おばけ騒動事件
久々の投稿ですいません
今日の天気は雨だった。マッセは雨はどこか好きだった。理由などは特にないが空を見てボーッとしてるだけでも飽きなかった。
雨雲から光が見えて数秒後に音が鳴る。
「きゃーー!!」
カレンは思わず叫んでしまった。あまりこういうのに弱いタイプには見えないのだがエリートにも思わぬ弱点があるということだろう。
「別に怖かったわけじゃないんだから、驚いただけよ」なんていうテンプレ的なセリフを吐いていたがまぁそっとしておいてあげるか。
「そろそろ帰宅の時間ですね」
アリスがそんな事を言うとカレンは血相を変える。
「もうちょっと一緒にいましょうよ、ね?」
「でも依頼もないのに...」
怖いから一緒にいてくださいと言えばいいのに。マッセは帰る準備を進めていたらカレンの願いが叶ったのか扉が開く。
「す、すいません...あのぉーおばけがいたんです!!」
勢いよく扉を開けた生徒の第一声がこれだった。まだ帰らせてはくれないようだ。
話を聞くと彼女は弓道部で練習終わりに部室の方へ向かっていると窓から歩く人影が見えたらしい。マッセは人影が見えたのなら別におかしくないと言ったのだがそうではなかった。とても大きな背で胸のあたりがすごいモジャモジャしていたというなんとも抽象的な事を聞かされた。帰宅時間を過ぎているから明日調査しようと言ったらカレンがなんとか引き止めようとしたが隙を見て帰ることにした。
次の日の放課後に調査を開始した。
まずは弓道部の人がおばけを見たという廊下を見てみたがまず間違いなく単なる廊下だった。
次に歩いて行った方向に部屋は一つしかなかったためにそこも確認してみるがそこもいたって普通の部屋だった。この部屋は今は誰も使っていない場所らしく物置きなどに使われているらしい。部屋自体は狭かったがそこそこスペースは空いていた。もちろん胸がもじゃもじゃな生徒及び先生など誰1人いなかった。
手がかりがあまりにもなかったためマッセ達は弓道部に話を聞きに行くことにした。
弓道場に入ってみるが空気はどこかピリピリしていた。的に向かい集中していた生徒達をじっと眺めることしかできなかった。
「すまないねご足労いただいたのに」
「いえ、問題ないわ」
今話しかけてきたのは弓道部顧問のイーダ=セイヨウという先生だ。確か英語担当の先生で生徒の中でも人気だった。
「もう少しで大会でね僕も弓道部達の子を見ているとどこか身が引き締まるよ」
「先生は昨日のゆうれいの事に関しては何か聞いていますか?」
「あぁ...単なる見間違いだと思うんだけどね」
「昨日あの時間まで部活をやっていたのは確か弓道部だけでしたよね?遅くまで残っていた生徒とかはわかりませんか?」
「部活が終わったら僕もすぐに職員室に戻ったから分かんないかな」
四方八方塞がっているな。まぁ、幽霊なんているわけがないのだが見たというのならなにかしらの現象があったからこそ見間違えたのだろう。
「魔法の検査はどうだったのアリスさん」
「いや、まだやってません」
「なんで?」
「私の魔法では使用してから12時間以内じゃないと検査できないから意味ないかなと...」
「そうだったのか...」
昨日マッセが帰ったせいでできなかったのだ。
少し申し訳ない気持ちが宿る。
練習が終わる頃には外は真っ暗になっていた。
みんなが部室に戻ったりしてるなかでマッセとカレンは部室の途中の場所で見える窓とやらを監視することにしていた。
昨日の雨でできた水溜まりがそこら中に散らばっている。それを避けるように進んでいくと窓の目の前まできた。
アリスとクライヴは聞き込みを行いマッセとカレンはここで見張っていたが別に誰も現れたりしなかった。
「なにもないじゃない!!」
カレンは地団駄を踏みながらそんな事を言う。
マッセも今の所なんの手がかりも掴んでいなかった。そんな中でA棟に向かい走ってる女の人がいた。
「ちょっと待って!!」
「はい、なんですか?」
そんな女の人は少し怯えながらマッセを見た。
「君、弓道部だよね?ちょっと話聞いてもいいかな?」
「はい...」
彼女はセレス=ペスター。1-Ⅲの生徒だ。彼女に色々聞いてはみたが特に有益な情報は得られなかった。
「もう、いいですか?私帰りたいので」
「うん、分かった。ごめんね引き止めちゃって」
そういうと彼女は走り出した。
帰りたいね...
