終末の刻を凛蝶(アゲハチョウ)は舞う
わたしが確かに覚えている、最も新しい記憶。
ずっと傍にいてくれた親友が、いつも見せる無邪気な笑顔でわたしの肩を押した事。
親友の小さな背中は、解け落ちゆく空を支えているようで些か重荷に見える。しかしその姿にわたしは、一抹の希望を抱き呼び掛けた。「後は任せたよ」と。
親友に声は届いたようで、振り向きざまに何かを叫んでいた。声は聞こえなかったが、その笑顔には涙を僅かに浮かべていた。だから何を言っていたのか分かる。
きっと彼女も「後は任せたよ」と言っていたたのだろう。
そこからわたしの視界は光に包まれ、それからの事はあまりよく覚えていなかった。
ぼんやりとした意識の中、時が進んでいく感覚だけをただ感じ取っていた。