最近の神様の人気の仕事
「ねぇねぇパパ、なんでパパは神様なのに人間を殺すの?」
「別に殺したくて殺しているわけではないよ。彼らは今の生活や世界に不満を持っているんだ」
「不満? どんな不満なの?」
「そうだねぇ。例えば、ブラック企業辛い、お金が手に入らない、社会が良くならない、アイツが憎い、ハーレムを作りたい、法は間違っている、他にもたくさんある」
「それって不満なの?」
「あぁ不満だよ。彼ら彼女らは、それぞれが思い思いの不満を持っているんだ。でも、それを表だっていうことはないんだ。」
「どうしていわないの? そう思ってるならいえばいいじゃん」
「言ったら怒られるからだよ。文句を言うなら行動してからにしろ、文句を言うなら自分で変えろ、勝手な事ばかり言うな、ってね」
「なんで? みんな思ってるんでしょ? なんでそれを言ったら怒られるの? おかしいじゃん」
「自分勝手な事は言っちゃいけないんだよ。 国によっては言いたいことは言っていい権利があるけど、だからってなんでもかんでも言っていいってわけじゃないからね」
「言いたいこと言っていいのに言っちゃだめなの? それってストレスたまるよね」
「ああ、だからみんなこう思うんだよ。『あぁ、こんな世界いやだなぁ』って」
「そんな世界が嫌なら別の世界にいけばいじゃん」
「人間はそんなことはできないんだよ。この世界は、そういうことをするための方法が見つかっていないんだ」
「えー! 人間ってすごいってよくママが言ってるけど、全然だめじゃん!」
「そうなんだ。人間っていうのはとても弱い生き物なんだ。でも人間がすごいのは間違いじゃないんだよ」
「うそだー! 弱いのにすごいっておかしいよ!」
「嘘じゃないぞ。弱いのは間違いないんだ。なのに、何千年もの歴史があるんだよ。人一人の寿命は私達よりずっと短いのにね。色んな人たちが手を取りあって、たまには競争してここまで来たんだよ」
「そうなんだ…。弱いのにすごいんだね!」
「ああ。人間は弱いのにすごい。でも、全ての人間がすごいってわけでもない。中には弱い人間がいるんだ」
「元々弱いのに、もっと弱いの?」
「ああ。そしてその弱い人間はみんな不満を持っていて、その不満は自分たちのせいではない、こういう世界だから自分達は不満なんだっていうんだ」
「すごい人間は不満を持ってないの?」
「いいや、人間はみんな不満を持っている。そこに弱い人間もすごい人間も関係ないんだよ。不満の持ち方や捉え方が違うんだ」
「う~ん…。よくわからないよ」
「ボクにはまだ早かったかな? 大きくなればわかるようになるよ」
「うん! あ、じゃあ、パパが殺してるのって、そういう不満をもった人間ってこと?」
「そうだよ。それが彼らの望みであり幸せだからね」
「そうなの? 神頼みってここんとこないっておじちゃんが言ってたよ」
「それは正式な神頼みだね。パパ達神様を祀っている場所や、直接話をする人を通した場合だよ。近頃は神様を信じてる人も少ないみたいだからね」
「ちゃんとした神頼みじゃないの? ちゃんとしてないのに聞いてもいいの?」
「ああ、人間たちの望みを聞いて、それをかなえてあげるのが神様の仕事だからね」
「どんなお願いなの?」
「さっき不満の話をしたね。それが彼ら彼女らのお願いなんだよ」
「えっと、ぶらっく企業?辛いとか、はーれむ?が作りたい、だっけ」
「そうだよ。彼ら彼女らは、そういうことがしたい、やめたい、逃げたい、ああもしこういうことができたら、こういう世界だったらって思ってるんだ」
「そうなの!?」
「ああ。そういう願いは口には出してないけど実はとても強い願いなんだ。だから、パパ達神様の元に直接届くんだよ」
「すごい! ちゃんとした頼み方じゃないのに神様に願いが届くなんて、やっぱり人間ってすごいんだね!」
「ああ。人間はすごい。そのすごい人間たちの願いがかなわない、かなえられないなんて、神様として失格だ。だからパパは彼らを殺しているんだよ」
「そうなんだ。でもなんで殺すの? 神様なんだからお願いをかなえてあげればいいじゃない」
「そう簡単に願いをかなえてあげることはできないんだ。世界のルールが変わっちゃうからね。でも、ここでかなえられないなら別の世界ならかなえられるかもしれないだろ?」
「でもさっき人間は別の世界に行けないって」
「そう、人間はね。でもパパ達は神様だ。パパ達なら別の世界に行くことも、その道をつくることもできる。」
「神様だもんね!」
「それに、最近は神様がミスをして彼らの命を奪い、それを謝って別の世界に行かせたり、悪戯な神様が人間をたくさん選んで別の世界に行かせる話が、人間たちの間ですごく人気なんだ。」
「となりのお兄ちゃんに聞いたことある! 神様転生っていうんだよね!」
「そうだよ、よく知っているね。人間たちがそういう物語をつくり、そして読んでる人の中にはそういうことがあったらいいなって思う人がいるんだ」
「へぇー。人間って本当に神様が好きなんだね!」
「不満を持っている人間たちがいて、それを解決する方法が私たちにはある。人間が作り出した物語が人気になって、それを望む人たちがいる。ということは…」
「わかった! パパ達神様が、その人間たちのお願いを聞いて、望みをかなえてあげてるんだ!」
「そうだよ! パパ達はその人間達の悩みを解消して、そして理想もかなえてあげられる。その人間たちのお手伝いをしているという訳なんだ」
「でも、こないだの人間たちはみんなびっくりしてたよ?」
「それはそうさ。いくら神頼みをしたとはいえ、神様を見たことがない人たちだからね。いないって信じてる人もいたよ」
「いないって信じてるのに神頼みをしたの?」
「いないって思ってても神頼みをしてしまうのが人間なんだよ。」
「そうなんだ。やっぱり人間って弱いんだね」
「でもそんな人間たちのおかげで、パパ達は仕事ができる。人間も住んでいる星と人間のバランスに悩んでいたし、自然のことも悩んでいた。それもなんとかしてあげられるんだ」
「すごーい! やっぱりパパ達はすごいんだ! 神様ってすごいんだね!」
「ありがとう。パパもパパの仕事がわかってもらえてうれしいよ。」
「ボクも大きくなったらパパの仕事を手伝う! 人間を殺して別の世界に連れてってあげるんだ!」
「そうかそうか。だったらしっかり勉強して大きくなるんだぞ」
「うん、わかった!」
「それじゃ、パパは仕事に行ってくるよ」
「うん! パパ、行ってらっしゃい!」
もしかしたら中にはこういう神様もいるかもしれません。