次の日になったが事件は未だ進展はなかった。
「別に昨日いなかったなら問題ないんじゃないか?不審者がいたとかなら問題だがそんなんじゃなさそうだし」
「いや、ダメよ私の気が済まないわ。未解決の事件を放っておくなんて探偵部としてあるまじき行為だわ」
カレンとクライヴが言い合う。よくみる光景だ。毎回クライヴが負けるというオチは目に見えているのだがな。
「アリスさん昨日のあの物置きで魔力の反応はなかったよね?」
「はい、ありませんでした」
分かっていたことだが重要な確認だ。
「少し確かめたいことがあるんだ」
そう言って向かったのは職員室だ。
そこで夜間の警備では誰も見つかっていないことを確認する。
「他に昨日今日でなにか変わったりしたことはなかったですか?」
「んー、特にないかな」
「わかりました、ありがとうございました」
「これから弓道部の所に行くのかい?」
「いえ、違いますけど、どうしてですか?」
「いや、イーダ先生にこの書類を渡さないといけないんだったけど昨日も今日も会わなかったからね」
そしてマッセは驚いてその先生に思わず質問を投げかけた。
「ここで待ってれば本当になんだったかわかるの?」
カレンは遂にそんな事を言ってしまう。女子弓道部の部室が見えるこの位置で待ち伏せてから約30分が経とうとしていた。痺れを切らしたカレンはまたもや地団駄を踏む。
そして放課後のチャイムが鳴る。その少し後に弓道部の生徒達が何人か帰ってくる。
またその少し後に1人の女の子は急いで出て行く。
「追うぞ!!」
そしてその彼女を追って行くと1番最初の物置きに辿り着く。
「中に入るの?」
「待て!!まだ駄目だ。あと数分は待って」
そして数分経つとおそるおそる扉を開けるとそこには誰もいなかった。
「やっぱりか...アリスさん、一応魔法の反応を調べてみてくれないか?」
全員が腑に落ちないといった感じだったがマッセの言われるがままに調べる。
「転移魔法の跡があります」
「転移魔法って...あの子Ⅲ組でしかも1年生なのにもうこんな魔法が使えるのか?」
転移魔法は上級魔法使いでないと難しい魔法であった。覚えれるのはせいぜいⅠ組くらいの天才達じゃないと無理だった。
「全て分かった。部室で話すよ」
そう言ってマッセは扉を開けて部室に向かう。
現場検証はしなくていいの?と思いながらも仕方なく全員マッセの後を追った。
「まず最初に見たあの影の正体はやはり人だ」
「でも胸がもじゃもじゃな生徒なんていないわよ?」
「うん、でも歩いている人が2人だとしたら?」
2人?全員が頭に疑問を浮かべたがアリスが口を開く。
「影が重なって見えたのですね?」
「そう!!」
マッセが言いたいのは背の高い人と背の小さめ、その背の高い人の丁度胸あたりに頭が来る人がいたら影が重なって胸もじゃもじゃ人間が出来上がるというわけだ。
「でもそれでもそんな影になるような子はいなかったわよ?」
「あの時は雷が降っていた。そして驚いてその人にしがみついた際に髪の毛が広がったんだ」
全員がなるほどと納得すると話を次に進める。
「そしてその2人は誰かだけど。イーダ先生とセレスさんだ」
「どうしてそうなるのよ」
「イーダ先生の胸のあたりに丁度セレスさんの頭がくるっていうのもあるけど...」
マッセの次の言葉を興味津々に待つ。
「昨日はどうして場所が変わったのかと考えたんだ。別に毎日現れていたとは聞いてないけどもし仮に毎日あの物置きに出入りしているとなると不自然だ」
「私達が調査を行ったから?」
「そう、俺達が調査を行った事で警戒したんだ」
「でも、どうしてそんな」
「おそらく2人は恋してるんだ。先生と生徒の間で。だから密かに会わなければいけなかった」
「おそらく昨日はA棟のどこかしらで転移魔法を使って密会していたんだ。帰ると言った彼女は最初にA棟の方へ向かっていっていた」
「なぁ、クライヴとアリスさん。昨日イーダ先生は部活が終わったあとどこへ向かっていった?」
「イーダ先生なら職員室に戻るとおっしゃっていなくなっていったが...」
「それはおかしいんだ。昨日放課後が鳴ってからイーダ先生を待っていた先生がいるのだが先生は来なかったと言っていた。しかも転移魔法が使えるのなら先生というのも合点がいく」
そして一呼吸おく。
「以上だ...」
空気は静まる。あまりの衝撃だ。
「この事件どうしたらいいのかしら...?」
「放っておく方がいいのかこっそりと教えてあげる方がいいのか、どちらにせよ先生と生徒っていう間柄以上バレたらやばいだろうな」
「恋愛ってむずかしいですね」
全員が悩んでいたがカレンが決める。
「よしっ!!私達は2人の恋を応援しながらも少し注意しましょう」
「そういえば転移魔法って帰る場所はどうなるんだ?」
そういうとクライヴはハッと思い出したかのように言いだす。
「そういえば今日あの弓道部の生徒があまりにもうるさいから夜にあの廊下に見張りをつけるとか言ってたような!!」
非常事態だ。もしそんなところを見つかったら先生は退職して応援しようにもできない状態になる。
「急いで向かうわよ!!」
4人は急いで物置きに向かう。階段をジャンプしながら。こういう時に1番遅れを取るのはやはりマッセだった。
物置きの目の前には巡回する警備員がいた。
先に着いた3人は警備員がいて物置きに入ろうにも入れなかった。
「裏口からすり抜けの魔法を使って入るわよ」
そして物置きの後ろからこっそりと入るとそこには丁度帰ってきた2人がいた。
「な、なんで君達...!!」
「騒いじゃダメ!!今そこには警備員がいるの、見つかったらダメよ」
「か、庇ってくれるのか?」
「探偵部は別に人の恋路を邪魔する気はないんでね」
しかし行き詰まったものだ。外には警備員がいて出ようにも出られない。
息を殺しながらただ待っていた。
そしてセレスが落ちているものを踏んで大きな物音が鳴る。
「んっ...誰かいるのか?」
扉がゆっくりと開いていく。
「警備員さん!!警備員さん!!向こうに怪しい影が!!」
この声はマッセのものだった。
警備員がどいたことをメールで伝えると5人は外に出た。
「すまない、迷惑をかけてしまって」
「いいんですよ、そんなことよりバレないようにしてくださいね」
「それなんだが、会うのは今日で最後にしようって話してたんです」
全員がそんな...と落胆した様な表情をする。
「大丈夫だ。僕はセレスちゃんのことが好きだ。だけどセレスちゃんが学校を卒業してからしっかりと恋人になろうと決めたんだ」
「なんだそうゆうことだったのね」
2人共笑顔だった。きっとそれが1番だったのだろう。
「さっきは本当にいたんですけどね〜」
「本当かい君?」
マッセはそんな事を知らずに疑われていたのであった。