイの顔があった。
「お前……こんなところでうちと踊っていていいのかよ。アメリア王女のことはいいのかよ。他のやつに取られるぞ」
その王女もうちなんだけど。
うちがそう強く言うと、フレイは寂しそうな笑みをする。
「……僕はアメリア王女のとこは好きだよ。会えていないけれどね。でも、最近僕の頭の中はアメリアのことばっかり」
「アメリア?? 王女のことを考えているっていつも通りじゃねーか」
「違うよ……。アメリア、君だよ」
「はぁっ?!」
アメリアは驚きのあまり思わず大きな声を出してしまう。
一瞬、周りの視線が集まったが一瞬だった。
その瞬間、ダンスをしていたフレイは足を止め、うちの肩に頭をのせる。
「!?」
予想もしていないフレイの行動にうちの頭はらしくなくパンク。
いつものように殴ることはなんだかできず、かと言って他にどうすればよいかも分からずうちはフレイの手を握ったまま静止していた。
「アメリア王女は失いたくない。でも、会える自信がない。そのせいなのかな、君のことを考えてしまうのは」
フレイはうちの耳元で小さな声で言う。
アメリアはフレイの手を離し、フレイの頭もそっと撫でた。
「ああ。そうだよ。多分そうだ。お前は最近うちと良く過ごしているからな。そう思うのも仕方ない。でも、諦めんな。お前はアメリア王女が好きなんだろ?? 愛してるんだろ??」
自分のことを自分で押すのはちょっと変な気分になったが、フレイがアメリア・ホワードを好きになるのは非常に困る。困りごとしかない。
好きになった瞬間、乙女ゲームが前世通り進み始めたら??
うちのことを好きなったフレイが主人公エリカのことを好きなったら??
めんどくさいことばかりだ。
そんなのはまっぴらだ。
「自信を持てよ。お前ならきっとアメリア王女を助けられる」
ウソだけれど。
「会えるさ」
これもウソ。
アメリアはフレイにウソを言っていることに少しモヤモヤを感じた。
フレイの頭を撫でるうちは真っすぐ先に見えたカラフルなイルミネーションの中にあった1つの電球がそっと消えているのが見えた。
★★★★★★★★★★
フードを被った金髪の女性は端の方で少女と少年を見守っていた。
広場の中央で踊っているのはアメリアとフレイ。
彼女はその2人を見ていた。
「あのぅ……。預言者様」
「その呼び方はやめて。普通に私の名を呼んで」
「あ、はい」
隣にいる男性の妖精に「預言者」と呼ばれた女性の声は見た目にあわず低くかった。
女性は男性の呼びかけに返答はするが、顔を向けない。
「あのぅ、マティア様。なぜ、今反人間派の妖精に人間のことをお話しなされたんですか??」
男性はもじもじしながらもマティアに聞く。
マティアの目はアメリアたちからそらされることなく真っすぐな瞳で見つめていた。
「それはね、タイミングによって未来が全て異なってくるからよ」
マティアの返答に男性ははぁと言い理解していなさそうな顔をする。
「私は未来が見えるけれど、運命は変えることができないみたい」
マティアはそう小さく呟くと黙って男性とともにその場を去っていった。
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