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怪盗ダイヤモンド事件

パラテス舞踏会。この舞踏会はパラテス学園が開催する舞踏会である。多くの著名人も賛同する一大イベントなのだ。マッセには今までは関係ないイベントだった。呼ばれるのはⅠ組とⅡ組の生徒だけなためⅤ組のマッセには縁が無かった。しかし今年は違った。

「俺が警備?」

カレンに生徒会から警備の依頼が入ったと聞かされて思わず嫌な顔をした。

「これは絶対よ。生徒会長の命令なんだから」

「でも警備なんて必要ないんじゃないのか?」

カレン含めクライヴもアリスもなにを言っているんだといわんばかりの顔をしていた。

「あなたもしかして怪盗ダイヤモンドの事を知らないの?」

「なんだそれは」

マッセは首を傾げていたがカレン達は次はあきれたといわんばかりの顔となった。

「丁度10年前に現れた怪盗で毎回この舞踏会に来て展示されてる魔法のガラスの靴を奪っては返していくのよ」

「なんで毎年無意味なことをしてるんだ」

「それは不明よ」

正直乗り気ではなかった。もしもその怪盗やらと対峙したことになったらまず勝てない。

弱い警備員なんて誰も欲しがらないだろう。

しかしやらないわけにもいかなかった。カレン、アリス、クライヴはみんなⅡ組以上なために舞踏会に参加しなければならない。

「明日の放課後に開かれるから。よろしくね」

そっとマッセはため息をついた。


ここは生徒会棟と呼ばれる棟で。生徒会室が三階にあり二階に舞踏会会場。一階はエントランスになっていた。エレベーターが設置されており生徒会が優遇されているのがよくわかる。

マッセは制服でそれ以外ドレスやタキシードなためマッセは少し浮いていた。なぜか全員からは冷たい目線が浴びせられる。いや、理由は分かっていた。マッセはⅤ組だからだ。この学園には組で差別しない人もいるが大半は下の方のクラスは見下される。だが別にマッセは仕方がないことだと受け止めていた。よく見て見たら他にも変な生徒がいた。おそらく新聞部と放送部だろう。片方の生徒はメモを片方の生徒はビデオカメラを持っていた。おそらく学校新聞や学校の昼休みに流れるパラテス学園ニュースのネタが欲しいのだろう。

「警備やる気あるの?平和ボケた顔をしちゃって」

ふと声の方向に目をやるとそこにはカレンがいた。髪の毛は軽くパーマがかかっていていつもと違う感じがした。背が高くも低くもないカレンだがドレスのおかげなのかどこか大人びて見えた。

「なにジロジロ見てんのよ」

「いや、綺麗だなと思って」

「なっ...!!」

カレンは顔を赤らめる。そして恥ずかしくなったのかマッセから目線を外す。

「やぁ、君がⅤ組の探偵部の子かい?」

「あなたは誰ですか?」

「バカっ!!アリスの父君であるデウス=アレキウスさんよ!!」

「アリスさんのお父さん?」

「別に構わないよ、娘から君の話はよく聞いているんだよ。推理がとても冴えるってね。是非怪盗ダイヤモンドを捕まえてくれたまえ」

「はぁ...」

そう言うとデウスは手を前に出してきたのでマッセは握手をした。するとなぜかカレンもデウスもひどく驚いた。

「ばかっ!!手の甲と手の甲を合わせるのよ」

「なんだよそれ!!」

庶民のマッセからとったらそんな貴族流の挨拶など知るはずもなかった。

デウスが高笑いをする。

「君は面白いなぁ、そのうち私の家に遊びに来てくれ」

「はぁ...」

そう言うとデウスはその場を離れていった。

周りでは色んな人が入れ替わりながら挨拶をしていた。中には別に手の甲を合わせずに一礼だけですませている人もいた。しかもこの学園の生徒会長だなんて。礼儀をわきまえろ。


そしてそこから10分ほど経った時に前にあるステージで生徒会長が司会を始める。

「皆様、今日はよくぞお集まりくださいました。ここにいる我が校の生徒は皆希望に溢れる夢がある生徒達です...」

生徒会長の最初のスピーチは割と短めに終わった。スピーチとスカートは短めにってか...

