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作戦1ーカール視点ー

ヤマもオチもありません

クリスのイメージ変わってしまうかもしれないです

 ーカール視点ー


 最近、団長がおかしい。

 そう気付いたのは、残暑が厳しいある日の訓練時だった。


 オレが所属しているベルヘルム帝国第四師団の団長であるレイラ=シルヴェスターは、飛竜騎士の名家であるシルヴェスター家の御令嬢だ。

 銀色の艶やかな髪に、キリリと絞まった目元の奥には赤紫の瞳。顔良し体型良しの稀に見ぬ美女だというのに、武器を持てばそこらの男共など簡単に蹴散らしてしまうほど強い。

 これだけだと一見近寄りがたい感じだが、実は懐に入れれば面倒見が良く、なにより裏表のない笑顔をする人なのだ。その笑顔で何人の男が勘違いしたか。


 そんな団長に惚れているヤツは少なくない。

 例えば、今訓練相手を申し込んでいるクリス=サヴァードもそうだ。

 オレと同じ平民だというのに、僅か二年で副団長まで登り詰めた怪物。本人はただ頑張っただけだと言っているが、その視線の先を見て執念を感じたよ。

 団長もその実力を高く評価していて、何かと手伝いをお願いされ嬉しそうな顔をしているクリスをよく見る。



 それが最近では、団長がクリスを避けるような行動をとっていた。

 現に、今もクリスの誘いを断り別の団員の所に行っている。これでフラれた所を見るのは何回目だろうか。


「本当に心当たりないのか?」

「あったらすぐに直している」


 声をかけたオレには目もくれず、ジッと団長を見つめるクリス。

 おい、いくら羨ましいからって稽古つけてもらっている後輩を睨むな。顔真っ青になってんぞ。


「ほら、出来ないヤツに教えることも強くなるためには大事だって団長が言ってただろ。今日は諦めろ」

「………」

「ほーらーいくぞー」


 引きずるようにクリスを連れていったが、 オレより頭一つはでかいコイツを運ぶだけで相当体力を削られた。

 その後、鬱憤を晴らすかのように叩きのめされたオレはだいぶ可哀想なヤツだと思う。

 先輩方、見てないで助けてくださいよ。あ、目そらしやがったよこの人ら!



 そんな日々が続く中、団長がとんでもない爆弾を落とした。


「弓……ですか?」

「戦略を練る上でどうしても弓の数が欲しいのだけど、経験者があまりいなくて数合わせに困っているの。 カールは確か入団した頃は弓を使っていたわよね? 申し訳無いけど、もう一度弓を使って欲しいの。頼めるかしら?」

「わかりました。でも、弓の腕はあまり期待しないで下さいね。才能がなかったから剣に転身したようなものですから」

「それはこれからやってみないとわからないわよ。私も出来るだけ訓練に付き合うようにするし」

「ありがとうございま……って、ええ!? 団長が見てくれるのですか?」

「もちろんよ。頼んでいる以上、精一杯手助けするわ」


 その後、本当に団長はオレの訓練によく付き合ってくれるようになった。

 団長は騎士の名家出身の為か、殆んどの武器は一通り扱えるというとんでもない才能を持った人だ。

 だからって、オレを含めた十二人全員に弓の扱い方から実戦での戦い方まで教えて回っているとか、どんだけ超人なんですか。


 しかも他の弓専門の先輩より教え方が丁寧でわかりやすい。

 オレも少し足の位置と姿勢を直してもらっただけで、標的物への命中率が格段に上がった。

 その他にも色々教えてもらう内に、あっという間に剣の腕など霞んでしまうほど弓の腕が上達した。団長の言った通り、本当にやってみるもんなんだな。

 他の団員も同様にめきめき上達したようで、仕事が超絶忙しい団長がひょっこり訓練場に顔を覗かせると、たちまち団員に囲まれるようになった。


 そんな光景をジッと見ているヤツが一人。言わずもなが、団長大好きなクリスだ。

 ヤツもかなり忙しい筈なんだが、団長がいるといつの間にかいる。そして、普段より数倍鋭い目付きでオレ達を見ている。

 団長がオレ達に教えてるせいで、余計にかまって貰えないんだろうな。わかる、わかるぞ。だが、その顔で睨むなチビりそうになるだろうが。



 さらには第三師団との合同訓練。

 合同訓練といっても、第四師団対第三師団の模擬戦のようなものだ。


 飛竜騎士が多い第四師団にとって、中距離攻撃ができる魔導師が多い第三師団はかなり不利。

 そこで要となってくるのがオレ達弓小団だ。

 団長のしごきにより、飛竜に騎乗しながら弓を射れるようになったオレ達は、飛竜に相乗りして空中から中距離攻撃ができるようになっていた。


 で、問題なのが団長の飛竜に誰が乗るか。

 団員全員が危機迫る表情で行われた厳選なるジャンケンの結果、オレが相乗りすることになった。何であの時パー出したんだオレ!


