第2話
「は!ゆ、夢か?」
背中にはぐっしょり汗をかいていて、少し気持ち悪い。
「はぁ〜、またこの夢かよ…」
妙にリアルなこの夢を週に1回くらいのペースで僕は見る。
きっかけは、両親が死んだ次の日くらいから突如急にだ。
当初は、あまりに現実的な人の死骸や血を見て、嘔吐してしまう程だったので、慣れって怖いなぁと思ってしまう。
僕は、都内の高校に通う高校2年生で、自分でもごく普通の学生だと思う。
まぁ、少し特殊な育ち方をしているとは思うけどね。
ゲームやアニメは好きで昨日も夜遅くまでやり込んでいた。
「さてと〜、今は何時かなぁ。ご飯食べなきゃ」
とりあえず、汗をかいたしシャワーも浴びたいなぁと思いながら時計を見た。
時計は8時の針を少しすぎたことを示していた。
「は?」
一瞬、思考がフリーズする。
そして、
「やっべぇぇぇぇ、遅刻する!!!」
と、今の気持ちを誰に伝える訳でもないが叫ぶ。
そして、速攻で、ワイシャツに着替えて、食パンを口に挟み、家の鍵を閉め、一心不乱に走った。
家から学校までの距離は、歩いて30分程なので、頑張れば間に合うと思い、普段、使わない足の筋肉をフルに稼働させた。
そして、キーンコーンカーンコーン
小学校から何年もお馴染みのチャイムが流れてきた。
最後のラストスパートで体力を振り絞り、教室に駆け込む。
――――――ガラガラ、ドンッッ
勢いよく扉を開いた瞬間、教室にいたみんなが驚きこちらを見た。
まぁ、毎度のことだな…
俺はそう思い自分の席に向かった。
「おい、黒神。おまえ、またギリギリの時間だなっ!」
担任の先生が俺を見てそう怒鳴ってきた。
「えーっと、ギリセーフでしょうか?」
「んー、今日のとこはお前のその汗の多さに免じて許してやらぁ」
荒々しい口調で、僕にそう宣言したのは担任の浅井先生。
30半ばのおっさん?で、生徒の面倒見も良くて、生徒からよく好かれている先生だ。
俺も家庭に色々あったからよくお世話になったので、そう邪険には出来ないし、邪険にするつもりもない。
そして、朝のホームルームが終わったあと、2人の生徒が僕のところに寄ってきた。
「ま〜た、ギリギリかよ。少しは改善しょうと思えよな。」
そう言って僕の肩に手を回してきた彼は鈴木俊といって、イケメンで性格も良くて、小学校時代からの腐れ縁みたいなやつだ。
「仕方ないだろ。なんか、目覚めが悪くてさ。」
「はいはい。分かってますよ。どうせ夜更かししたんだろ?」
「いや、3時には寝たし!健康だし!」
「えぇー、聖也君。それって健康って言わないでしょ」
そう口を挟んできたのは、僕の少ない友人の駒井薫で、見た目は、背が小さくて小動物を連想させるような可愛らしい風貌をしている。性格は穏やかで、めちゃくちゃ優しい。
「まぁ、いいだろ?今夜、オンラインマッチしよーぜ!」
「うーん。じゃあ、3回戦までだよぉ?」
その瞬間、そのセリフしか聞いてなかったクラスメイト立ちがざわめく。
「薫、言い方が誤解を招くからやめぃ」
「ま、二人ともイチャつくのはいいが、授業の用意しろよ。」
『いや、イチャついとらんわ!!』
と、綺麗にハモってしまったので、また俊にどやされてしまった。
「さぁーて、1時間目は数学か。くそっ、重い。あまりにも重すぎる。帰ろっかなぁ」
俺がやるせない表情でそう呟いた次の瞬間に不思議な現象が起こった。
クラスの床に何やら青白い文字で魔法陣のようなものが展開されていて、輝いてきたのだ。
これには見ていたクラスメイトもパニックになり、騒乱状態となった。
かくゆう、俺も何がなんだが理解出来ずに、呆然と立ちつくしていた。
魔法陣から発している光は徐々に強くなり、俺たちの不安は大きくなっていく。
そして、目の前が真っ白になって俺の意識は落ちた。