そして音楽がかかり始めると色んな男女が踊りはじめていた。マッセはすることがないために魔法のガラスの靴を見ていた。

見た感じただのガラスの靴だったがよく見たら中の方になにかが彫られていた。

ショウケースに飾られていた。とても綺麗だ。

むき出しで置いてあるのが怖いがそもそも怪盗とやらが入ってくるだけでも苦労しそうだな。

そしてその後はダンスの邪魔にならないように部屋の端っこをうろちょろしてたら遂にその時は来た。


いきなり魔法のガラスの靴ショウケースの後ろに煙が舞う。魔法のガラスの靴を確認できない。そして煙が収まるとそこには黒いタキシードに黒いハット帽子そして黒いズボン。全身黒のいかにも怪盗といった感じの奴が現れた。

仮面は半分が白く半分が黒いとても不気味な仮面だ。そして怪盗ダイヤモンドはそのままガラスの靴を奪って逃走。

「待て!!」

クライヴは急いで追いかける。その後をマッセも追う。放送部と新聞部も急いで追いかけて来ていた。向かってるのはB棟?後ろからカレンとアリスも追いつく。

「止まりなさい!!」

カレンが氷魔法を放つが当たらない。

そしてクライヴが自己強化魔法を使いなんとか怪盗ダイヤモンドに追いつき腕を掴んだが振りほどかれ銃を構える。

銃声とともに出たのは網だった。それに捕らえられクライヴは身動きがとれなくなっていた。

「大丈夫か?」

「俺はいいから早く奴を追え!!」

そして3人で追って行く。怪盗ダイヤモンドはB棟の4階にある1番奥の教室に入る。その10秒後くらいに部屋に入る。

「観念しなさい!!」

カレンが勢いよく扉を開けて入るがそこには誰もいなかった。

「え?」

一同に静けさが宿る。


「とりあえず魔法の調査をしますね」

「お願いアリス」

魔導式を展開して部屋一帯に魔法が行き渡るとアリスは驚いた顔をする。

「ありません...魔法の反応が」

一同も驚くがマッセが冷静に言う。

「窓から飛び降りて浮遊魔法を使って宙に浮いて念動魔法で窓を閉めたんだろ。さっき外でカレンが攻撃魔法を使用してサイレンが鳴らなかったって事は外なら攻撃魔法を使用しても大丈夫なんだろ?」

