酒と煙草と硝煙と
薄汚れた廃屋の壁に背中を預け、だらしなく足を投げ出して床に座った。
部屋の隅に転がっている、ラベルの褪せた酒瓶を一瞥すると、尻ポケットからスキットルを引っ張り出して一気に呷る。
ウィスキヰが喉を流れ落ちていく中で生まれた熱が、胃袋の底で渦巻くように溜まっていく。
空になったスキットルを叩き付けるように脇へ置いて、吸い殻が溢れた灰皿に構う事なく、胸ポケットから最後の煙草を取り出し火を着けた。
溜め息のように煙を吐き出し、吸い殻で出来たピラミッドの上に灰を落とす。
もう何も残っていない。
この煙草と一緒だ。
後は燃えて尽きるだけ。
そのままぼんやりと煙の消えゆく先を見つめ、決して掴めないそれを思考の停止した頭の中、嗅ぎ慣れた香りだけを辿った。
ほんの少しの花と、精神を擦り減らす嵐の日々。
もう一つポケットに入れていたスキットルを取り出し、予め用意していた大量の錠剤を飲み込む。
緩やかに意識が朦朧となっていき、覚束ない動きでホルダーに入れていたハンドガンを抜いて銃口を口に咥えた。
安全装置を外し、引き金に指をかける。
「人生足別離」
最後に聞いたのは、何かが破裂するような音だった。
「人生足別離」は、于武陵の「勧酒」から引用しました。