2-Ⅱ事件
探偵部に入ってから1ヶ月位が経っただろうか。
思ったより事件は起きない。いや頻繁に起きる方が問題なのだろうが...この部にも慣れてきた頃だ。クライヴは未だに認めてはいないが最近はその事に関して言ってくるのはやめている。しかし仲良くしようという気はないらしい。
「クライヴ遅いわね」
「そのようですね〜」
放課後になっても来ない。別に何時集合とも指定があるわけではないから構わないのだが、確かに気になる。
その次の瞬間突如警報が鳴る。
「緊急事態発生。緊急事態発生。2-Ⅱのクラスで攻撃魔法が使用されたました。」
「2-Ⅱって確かクライヴさんのクラスでは?」
「急ぐわよ!!」
「緊急事態発生。2-Ⅱのクラスで攻撃魔法が使用されたました。」
鳴り止まない警報に釣られ身を急ぐように2-Bに足を向ける。
着いたそこにはクライヴと女子生徒が座り込んでいる。その女子生徒の足にはナイフが刺さっていた。
「早く医療室に運んで!!」
「クライヴは現場にいたのか?」
「いや...俺は後に着いたんだが...」
なにか言いごもっている感じだった。
医務室に着くとその子は先生に任せる。
女子生徒の事を考え医務室の外で話し合う探偵部の4人。
「なにがあったのか説明してくる?クライヴ」
「俺が入った時に彼女が座り込んでいた。もうナイフが刺さっていた。」
やはりなにか隠しているような感じはある。
「とりあえず現場検証ね」
そう言うと4人はまた2-Ⅱへ戻る
「それじゃあアリスお願い」
「はい。任せてください。」
アリスの検査魔法。相当高度な魔法技術を要する。今の魔法警察のトップともなると死人の死ぬ前の行動まで分かるらしい。
「検査し終わりました。教壇の上に念動魔法が一回と教室の真ん中で念動魔法が二回使われてます」
「二回使われていたのか」
周りを見渡した所念動されたのはこの掃除用具入れ。これを使ったのはだが防御用だろう。刺さってたナイフで一回なら後もう一回はなんだ?
教室の真ん中にいたのは女子生徒。逆に言えば教壇にいたのは犯人という事になる。
「とりあえず彼女に話を聞くのが早そうね」
医務室に戻る4人。クライヴがずっと不安そうな顔をしている。
「あなた名前は?」
「エルサ=ブレームです」
「こんな辛い時に悪いんだけど色々聞いてもいいかしら?」
「はい...」
怯えているのだろう。全身震えている。
「マッセちょっといいか?」
呼んだのは意外にもクライヴだった。
外に出ていると手を握りしめているクライヴが佇む。
「どうしたんだ?」
「あのナイフを刺したのはおそらくデイ=フリートだ。」
「デイ=フリート?」
「あぁ、俺の親友だ。」
泣きたそうな顔をしている。親友がやったから悲しんでいるのだろうか。
「あいつがやるはずないんだ!!あいつはいい奴なんだ!!」
「わ、分かったからクライヴが入った時の話を聞かせてくれ」
「あぁ分かった。」
〜事件当時〜
「警報が鳴った?しかも2-Ⅱ」
さっきまで図書室でデイと一緒にいたクライヴは不安がよぎる。その理由はデイが図書室を出て行った用事が教室に向かうためであったからだ。
その内容は別れ話を切り出した彼女に呼ばれているとのこと。
すぐに2-Ⅱに向かう。入った時に見た光景はナイフが刺さった状態のエルサとその場で佇むデイがいた。
「デイ、お前?」
「違うんだクライヴ...ちがうんだぁー」
叫びながら扉に立っていたクライヴを押し退け出て行く。
〜現在〜
「そこでお前たちが来たんだ」
「来た時に不自然なことは無かったか?」
「いや、無かったが...入るちょっと前にガタンと言う物音がしたような気が...」
物音か...多少きになることがあるな。
「また現場に行ってみよう」
クライヴの言う通りだと犯人はエルサという事になる。しかし被害者が犯人というのは少し訳が分からないが...
現場に着いたマッセとクライヴ。
まずマッセが調べたのは掃除用具のロッカーだ。
掃除用具のロッカーの側面デイ側に傷が付いていた。
「念動魔法って弾かれたら解除されるのか?」
「いや、本人が解除しようとするまで解除されない、物は固定されたままなんだ」
なるほど...それより気になるのはこの2回だ。恐らく空振りしたとでも言ってくればなんとでもなるだろうがこれを他の事に使ったのなら彼女は犯人で間違いないだろう。おそらくばれないための念動魔法。
「俺とした事が焦ってしまっていたよ。マッセに話せて楽になった...」
「いや、気にすることはないよ、俺だって...」
焦っていた!?そうだ俺も初めての警報で焦っていたが。なにかないのか?
「エルサに話を聞きに行こう。」
〜医務室〜
「どこに行ってたのよマッセ、クライヴ。」
「あぁちょっとな」
未だに怯えているエルサ。
「全て話をちょうど聞き終わったところよ」
「もう一度俺と話させてくれないか?」
首を縦にふるエルサ。
「2回魔法が使われているがどうゆうことか教えてくれ」
「はい...あれはナイフが飛んで来て守ろうとしたんだけど対象を決めずに発動してしまって2回目で掃除用具入れに使いました」
「やっぱりか...」
「え?」
全員がマッセに目線が向かう。それはそうだ状況から見て当たり前な事を言っているから。
「みんな警報が鳴った時に焦って気が付かなかったんだ。いや、初めてだからかもしれない。」
そう言うとマッセはレコーダーを取り出し再生する。
「緊急事態発生。2-Ⅰで攻撃魔法が発生しました。」
「これが警報だ。しかし今回の警報は少しおかしかった。2回緊急事態発生と警報が鳴った後に警報がもう1回だけなった。」
「それがどうしたのよ」
「気が付かないか?タイミングがおかしいだろ?ナイフを飛ばし1回目対象が取れず2回目掃除ロッカーで3回目。これなら守れるけど警報が三連で鳴ってないからつじつまが合わない。」
「確かにそうね。」
「なら、3回目の警報は他の所に使ったと言う事になる」
「本当なのか!!エルサ!!」
「ち、違います!言いがかりです。」
「言いがかりじゃない証拠があるんだ」
「え?」
「教室に来てもらえるかな?」
〜2-Ⅱ〜
「俺の読みではこの掃除用具入れに魔法が使われた。そしてデイ側にナイフの傷がある。しかし魔法が使われたとするんなら向きは本来逆にあったはずだ。念動魔法は物は固定されたまま移動されたと言うのなら物が落ちた時の凹みの位置は下の側面。そこから倒れたんだ。倒れた時の凹みこれが2個目そしてそっから念動をしたというのなら最後の凹みが反対側のここにあるはずだ。」
クライヴが持ち上げてみるとそこには凹みがあった。
「決まりだな」
動悸は別れ話を持ち出されたかららしい。
にしても女子の演技は怖いものだな。
「マッセ...その...今まで悪かったな。ずっと申し訳ない事をしていた」
「いや、気にすんなよ...」
「これからもよろしく頼む!!」
「あぁ、よろしくな」
カレンとアリスが笑顔でこっちを見て来ている。
なぜか恥ずかしがりまた自分のデスクに気を向けた。