 団長の飛竜に二人で乗るということは、かなり密着した状態が続くということで。

 前に乗る団長から仄かに香る女性特有の匂いと、不可抗力でたまに掴まるしっかりしているけど軟らかい身体に色々反応してしまうオレの身体。

 だが、その直後に飛んでくる冷たい視線とたまに本物の手槍とで一気に冷や汗をかく。手滑ったとか言ってたけど、確実にオレの頭狙ってたよなクリスさん。


 そんな気分の乱高下と、予想以上の乗り心地の悪さ(団長の飛竜が速すぎる)に耐え続けたオレは地上に無事生還した瞬間にゲロった。

 その様子を他の団員達からは哀れみの目で見られた。同情するなら代われよ……うぅ……



 その日からクリスの機嫌は更に下がった。

 オレが弓兵に代わったので、その被害は他の団員達に広がった。クリスってば先輩だろうが容赦ないからな。

 オレは弓兵だから関係なーい、なんて思ってたら『弓兵と戦う練習』という名の生け贄にされたこともあったので、結局オレも被害にあっている。


 このままでは副団長の手で第四師団が壊滅させられる。

 そう危機感を感じたオレ達は、とうとう団長に直談判することにした。



「私の訓練相手の順番をもとに戻して欲しい?」


 きょとんとした表情の団長の言葉に全員で必死に頷く。


「サヴァード副団長に対してまともに相手できるのは団長とカールだけなのです!」


 おい待て、オレの場合相手できるっつーかただボコボコにされてるだけだからな。

 実力的には先輩の方がクリスに近いのに、みんな避けてるだけだからな!


「でも、それならカールが相手をすれば…」

「お願いします団長! どうかクリスの相手をしてやって下さい!」


 団長が話しかけた所をぶった切ってしまったが、それどころじゃない。

 ここで団長が了承してくれなかったら、オレの人生確実に終わる!


「アイツの相手を毎日してて死にそうなんです。というかもう死にそうです助けて下さい」

「そんなに?」

「そうです。しかも日に日に不機嫌になっていくから、いつか殺されます」


 オレの涙ながらの訴えに、困ったような表情を浮かべる団長。

 何でそこまで渋るのだろう。前は楽しそうに怪物同士の熱い戦いをしていたのに。


「そもそも何故クリスを避けているのですか?」

「それは……その、私ではクリスの相手として力不足だからよ」


 何か訳の分からないこと言い出したぞこの人。

 他の団員達も同じことを思ったようで、お互いの顔を見合わせる。


「力不足……団長がですか?」

「クリスが私に気を使って手加減しているってやっと気付いたの」

「「「あり得ません」」」


 即座に放った言葉は見事に他の団員達と被った。

 団長はびっくりした顔をしているが、驚いたのはオレ達の方だ。


 毎回毎回当たる度に周りが呆気にとられるほどの熱戦を繰り広げる二人。

 今でこそクリスも勝つようになってきたが、それでも勝率は低い。あの化け物並みに強いクリスがだ。

 そのクリスが団長相手に手加減をしている?

 手加減するくらいならまず勝率上げようとするだろ普通。


 まさか、団長がこんな訳の分からない勘違いをしていたせいでヒドイ目にあってたのかオレ。

 ……泣ける。



 その後、渋る団長に全員で懇願。オレ達以外の団員にも代わる代わる言われるとさすがに聞く気になってくれたのか、翌日から団長の相手にクリスも入るようになった。

 よかったなクリス。いつも仏頂面なオマエのそんな顔、始めてみたよ。


 ところでさっき、団長が自分の飛竜に何か頼み込むような様子を見たんだがなんだったのだろう。

 団長、お願いですからまた変なことしないで下さいねホント。

なんだかんだでクリスとカールは仲良いです

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