≪3≫精神、マリア―ジュ3割5分の巻
「おはよう」
そういって起こされたはずなのに、僕はまだ起きてはいなかった。不思議なことだ。
「不思議なんてものじゃないわよ。今私はあなたの夢の中かで話かけてるの」
そういって、何もない真っ黒な空間から、一塊の白い雲が現れて、それがマリア―ジュの姿を形どる。ただしそれは10分の1ぐらいのサイズで、丁度妖精と言う言葉が似合いそうな感じだった。
よく見ると、僕の姿も元の人間であった頃の姿に戻っている。これは確かに夢に違いない。
「やあ、春貴。第二の人生のスタートは快調なようだね」
「マリアージュさん!」
「さんずけはやめてよ。マリアージュでいいわ」
そう言うと、彼女の目の前には机と椅子が現れる。それは彼女いったあの不思議な部屋と同じようにである。
だめもとで僕も適当に目の前に安楽椅子を出現させると、それに座った。夢とは便利である。
「で、どうしてマリア―ジュは此処へ?てっきりそのまま放置されるのかと思いました」
「そこまで酷くはないわよ。元の私は魔法で分身体である私を作って、それをあなたの脳内、夢の中の空間に現れるようにセットしたみたいなの」
「みたいって、わからないんですか?」
「正確なところはね。私は彼女のコピーだから。正確さはそうね……3割5分くらいの精度かしら」
3割5分のマリア―ジュは僕にそう言うと、元の世界と同じような方法で紅茶を自分に注ぐと、美味しそうに飲み始めた。
「それで、僕はいったいこれからどうすればいいですか?」
「それはもう、自由に。今すぐこの国から逃げ出して、野生生物として暮らそうが、この国を乗っ取ろうが、好きにすればいいわ」
なんとも勝手な話だ。
「えーと、マリア―ジュは僕をどうするつもりでここへ?」
「さ~?でも、あなたの要求に一番近い世界を選んだと思うわよ?」
「じゃあ今ここにいるマリア―ジュは何をするの?」
「私は夢の世界で、あなたが上手い具合にこの世界で生きるためサポートをするために生み出されたの」
そんな理由で他人の夢の世界とやらに作られて、そんな風に人格をコピーしてよいものか。倫理的な理由から僕の頭は痛くなったが、どうやら本人は気にしていないらしい。どうやらその辺り仕組みからして、僕たちとは違うのだろう。
「それで具体的には何をしてくれるんです?」
「もちろん、あなたがこの世界でやっていくために、超能力を授けてあげるわ」
そう言って、マリア―ジュ僕の元へ飛んでくると、いきなり僕の頭の中に手を突っ込んだ。
「ぎゃああああああ!!!」
僕の皮膚と頭蓋骨を貫通して、直接僕の脳味噌を弄るマリア―ジュ。これは絶対に狂気である。
「騒がないの。別に変なことしてないわよ。今のあなたは精神体。体を直接貫いているわけではないわ」
そんな事を言われても。そう言おうとした僕に、一筋の頭痛が走る。
「痛ッ!!」
そう言った時にはもう頭痛はなくなっていた。
「これで終了。まず第一の能力が貴方に備わったわ」
「もうですか?簡単なんですね」
「もうよ。具体的にはそうね。変身能力ね。言っとくけどこれは全てあなたの潜在能力を開花させたのよ。私の介在する余地はないわ」
信じられないが、いい加減僕もこの異常事態なれなければならなに。僕は頭に浮かびまくる疑問を抑制する。
「何に変身できますか?」
「何でも。ただし変身物の体積や複雑さに比例して変身時間が左右されるタイプみたいね。それは今分かったわ」
そういってマリア―ジュは一人で納得すると、そのまま姿が元の煙に戻る。
「え!ちょっと待ってくださいよ」
「あ~無理無理。私も初めての具現化と能力開発で体力ゼロ。続きは明日にしましょ」
「でもまだ聞きたい事が山ほど!!」
そう言って僕はマリア―ジュだった煙に手を伸ばすと、それに触れる前に目が覚めた。
たちの悪い夢、では恐らくないのだろう。同や手変身するのか聞きそびれたが、今の僕にはなんにでも変身できるという、使えるか使えないのか微妙な能力が追加された。人の道を完全にそれた僕からすると、それぐらいは些細なことだと考えたい。
自動投稿昨日が一か月連れていました・・・
明日より毎日遅れた分を取り戻します。