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8 妹の采配(転機)

 妹視点はなかなか長引きそうです。どうか気長にお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。

 さて、突然訪れた転機に、妹・唯の采配やいかに?



 更新の時間は、サイコロを3つ振って決める独自の方法で決めています。

 しかし、書き置きのストックも、だいぶ減ってきました。

 執筆活動停止間のの繋ぎなので、もう少しペースを落とさんと、すぐ弾切れするな……。

 その日の私は落ち着きが無かった。

 朝から部屋の中を、家の中を、一日中ウロウロと彷徨いながら、携帯電話を見つめてはため息をついた。

 その日はユッチの高校受験の、合格発表の日だった。

 ユッチは私と同じ学校を受験している。ユッチが合格できるかどうかは、私の『ユッチをお兄ちゃんのお嫁さん化計画』において、私がどうあがいても干渉できない重要なポイントの1つだった。彼女と別々の学校になっては、これまでのように接触するのは難しい。ただでさえ、今まで高校生の私が中学生のユッチと会うのも大変だったのに。麻衣ちゃんもしっかりしてきてお姉ちゃん離れしてきたし、もしもユッチが別の学校に入学して部活動でも始めたら、会う機会なんかなくなってしまう。

(大丈夫! ユッチは私と違って頭良くて真面目だし、成績だって上位だったし……。ああああああ、でも、もし、名前書き忘れていたり、解答欄を間違えてたりとかしたら……、どどどど、どうしよう!?)

 受験日当日の朝、こっそり様子を見に行ったユッチの顔が、緊張しているのか強張っているように見えた。

 これまで、ユッチが勉強に集中できるように、麻衣ちゃんの相手をしてあげていた。家事が負担にならないように、ちょっとしたことなら手伝うようにしていた。

 そうしている間にも、引き続き小夜子さんや麻衣ちゃんにお兄ちゃんの良さを伝えて、つい先日、麻衣ちゃんをお兄ちゃんに会わせたところだ。


 会わせた、というよりも予期せぬ出会いだった。

 最近、私がユッチの家に遅くまでいることを聞いて心配したお母さんが、たまたま実家に帰ってきていたお兄ちゃんを迎えによこしたのだ。帰ってくるなら言ってよ、お兄ちゃん!

 お父さんの車を借りて通学路を探していたお兄ちゃんが、ユッチの家を出たばかりの私を見つけてくれたんだけど、そのときまだ麻衣ちゃんが私を見送ってくれていたのだ。

 近くの駐車場で車を止めたお兄ちゃんは、

「もう遅いから、乗ってけ」

と言って、私の自転車を四苦八苦しながらそれほど大きくない車に乗せてくれたのだが、その様子を見ていた麻衣ちゃんがお兄ちゃんを見て言ったのだ。

「“おじさん”が、先輩さんのお兄ちゃんですか?」

 お兄ちゃんの顔が、一瞬にして凍りついた。

「ああ……そう、だけど」

 お兄ちゃんは、どこか引きつった表情をしている。相当、ショックらしい。

 そういえば、最後に麻衣ちゃんにお兄ちゃんの写真を見せたのはいつだっただろうか? さすがにオジサン呼ばわりするには、お兄ちゃんはまだ若いのに……。いや、仕方ない。小学生から見たら、オジサンだよね。

 ああああ、しかも最悪! よりにもよって、部屋着のジャージにメガネだし!!

 私が麻衣ちゃんに刷り込んだカッコイイお兄ちゃん像が壊れちゃう!!

 なんと言ってフォローしていいかわからずにいると、麻衣ちゃんはユッチに良く似た大きな瞳をキラキラと輝かせ、礼儀正しく、しかし可愛らしく一礼して、

「はじめまして、須藤 麻衣です。先輩さんにはいつもお世話になっています。私も、おじさ……お兄さんのこと、お兄ちゃんと呼んでも良いですか?」

と、言うと、お兄ちゃんは驚いたように目を見開き、麻衣ちゃんと私の顔を交互に見た。

 このとき、お兄ちゃんには“仲のいい後輩の妹”だと説明した。

 須藤という苗字に小夜子さんを思い出したりしないかと考えたが、あれ以来お兄ちゃんはあの喫茶店には行っておらず、麻衣ちゃんがその娘だとは気づかなかった。

 その後、麻衣ちゃんにお兄ちゃんの印象を聞いたら、運動好きの彼女には自転車を持ち上げて車に乗せるお兄ちゃんがすごい力持ちに見えたらしく、ジャージ姿もバスケコーチみたいで格好良かったと言いながら、興奮した様子ではしゃいでいた。

 ……単純だなぁ。

 家に帰ったお兄ちゃんが筋肉痛で翌朝なかなか起き上がれなかったことは秘密だ。


(麻衣ちゃんの攻略は、問題ないよね? ……あ! お兄ちゃんとユッチが結婚したら、麻衣ちゃんは私の義妹……だよね? あれ、だけどユッチは私のお姉ちゃん? あれれ? この場合どうなるの?)

 とりあえず、この計画がうまくいけば、私がこれまで諦めていた妹分ができるはずだ。

 これはなんとしても、この計画を成功させなければ……ニヒヒヒヒ♪


 そういえば最近、ユッチの受験からかな? 小夜子さんの姿を見ないなぁ……。お仕事忙しいのかな?


 多分このときの私の顔は、信号機のように青くなったり赤くなったりして、ついでに強張ったり緩んだりと百面相状態だっただろう。


 事態が急変したのは、正午のことだった。

 合格か不合格かに関わらず、ユッチからは私の携帯電話に連絡が入る約束だ。

 しかし、合格発表はずっと前に終わってるはずなのに、まだ電話はかかってこない。

 何かあったのだろうか?


「!!!」


 突然、私の握っていた携帯電話が震えだし、聞きなれない電子音を上げた。

 アドレス長に載せていない番号からかかったときにと設定した、黒電話の着信音だ。

 着信表示には「公衆電話」と映っている。

 誰だろうか?

 恐る恐る通話ボタンを押すと、


『唯……先輩ですか?』


電話の向こうから、強張ったユッチの声が聞こえた。

 様子がおかしい。声が震えている。……泣いてるの?

「ユッチ! どうしたの!? 何があったの!!?」


『……先輩。私……わた、わた……、先輩!!』


 よくわからないけど、何か大変なことが起きたのだと瞬時に察した。

 そもそも、公衆電話でかけてきている時点でおかしい! ユッチは自分の携帯電話を持っていないが、私の学校では合格発表が受験生の中学校から電話連絡で自宅に伝えられるので、ユッチは今日、家にいるはずなのだ!

 仮に何かの事情で外出していたとしても、様子がへんだ! 受験に落ちたとか、そういうレベルではない。落ち着いた彼女なら、泣いたとしても、ここまで取り乱したりしない!

「ユッチ! 落ち着いて、ユッチ!! 何があったの!?」

 お母さんやお姉ちゃんたちが、静かにしなさい! と怒っていた気がしたが、そんなことなんか気にならなかった。

 今はユッチの方が何億倍も大事だ。


 声を震わせながら、ユッチは力なく言った。




『お父さんが…………死んじゃう』

 妹視点は、結衣と裕一の邂逅の時まで続きます。


 お気に入り登録と感想くださった方々、ありがとうございます。

 書き置き分より先(FDには邂逅の時まで書かれています)は、12月中旬以降に着手予定です。

 それまでに弾切れしないペースで更新していく予定です。

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