「そういうことね...私がドレスなんて動きにくいものじゃ無かったら捕まえることができたのに!!」

急いで出て行った新聞部と放送部と入れ替わりで生徒会長が入ってきた。

「どうだった!!」

「すいません、会長。捕まえる事はできませんでした」

「そうか...」

少し遅れてクライヴが来る。

「生徒会長かクライヴは空を飛んで行く人を見ませんでしたか?」

「すまない、あまり暗くてな」

クライヴの方を見るが同じといったような感じだった。そしてこの事件の幕は閉じた。


次の日の放課後になるとカレンが足をドタドタと鳴らしながら部室に入ってくる。

手には何やら持っている。

「ねぇ、あんた達。パラテス新聞見た?」

「いや、見てないけど」

「これ見てよ」


第93号

探偵部怪盗ダイヤモンドに敗れる


昨日の舞踏会で現れた怪盗ダイヤモンドは見事に魔法のガラスの靴を奪った。それを必死に追いかけた探偵部一同であったが捕まえる事はできなかった。


「普通の新聞じゃないか?」

「なにをそんな怒ってるのですか?」

「敗れたって!!確かに昨日は負けたわよ。でもこれから調査して真相を突き止めたら私達の勝ちでしょ?」

「もう別にいいんじゃないか?」

「ダメ!!私の気が収まらないわ」

こうなったカレンはなにがなんでもやる時だ。

仕方なく3人ともそれに付き合うことにした。

「まぁ、少し気にかかる所はあるんだけど...」

「なによ」

マッセは口を開こうとしたが止まる。これはもしかしたら言ってはダメなのではと思ったからだ。

「この件は俺に一任してくれないか?しっかりと解決するから」

「なんでよ、真実は教えてくれないの?」

「場合による。俺の予想通りだったら言えないかもしれない」

「なによそれ...まぁいいわ!!あなたに任せたわ!!魔法のガラスの靴奪い返してきなさい!!」

「あぁ、すまないな」

そう言うとマッセは部屋を出てまず向かったのは舞踏会の会場だった。

最初に解くのはどうやって現れたかだ。エントランスには人がいて入れない。ならば生徒会棟の3階で待ち伏せていたか舞踏会で誰かが変装したかだが...

まず確認をとったのは生徒会の方だがこっちは舞踏会が始まった時にはみんな会場にいたとのことだった。

ならば変装か?確かに煙をまいている間に変装はできるけどもダンスをしているのだから不可能に近い。ダンスの相手に気づかれずに変装することは不可能だ。そもそも煙が発生したのは魔法のガラスの靴の周りだけだったわけだし。

ならどうやって入ったんだ?いや、簡単だ。転移魔法を使ったとしか考えられない。

でもピンポイントで魔法のガラスの靴の前に来るなんて相当な集中力が必要だ。そんなことが学園の生徒に可能だろうか。

マッセは1つ1つ可能性を潰していく。


次に向かったのは図書室だった。これは単なる調べもののためだった。

様々な魔法の種類と効果が載っている本を手にとり調べ始める。

「あった...分身魔法...」

そしてそのページをじっくりと読み込むと次の目的地へ行く。


「なんだい用って。忙しいんだけどね」

「探偵部の事だが怪盗ダイヤモンドについて調べてるんだ。去年とかの映像ってあるか?」

「あぁ、そっちの棚にあるから勝手に持って行ってくれ。ちゃんと返せよ」

勝手に棚から取る。DVDに怪盗ダイヤモンドというタイトルが書かれていたものを取っていく。一応10年分まとめて持っていく。

昨日の分はあるかと聞こうとしたがやめた。

見る感じ忙しそうだったからおそらくまだ出来ていないのだろうと悟った。

そして新聞部で撮っていた写真ももらうと生徒が自由に使っていい視聴覚室でもらった資料を見ている。

「やっぱりか...」


そして次に向かったのは生徒会室だった。

すでに勤務が終わっていたのだろう。残っていたのは生徒会長だけだった。書類にハンコを押していっている。

「なんだい?僕は忙しいんだけどね。何回も来られても困るよ?」

「いえ、これで最後です」

「ほう...」

生徒会長が手を止めてマッセの方を向く。

「ズバリ怪盗ダイヤモンドはあなたですね生徒会長」

生徒会長は不気味な笑い声をあげる。

「正解だよ。どこから僕をマークしていたのかい?」

「最初の調査の際生徒会長はクライヴよりも前に入ってきた。それはおかしい。この棟からB棟まで色んな道のりがあるけども1番近い道を通ってきたと考えるのならクライヴと合流しているはずなのに生徒会長は1人で来た。助けないなんてありえないんですよ、おそらくですけど生徒会長は屋上へ逃げてそのまま部屋に入って来たのでしょう。運が良かったのは屋上から降りて来たのをクライヴに見られなかった事ですかね」

