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僕と俺の異世界転移  作者: 八咫烏
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第1話



ふと、気づくと僕はそこにいた。


そこは戦場のような場所だった。

幾万もの兵士たちが陣を囲んで人ならざる者たちと対峙している。

それは恐らく、異形のもの、人々に恐怖を植え付けるような風貌の者達であった。

戦場には無数の屍が倒れており、真紅の血は広大な大地を染めるほど流れている。


夢の中で僕は、僕の風貌をした誰かを見ていた。


身長は180くらいで、身体はとても引き締まっているように見えた。

とても、端正な顔立ちをしていて、男でも見惚れそう顔をしている。

多分、モデルと言われても頷いてしまうレベルだ。

艶やかな漆黒の髪は血塗られており、その表情も過度な疲労を覗かせており、今にも倒れそうだが、鋭い切れ長の目は目の前の敵を殺さんと睨みつけ、歯を剥き出しに嗤っていた。



そして、兵士の中でも馬に乗った隊長らしい人が「やつを討ち取れば我らの勝利も同然。全ては自由のために!我らの正義のために!女神様のご意向のままに!! かかれぇぇぇぇぇ!!!」

そう言って多くの兵士が彼の元に襲いかかってきた。


「ふっ、人間風情が!この程度で俺を殺せると思うなよ!」


そういった瞬間、彼の周りから無数の闇の塊が兵士たちに向かっていき、激しい轟音とともに着弾した。

彼らがいた場所には彼らだったものが横たわっていた。


「くっ、これほどとは…」

兵士たちの亡骸を見た指揮官の男が歯軋りしながらその男を見た。


「クハハハ、実に愚かだなァ、人族などという下等種族が俺のような高貴な存在に勝てるわけが無いだろうがよォ」


刹那、どこからか聖なる光のようなオーラを纏った男が現れ、僕の方に向かって叫んだ。


「そこまでだ!これ以上の犠牲を出すことは俺が許さん」


そういった男は白銀の鎧を着込み、獅子の鞘をした、刃こぼれ1つない純白の剣を両手で構えている。


「ほォ、それは聖剣か…ということは貴様が今回、女神が選んだ勇者ということか。」


「そうだ!かの魔王軍を倒し、人々に安寧を届けるために女神様に使わされた。ここで、貴様を討つ!もう決して犠牲は出さない!」


「お前なんぞにこの私が負ける訳がないだろう。」


「ならば、いまここでそれが間違っていることを証明しょう!!いくぞ!」


そういって勇者とその男がぶつかり合った。


男はもう使える魔力も底を尽きたので自身の腰に携えている剣を取り、勇者に斬りかかっていった。


がきぃぃぃぃん!


2つの剣は火花を散らせながら、金切り音を出した。


2つの剣は激しい剣戟を交わす。

それは、まるで美しい舞踏のようだった。

2人の卓越した剣技が凄まじいスピードで繰り返され、周りの兵士たちも見入ってしまうほどのものだった。

僕も、息をするのを忘れてこの戦いに見入ってしまっていた。

だが、お互い決め手になるような一手もなく、千日手のようだなと僕は思った。


「くっ、人族の癖に中々やるではないか。流石は勇者様だな。」と、端正な顔を歪めてそう言った。


「そちらこそ。我が聖剣と剣技をここまで耐え抜いたのはあなたくらいですよ。賞賛に値します。」

勇者の男も、額から流れる汗を拭って返答した。


「さて、遊戯は終いだ。我が絶対の一撃を受けるが良い!!」


「いいだろう。我が聖剣で受けて立つ!!」


両者の身体から濃密な魔力が流れて、一気に剣に収束されていく。

男の剣は漆黒と、血のような紅色が混ざったような禍々しい色をしていて、対する勇者の剣は神々しいほどの純白を纏っている。


「これで死ぬがよい! 邪龍破斬剣!」


「止めだ!聖神龍星剣!!」


2人の剣が交わった瞬間、凄まじい程の轟音が起き、弾かれた力の余波が衝撃波となって周囲を襲った。

砂煙が立ち込める中、人々はどちらが勝ったのかを確認するために、目を凝らしてみていた。


「ぐっ、こんな所で……この私が負ける訳が…」


男は全身から血を吹き出してなお、勇者を睨みつけていた。だが、視界は朦朧としており、今にも倒れそうだった

勇者の方は………無傷でそこに立っていた。


「な、何故だ!どうして貴様は無傷なのだ。勇者ァァァ」


「済まないねぇ、元々こちらはパーティなんでね。衝撃の瞬間、障壁を張ってもらったから君だけがダメージを負ったのさ。1VS1なんて、誰が言ったんだい?」


「勇者様!お怪我はありませんか!?」


勇者の元に、金髪の髪をした、煌びやかな衣装を着た少女が現れた。

その顔はまだ赤い頬にあどけなさが残っており、勇者を慕っているように見えた。


「あぁ、無事だよ。麗しの聖女よ。君のおかげで助かったよ!ありがとう」


「い、いえ勇者様をお助けできて私は嬉しいです」


聖女と呼ばれた少女は気恥しそうに嬉しそうな顔をしていた。


「き、貴様らのような、下等な種族に負けるなど……クソがァァァァ」


男は、怒りで胸がいっぱいになり、声が震えるのを抑えきれずにいた。


「うるさいよ、君は少し眠れ」


瞬間、首筋に衝撃を受け、男の視界は暗くなっていく。





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