夢で逢えたなら
ときには薄暗い家の中で――
虫の予感を知らせるよりも早く。
重く軋んだ足音をしっかりと響かせる。
目当てのものが見つからない、そうくれば階段を登るのは必然で。
どうしてなんて、疑問に思う必要がない。
侵入者は私を殺すためだけに、こちらを目指しているのだから。
部屋の中に鍵のある扉を探さなくてはいけない。
自らの部屋には鍵がないので、トイレか姉の部屋になる。
トイレの鍵は頑丈だが、二階から飛び降りるときに難儀しそう。手や足でつかまる箇所が何もないから。そうくればあとは姉の部屋になるだろう。
なりふりかまっていられない。
侵入者よりも早く、姉の部屋に移動する。
相手の速度は鈍かったために、余裕で扉を閉めることができた。
あとはどう逃げようか。
天井に穴でも開けて逃げようか。ダメだ、それではこの場から逃げ出せない。隠れても時間の問題だろう。私はいつまでたっても逃げ出せないし、救われない。それなら、ベランダをつたって庭に降りるのがベターじゃないだろうか。
この日のために、何十回と練習したのだから。
私が殺されないための唯一の手段は、ぜったいに成功させたい。
白色のベランダの手すりに足をかけて、ゆっくりと降りる。
それから、目当ての愛車を見つけた。
鍵は――あぁ、居間にある扉付近にかけてあった。戻るか、戻るまいか。この危機を乗り越えないと、いつまでたっても逃げ出せない。
意を決した私は居間に行くために静かに玄関の扉を開けた。侵入者はいない。奴は二階にいるのだろう。愛車のキーを手に持ち、すぐさま家を後にした。
まぬけな殺し屋なんて待ってられない。
今日も私の勝ち越しだ。
気分は爽快。
しかしそこで意識が途切れゆく――悪夢はまだ終わらない。
ホラーチックなお話しです。作者は悪夢をよく見るので小説風に仕上げてみました。よくある夢オチですが、これには終わりがありません(ノД`)・゜・。