「なるほどな...一応君の推理を聞かせてもらおうか」

「はい...まず出現した方法ですけど。生徒会長がやってるとなれば簡単な話です。生徒会長は生徒会室にいた。そして転移魔法を使用した」

「あんなピンポイントでいけるはずないだろ?」

「はい、ですけどアイテムを使用していたのなら?どこかにピンポイントで降りれるようなアイテムがあれば充分じゃないですか?」

「なるほど...それでそのアイテムとは?舞踏会室からは何も見つかっていないぞ」

「魔法のガラスの靴そのものです。あそこには文字が刻まれていました。おそらくあれが魔導式。そしてあのマントやらなんやらのどれかとリンクしているはずです」

「なぜそう思った?」

「この話をするためにはある前提を言わなければなりません」

生徒会長は頬杖をつきながら話を聞く。その顔は余裕の表情だった。

「怪盗ダイヤモンドは歴代の生徒会長達でもあります、まず最初におかしいのは10年間も怪盗ダイヤモンドがいること。もし1人でやってるのであれば生徒会長は7歳か8歳の時には怪盗ダイヤモンドってことになりますがそれはありえません」

「なんで歴代の生徒会長だと思ったんだ?別に他の人とやってるという可能性もあるだろ」

「あの魔法のガラスの靴は生徒会のものなんですよね?それを毎年返ってくるからといって盗まれているのに魔導警察が動かないのはおかしいと思いました。そこで思いついたのは生徒会の物を生徒会が盗んでいるのだから魔導警察が動くわけはないと...おそらく元々魔導警察やら先生やらには事情を説明してあるのでしょう」

「見事だね、君には才能があるよ」

才能はない。ただ推理ができるだけだ...

「そしてこの前提を元になんでマントやらハットやらが転移アイテムのリンク先だと思ったのかですが...歴代の生徒会長達の映像を見てておかしな点があったんです。それは裾の長さだったりがあっていないのにも関わらずその服を着用していること。これには必ずこの服ではないという理由があると考えましたそれが答えです」

「なるほどな。だけどまだあるよな?」

「あの時間違いなく生徒会長はステージ上にいたという事ですか?」

「あぁ、そうだ」

「それは簡単な話です。分身魔法を使ったのです、生徒会長は挨拶をする時に手の甲を合わせなかった。それは分身魔法が解除されてしまうからですね?」

「どっちが分身魔法か見抜いていたのか」

「えぇ、クライヴが怪盗ダイヤモンドには触れていましたからね、それにステージ上にいるのが分身じゃないと生徒会長が屋上に行けませんしね」

「割と調べたようだね...そう分身魔法の方では魔法は使えない」

「以上が僕の推理です」

生徒会長は黙って拍手をしていた。そして口を開く。

「いやぁ、見事だね。そんな君に一つ提案がある」

「別に元々誰かにチクる気はありませんよ?」

生徒会長は首を横に振る。

「君、生徒会長にならないかい?」

マッセは驚きを見せなかった。ある程度分かっていた事だからだ。生徒会長は毎回指名制なため生徒会長がこの人と決めた人が生徒会長になることが出来る。この怪盗ダイヤモンドが始まってからはおそらく正体を見破った人に勤めてもらうことにしていたのだろう。

「いえ、僕は忙しいのは嫌いなんでね」

「探偵部で振り回されているみたいだけどね」

「それに僕は魔法が使えないので来年の怪盗ダイヤモンドは出来ませんよ」

「君なら頭を使えばできるだろう」

「魔法の使えない生徒会長など誰も望んでませんよ」

少しガッカリしながら「そうか...」と呟く。

「君は息苦しいだろう。頭の回転は異常に早いが魔法が使えないせいで他の人に遅れをとる。たかが魔法が使えるやつらに」

「僕は一切そんなこと思いませんよ。人の才能を羨むのはある程度努力をしている人間です。僕は一切努力をしていないのに才能がどうちゃら言う資格はありませんよ」

「そうか...まぁ気が変わったらまた来てくれ」

マッセが出て行こうとしたが何かを思い出したかのように言う。

「あっ、あとすいません...」

「ん?」


マッセが部室の扉を開けると3人は待っていた。

「どうなったの?」

そしてマッセは後ろに隠していた物を見せる。

それは魔法のガラスの靴だった。

「おぉー!!」

「よくやったわね!!さすが頭脳担当ね」

「さすがですマッセさん」

マッセには探偵部があれば充分だろう。ここはマッセの才能と呼べる所を褒めてくれそれを活かしてくれる。

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